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2021年9月28日~10月1日の4日間にわたって、世界最大のHRテクノロジーカンファレンスであるHR Technology Conference & Expo(以下、HR Tech Conference)が開催されました!

HR Tech Conferenceは1997年から毎年1回ラスベガスにて開催されており、世界中の企業のブース出展、ピッチコンテストや著名人によるセミナーなどを実施しています。
残念ながら、昨年はコロナウイルスの感染防止対策のためオンラインでの開催となり、ピッチコンテスト「Pitchfest」は中止となってしまいましたが、今年は例年通りオフラインにて実施されました。

多数の応募企業の中から34社の選ばれしスタートアップが予選ラウンドにて5分間のピッチを行い、そのうち以下の6社が決勝ラウンドに残りました。

今回は、選りすぐりのスタートアップの中から、見事決勝ラウンドに残った注目の6社をご紹介します!

<決勝ラウンド進出企業6社(アルファベット順)>

  • Compa
  • ICC (Innovate. Coach. Consult.)
  • Learn In
  • Onwards HR
  • Sciolytix
  • WorqDrive

<その他のPitchfest参加企業28社(アルファベット順)>

優勝:Onwards HR(オンワーズ エイチアール)

引用:Onwards HR公式HP

数々のスタートアップの中から優勝し、25,000ドルの賞金を手にしたのは、従業員の解雇を合理的かつリスクを減らして自動化するためのテクノロジーを提供するOnwards HR(オンワーズ エイチアール)です。

2017年にジョージア州・アルファレッタで設立された同社は、データの透明性とテクノロジーを利用して、企業が退職を合理化し、ミスを防ぎつつ、バイアスを軽減するための解雇プロセスを実現するプラットフォームです。

欧米では日本と比べて、従業員の解雇は一般的によく起こりうることですが、決して簡単に行えるわけではなく、従業員の評価などのデータをもとに適切な判断を下す必要があります。

また、解雇理由の妥当性が不足していたり、プロセスを誤れば、企業が訴えられるリスクも当然あります。

Onwards HRのCEOであるSarah Rodehorst氏は、Pitchfestにて「従業員の解雇領域は、HRのダークサイドであり、誰も手をつけていない領域」と述べたうえで、「解雇プロセスは、困難かつ時間がかかり、ミスが発生しやすいことが多く、アメリカの企業は離職管理のためのリソースを大きく浪費している」と指摘しました。

Onwards HRは、そのような解雇のプロセスに焦点をあて、従業員データの一元化、退職金の計算、従業員の選択の正当性の証明、退職合意書の作成、通知・配送・署名の追跡といったプロセスを通じて雇用主をサポートしています。

また、同社のワークフォースアナリティクスでは、人口統計学をベースに高度な分析を行い、多様性、公平性、インクルージョンの目標を損なうことがないように配慮された設計となっていると言います。

直近の2021年9月にシードラウンドで50万ドルの資金調達を行っていますが、今回のPitchfestの優勝により、さらに多くの出資を受ける可能性があると考えられます。

これまで手付かずであった解雇領域のHR TechがPitchfestで優勝したことで、今後同分野でのスタートアップの誕生も期待されます!

Onwards HRのツイッターにて優勝を報告

準優勝:Sciolytix(サイオリティックス)

引用:Sciolytix公式HP

Onwards HRに続き準優勝となり、5000ドルの賞金を手にしたのは、Sciolytix(サイオリティックス)です。

1998年からニューヨークを拠点に活動する同社は、経験学習と予測分析を専門とするソフトウェア企業で、組織が人材を採用・育成する方法を変え、トレーニングをパフォーマンスに結びつけることを目指して、先進的なサービスを提供しています。

様々な人材育成手法が提言されている今日でも、多くの企業は人材育成の投資からリターンを得ることが難しく、どれだけのコストを費やしても測定可能なパフォーマンスの向上を検知することが困難な状況にあります。

Sciolytixのソフトウェアは、人材を戦略的に管理し、各従業員の潜在能力を引き出し、組織や個人の成功の可能性を予測するための深い洞察結果を提示します。
これによりセールスパフォーマンスの予測や、アバターやゲーミフィケーションなどの没入型の学習体験のサービスを提供しており、従業員が直面する現実の課題に事前に備えることができます。
また、トレーニング結果のスコア分析を通じて、各従業員の課題・進捗を正確に把握することが可能です。

Sciolytixのウェブサイト上のビデオライブラリでは、動画とともに各サービスの概要が説明されており、非常に面白いですので、ぜひチェックしてみてください!

Compa(カンパ)

引用:Compa公式HP

カリフォルニア州・ニューポート ビーチを本社としながら、リモートチームで働くCompