今回は、2021年の締めくくりとして、前回の記事「海外スタートアップのトレンド 2021年の振返りと2022年の展望 vol.1 概要編」に続き、世界各国のスタートアップトレンドについてご紹介します。
ヨーロッパ
イギリスを筆頭にフランス、ドイツ、スウェーデンなどが追随するヨーロッパでは、2021年の地域内での総投資額が$121B (約14兆円)に達し、前年の約3倍もの大きさに膨れ上がっていますが、これはレイターステージにおける大型調達が急激に増えたことに起因しています。
上記グラフでは、これまで全体の一部に過ぎなかった$250M以上の超大型調達が、今年は調達額ベースで全体の約40%を占めるまでに急増しています。
これは、コロナウイルスの影響で長期的な投資よりも確立されたソリューションに資金を集める投資家の意向が反映されていることや、公開市場自体が未上場のスタートアップに対して期待感を高めていることなどが影響しているといわれています。
また、$100M以上の大型調達で見た場合、イギリスが68件と最も多いのに対し、ドイツ (37件)やフランス (23件)など、「非イギリス」のヨーロッパで121件を占めるなど、これまではイギリスを中心に回っていたヨーロッパのエコシステムが徐々に第二国、第三国へと広がりを見せています。
これもEUという多国間の経済圏や、国家主導でスタートアップ・エコシステムを作るヨーロッパ特有の傾向が好循環を生み出している証拠なのではないでしょうか。
一方、上記とは違った目線で、人材面でも面白いデータがあるので紹介します。
上のグラフは、”ヨーロッパにおけるスタートアップ起業家が、これまでどのような経験をもって創業したのか”を表すものとなっています。
ヨーロッパの起業家のうち37%は、アーリーステージとレイターステージのスタートアップ双方での勤務経験 (このグラフでは ”Multi-generation”と表現)をもつ、という統計が出ています。
また、同じく19%はユニコーン企業での勤務経験、16%は海外での勤務経験を持っているようです。
数字としてまだまだ大きいものではありませんが、ペイパルマフィアに代表されるように、人材がエコシステム内で循環されるような流れがヨーロッパでもできつつあることを示しています。
またこれまではヨーロッパからアメリカへ人材が流出してきましたが、エコシステムの構築に合わせて徐々にヨーロッパに出戻る動きも見え始めていることが示唆されます。
ちなみに、ヨーロッパのテック企業の中で起業家を多く輩出しているのは、主事業とは別にE-commerce向けのインキュベーターを社内に持っているベルリンのRocket Internetで、これまで393名の起業家を輩出しているそうです!
ではここから、今年大型調達を実施した注目のユニコーン企業2社をご紹介します。
Northvolt(スウェーデン)
2021年にもっとも大規模な調達 ($2.8B)を実施したのが、再利用可能な材料によるリチウムイオン電池を開発生産する、2016年創業のスウェーデンのスタートアップNorthvoltでした。
本調達ではVolkswagenやGoldman Sachsなどが参画しています。
今年のCOP26気候変動サミットでは、2040年までに全ての新車販売をゼロエミッション仕様にすることに関する宣言が発出されました。
大きな市場を持つアメリカや中国の各政府、そしてトヨタやVolkswagenは宣言に参加していない一方、イギリスやスウェーデン政府、フォードやGM、Volvoなどは宣言に署名をし、各国・各企業の思惑が真っ二つに割れたことが話題になりました。
電気自動車が今後の主軸となることが予想されると同時に、サステイナブルを両立しなければ全世界に製品を販売できなくなる時代を見据えて先行的な出資が実施されたと見られます。
SDGsやサステイナビリティに対する意識が高いヨーロッパでは、このように技術を軸に据えたスタートアップ (Deep Tech)が高まりを見せており、そのムーブメントを先行する事例としても注目が集まります。
Deep Techについてはこちらの記事でもまとめています。
Gorillas(ドイツ)
過去の記事でコロナ禍で急拡大を見せるフードデリバリーのトレンドをご紹介しましたが、調理品に加えて生鮮食品のデリバリーも各国で様々なスタートアップが出てきています。
中でもGorillasは、2020年5月の創業後わずか9ヶ月で評価額10億ドル以上のユニコーンとなり、ヨーロッパの企業では史上最速であったようです。
まさに「コロナバブル」の象徴とも言えるGorillasですが、競合他社との主な差別化要因は、
① (ユーザー目線) 注文後10分以内の配達を確約、
② (ギグワーカー目線) 固定給や健康保険等ギグワーカーにとって高待遇の勤務条件を提供、
③ (事業開発) スーパーマーケット大手や新興のネオバンクとのパートナー連携による迅速な事業拡大、
の3つだと整理できます。
ただし②に関しては、ギグワーカーからの不当解雇がSNS上に出回り物議を醸すなど、いわゆる「成長痛」も顕在化しつつあります。
既にヨーロッパ8カ国に加えてアメリカにも進出するGorillasがどのように事業を伸ばしていくのか、またアフターコロナにおいても事業モデルを維持できるのかに注目が集まります。
なおGorillasの創業者もRocket Internetの出身となります。
ロシア・CIS諸国
ロシア・CIS諸国においては、ユニコーン企業(единорог)が誕生しきれていない現状があります。
その背景には、「優秀な起業家人材の国外流出」が挙げられます。
先掲のCB Insightsによるユニコーン企業リストを見ると、ロシアに拠点を置く企業は1社もありません。ただし企業の経営者に目を向けると実はロシア出身の起業家が立ち上げた企業が多数あります。
ロシアのビジネスメディアによれば、CB Insights掲載企業のうち、少なくとも【11社】がロシア出身者による企業、もしくはロシアにルーツを持つ企業です。
企業名 | 評価額 (10億ドル) |
業種 | 所在地 | ルーツ |
---|---|---|---|---|
Revolut | 33 | Fintech | イギリス | 代表2名がモスクワ、ウクライナ出身。うちニコライ・ストロンツキーはモスクワで修士号取得。 |
GoPuff | 8.9 | LogiTech | アメリカ | CEOがロシア生まれ。 |
Sila Nanotechnology | 3.3 | HighTech | アメリカ | 代表2名がセヴァストポリ/サンクトペテルブルク出身。 |
Acronis | 2.5 | SaaS | スイス | 代表2名がモスクワ物理技術大学卒業。 |
Webflow | 2.1 | SaaS | アメリカ | 代表2名がロシア・アメリカ二重国籍。 |
OCSiAI | 2.0 | HighTech | ルクセンブルグ | 代表4名がノヴォシビルスク、クラスノヤルスク、トムスク、ブリヤート共和国出身。 |
Formlabs | 2.0 | HighTech | アメリカ | 代表がロシア出身。 |
Personio | 1.7 | HR | ドイツ | 代表がモスクワ物理技術大学卒業。 |
Outschool | 1.3 | EdTech | アメリカ | 代表がロシア出身。 |
OrcaBio | 1.0 | MedTech | アメリカ | 代表がブルガリア→ロシアへ移住。 |
TradingView | 3.0 | Finance | イギリス | 代表2名がロストフ・ナ・ドヌー、ロストフの経済大学卒業。 |
上記に加えて、CIS諸国にルーツを持つユニコーンも【11社】あります。
ここから、ロシア・CIS地域が実はユニコーン企業を生み出すポテンシャルを持っていることが分かります。
ただしそのポテンシャルを持つ人材は続々とアメリカやヨーロッパなど国外に流出しているのが現状です。
この背景にあるのが、ロシア・CIS諸国内における投資資本の不足です。
・ロシア経済の不安定性
・スタートアップ起業・経営支援の少なさ
などが、ロシア人起業家の国外流出の大きな理由とされています。
ロシアの場合、ソ連時代の名残もあって、大学、大学院、研究所など高等教育機関のレベルが高く、特に理系分野(工学、情報工学、数学など)に強い人材が次々輩出されています。しかしロシア経済の成熟が乏しく、彼らが持つ先端技術や高度な教養への需要が醸成できていません。ゆえに彼らは機会を求めてアメリカなどの需要がある地域に進出せざるを得ないのです。
また最近では、アメリカ、中国、韓国の大手企業が、高等教育機関に直接リクルートをかけ、起業家の卵を青田買いする事例が増えています。
例えばロシアが現在開発に注力するロシア版シリコンバレー「スコルコヴォ」に建つスコルコヴォ科学技術大学には、サムスンやLG、HUAWEIのオフィスがありました。(2020年取材時)同大学の優秀な学生はインターンシップとしてそのオフィスで働きながら教育を受けた後、本社で採用されるようです。
スコルコヴォについては下記の記事でまとめています。あわせてお読みください。
その中でも、ユニコーン企業に近づくロシア企業は増えています。
今最もユニコーン達成に近いのが、In Driverという配車アプリ運営企業です。一部では評価額が12億3000万ドルとされており、既にユニコーンを達成している可能性もあります。
In Driverは、Uber同様、個人ドライバーと乗客をマッチングするサービスですが、都市内旅客輸送のみならず、都市間旅客輸送、都市内貨物輸送、都市間貨物輸送とあらゆる輸送需要に対応しているのが特徴です。
同社は、2012年にヤクーツクで創業。この年ヤクーツクでは最低気温が-45℃を記録する厳冬に見舞われたのですが、この際既存のタクシー会社は需要増加を受けて価格を引き上げました。これに激怒した学生たちがロシア版Facebookの「VKontakte」で同志を募り、白タクを始めました。
ここがルーツとなり、同社が創業しました。
現在ではロシア、中央・南アジア、ラテンアメリカを中心に38か国500を超える都市でサービスが提供され、類型乗車回数10億回、延べ1億人が利用しています。2021年初頭に1億5000万ドルの資金調達に成功しました。
他方、ロシアではユニコーンを達成した企業もあります。
その一つがAvitoというC2C総合プラットフォーム運営企業です。
同社は2015年にオランダのインターネット企業Prosus & Naspersが12億ドルで筆頭株主となりました。ですので厳密にはExited Unicornという分類にはなりますが、ユニコーン達成企業と言えるでしょう。
Avitoは、物品の売買、不動産売買、求人、フリーランスなどの分野で個人と個人をつなぐ(C2C)プラットフォームです。
物品の売買、いわゆるフリーマーケット部門では、サンダルからショベルカーまで、本当に何でも取引することができます。
またフリーランス部門はもっと面白く、スノーボードの貸し出しから、個人向けマッサージ、果てには家の建設まで幅広いサービスを受発注することが可能です。
直近では2019年1月に資金調達に成功し、類型資金調達回数は6回、延べ調達額は13億ドルとなっています。
このように、ロシア・CIS諸国にはユニコーン企業が誕生するポテンシャルがありつつも、他方でユニコーン企業にまで育て上げる環境が整っていないのが現実です。
しかしながらその中でもユニコーン達成に近づく、あるいは実際に成功した企業もあります。
また政府もスタートアップへの投資・育成支援政策を強化しており、近いうちにユニコーンが続々誕生する可能性が高まっています。
2022年もロシア・CIS諸国から目が離せません。
ラテンアメリカ
ブラジル・メキシコを筆頭に、2021年以前からユニコーン企業の輩出が続いているラテンアメリカですが、2021年はSoftBankがラテンアメリカに特化した2号ファンド(SoftBank Latin America Fund)を設立したことで、日本でもラテンアメリカ市場への注目がより高まった1年だったのではないでしょうか。
VC、PEなどのデータを分析するPitchbook社によると、2021年にラテンアメリカでは合計772件・約148億ドルの資金調達が実施されているとのことです。(2021年12月16日現在)
これは、過去6年間のラテンアメリカへの投資額を合計した金額よりも多く、いかに2021年がラテンアメリカにとって飛躍の年だったかをご理解いただけるかと思います。
そんなラテンアメリカでは、2021年に合計【13社】のユニコーンが誕生しました!
2021年にユニコーン企業となったラテンアメリカのスタートアップ
国 | 企業名 | 評価額(10億ドル) | 業種 |
---|---|---|---|
ブラジル | Nuvemshop | 3.1 | EC |
ブラジル | Cloudwalk | 2.2 | Fintech |
ブラジル | Olist | 1.5 | EC |
ブラジル | MadeiraMadeira | 1.0 | EC |
ブラジル | Unico | 1.0 | AI |
ブラジル | CargoX | 1.0 | LogiTech |
メキシコ | Bitso | 2.2 | Fintech |
メキシコ | Clip | 2.0 | Fintech |
メキシコ | Konfio | 1.3 | Fintech |
メキシコ | Merama | 1.2 | EC |
メキシコ | Clara | 1.0 | Fintech |
アルゼンチン | Ualá | 2.5 | Fintech |
チリ | NotCo | 1.5 | Foodtech |
これまで特にフィンテック企業の台頭が目立っていたラテンアメリカですが、2021年にはフィンテック以外の領域でも多数のユニコーンが現れました。
特にチリとアルゼンチンでは、同国初のユニコーンが誕生し、ラテンアメリカ全体としてスタートアップ・エコシステムが成長していることが伺えます。
世界中のどの地域でも、最初のユニコーン企業の誕生を皮切りに、ドミノ現象として次々とユニコーンが誕生することが多く、ラテンアメリカでも今後の急成長がより期待されています!
それでは、ここから特に注目の3社についてご紹介します。
Unico(ブラジル)
UnicoはIDTechと呼ばれるテクノロジーを使ってデジタルIDを作成し、人々のデータを保護するスタートアップです。
サンパウロを拠点に、2007年にAcesso Digitalという社名で設立され、2021年に社名をUnicoに変更しました。
顔認証による本人認証、デジタル採用、電子署名の3つのプロダクトをメインで開発しています。
最近では医療業界にも進出し、すでに800社以上のクライアントがいるなど、ラテンアメリカでのAI・生体認証領域の成長を牽引しています。
ラテンアメリカで大きな影響を持つSoftBank Latin America FundとGeneral Atlanticが主導する資金調達により、ユニコーン企業となりました。
Bitso(メキシコ)
2014年にメキシコシティで設立されたBitsoは、メキシコ初のビットコイン取引所で、アメリカからメキシコへの送金を促進する目的でペソ、米ドル、ビットコインのやりとりを可能にしています。
現在、300万人以上のユーザーを抱え、2700万回以上の取引を実現しています。
様々なFintech企業がひしめき合うメキシコ市場の中でも、その成長率の高さから特に注目されている企業です。
2020年から2021年にかけて、アルゼンチン、ブラジル、エルサルバドルと、メキシコ国外にも事業を拡大し、Tiger GlobalとCoatueが主導する資金調達を経て、ユニコーン企業となりました。
NotCo(チリ)
チリ発のユニコーン企業となったNotCoは、2015年にサンティアゴで設立された植物由来の食品を製造するFoodTech企業です。
植物性のミルク、ハンバーガー用パティ、肉、アイスクリーム、マヨネーズを販売しており、2020年にチリのBurger KingとPapa John’sのVegan用メニューのメインサプライヤーとして採用されるなど、世界的な大手チェーンにも実力を認められています。
また、メインプロダクトである「NotMilk」はアメリカでも発売されており、ラテンアメリカ以外にも順調に市場を拡大しています。
将来的にはアジアやヨーロッパにも進出する予定とのことですので、日本でも味わえる日が来るかもしれませんね!
ラテンアメリカにおけるSoonicorn
国家および通貨の脆弱性、治安の不安定さなど、ラテンアメリカ各国で類似の社会課題があるため、国をまたいだスケールアップがしやすいのがラテンアメリカのスタートアップの特徴です。そのため、設立当初から国外への展開を視野に入れており、その結果、企業評価額も高くなりやすいと考えられています。
なお、ラテンアメリカ全体ではフィンテック企業を中心に、多くの「Soonicorn」(スーニコーン:もうすぐユニコーンになると予想されている企業)があり、2022年も目が離せない要注目のマーケットです!
アジア
先掲のCB Insightsの国別ユニコーン企業の数を見ると、米国と中国で全世界の7割のユニコーン企業数を占めており、世界で最も評価額が高いユニコーン企業は、全世界的に大流行している動画投稿アプリ「TikTok」を運営する中国の企業ByteDanceで、Technodeの記事によると2021年12月時点での市場評価額は3,530億米ドルに達しました。
世界のスタートアップ企業の資金調達は増加傾向にあり、今後もユニコーン企業は増え続ける見通しである一方、2021年の中国のユニコーン企業数の増加率は低下気味です。
インドのスタートデータ分析サービスTracxnの2021年12月時点のデータによると、2021年中国で新たに誕生したユニコーン企業数は21社。2018年や2019年には30社を超えていましたが、この勢いは2020年以降低速気味です。
他方、ユニコーン企業の増加率が顕著なのはインドです。
同社の12月時点のデータによると、2021年インドで誕生したユニコーン企業数は35社。昨年度の12社と比べて大幅に増加しています。
インドは現在、世界第3位のスタートアップ・エコシステムとして台頭し、さらにイノベーションの質で2位にランクされており、今後の成長が益々期待される地域です。世界のユニコーン企業のうち、10社に1社はインドで誕生しているとも言われています。
また日本経済新聞の記事によると、2021年は10月11日までに東南アジアで新たに誕生したユニコーン企業数は18社。東南アジアにユニコーン第1号が13年に登場してから20年までの全合計が19社だったのに比べて、急激に伸びていると言えるでしょう。
中国で誕生するユニコーンの数が著しく減少しているのは、政府による自国テック企業の規制強化、また米中経済摩擦が背景にあります。
中国共産党による自国の社会主義市場経済体制は「中国の特色ある社会主義」と呼ばれていますが、所得格差の拡大などで国民の不満が高まり、社会主義への原点回帰として「共同富裕」(共に豊かになる)戦略を追求するようになりました。そこで自国の大手IT企業に、法違反を主張し罰金を課すなど中国当局による締め付けを強化するようになりました。
このような規制強化は、民営企業の発展の足かせになるだけでなく、中国国内外の投資家の心理悪化にも繋がっています。
さらに、米中経済摩擦がスタートアップ業界にも影を落としています。
米国では、米国の投資家は米国以外の海外スタートアップ、特にイギリスやカナダ、インドの企業への投資比率を高めている一方で、中国企業への投資比率は低下傾向にあります。
また中国では、中国配車サービス最大手のDiDiが2021年12月3日、米株式市場の上場を廃止する手続きを始めると発表しました。
中国当局が、米国へ重要データが流出することを懸念したことが理由です。
このように中国のテック企業締め付けや深まる米中のデカップリングにより、中国離れとなった投資の動きは、インドや東南アジアに向けられるようになりました。
ここで、特に成長が著しいインドでのトレンドと、大型調達を行った注目すべきユニコーン企業をご紹介します。
Zetwork(インド)
KrAsiaの記事によると、今年インドでは、ベンチャーキャピタルからの投資が300億ドルを超えたと報じられています。特にオンラインBtoBサービスを手がける企業のユニコーン化が目立ちます。
これまでインドでは中小企業・商店の多くが個人の力に頼り、デジタル化が遅れていました。従来のサプライチェーンの仕組みでは、メーカーにとって新しいサプライヤーを見つけるのは困難であり、特に未組織の中小企業サプライヤーから調達するのは非効率でした。
このように未発達だった領域が、コロナ禍によるデジタル化の後押しもあり、急成長を遂げました。
その中で、今年ユニコーン企業に昇格したインドの企業Zetwerkは、2021年12月、2億1千万ドルを調達しました。
2018年に設立された同社は、インドを拠点とする製造業やインフラ企業向けの受発注プラットフォームを提供し、カスタマイズ製品や産業用機械部品などのベンダーやサプライヤーとメーカーをマッチングさせるサービスを行っています。
急速に変化するグローバルサプライチェーンの中で、製造業のデジタル化への移行を支援し、急成長するインドのBtoBマーケットプレイス分野の一翼を担っています。
他にもインドでは大型調達案件が相次いでいます。
政治的背景や国際情勢による追い風もありますが、ますます成長が期待されるアジア市場に2022年も目が離せません。
中東
中東のエコシステムは、「イスラエル一強」と言っても過言ではありません。
2021年に新しくユニコーンとなった中東のスタートアップ17社のうち、14社がイスラエルの企業でした。
今年のイスラエルの新たなユニコーンは、例年の通り、サイバーセキュリティの分野が5社と最も多く、次いでSaaS系・AI系・Fintech系がそれぞれ2社ずつとなりました。
そんなイスラエルの一強の中東ですが、イスラエル以外の国でも新しいエコシステム都市が形成されつつあります。
それが、トルコのイスタンブール / アラブ首長国連邦のドバイです。
イスタンブールとドバイは、2021年の新興スタートアップ・エコシステムにおいて、それぞれ世界11位・15位と評価され、モスクワやヘルシンキを上回ります。
2021年にユニコーンとなった企業数は、イスタンブールが2社・ドバイが1社であり、イスタンブールとドバイのユニコーンの累計数がどちらも3社となりました。
ここで、両都市に焦点を当ててご紹介します。
イスタンブール
イスタンブールにおいて特に熱が高い業界が、モバイルゲーム業界です。
トルコでは、人口の65%が毎日ゲームをするというほど人気という下地があり、ゲームが人気コンテンツとなっています。
また、ゲーム会社の「Peak Games」が2020年に輩出されたトルコ初のユニコーンとして買収されたことで、ゲーム開発の熱がさらに高まりました。
国内市場が比較的小さく、言語も外部と異なる国の会社が外貨を得るのに、ゲームという手段は戦略的にもマッチしていました。
現在では、すべてのゲーム収益の約95%が海外からのものとなっています。
トルコ政府は、この業界をさらに支援するべく、2021年の12月にゲーム開発センター(OGEM)を設立しました。
この施設では、開発支援からマーケティングセミナーにわたり、ゲーム系スタートアップが育つ環境が整えられており、ゲーム業界におけるエコシステムの更なる強化となるでしょう。
2021年には、Dream Gamesが新たにユニコーンに加わりました。
トルコのゲーム業界には、引き続き注目です。
ドバイ
ドバイの特徴は、MENA地域(中東・北アフリカ地域)のビジネスハブになっていることです。
産油国であるアラブ首長国連邦の中でも石油資源が少ないドバイは、中継貿易に注力した歴史があり、空港・港インフラが整備され、外国企業と金融機関が多く存在する特区が設けられました。
その結果、中東の中で、新しいビジネスなども集まりやすい都市となり、GITEX Future Stars や STEP Conferenceなどの有数のスタートアップイベントが開催される拠点となっています。
そんな中、2021年には、Kitopiがユニコーンとなりました。
Kitopiは、クラウドキッチンを提供するスタートアップです。
飲食店が同社と契約し、レシピの共有を行います。そして同社はその飲食店に対し、ブランド使用料を納める仕組みです。
ユーザーは、その商品をデリバリーで注文することができ、注文を受けたKitopiは、出前で商品を提供します。
食材の調達から調理、配達まで全てKitopiのスタッフが担当するのが特徴です。
いかがでしたでしょうか。
2022年も、各国での新たなユニコーンの誕生や、スタートアップ・エコシステムの更なる躍進に引き続き注目していきましょう!
RouteX Inc.では引き続きスタートアップ・エコシステムにおける「情報の非対称性」を無くすため、世界中のスタートアップとの連携を進めてまいります。
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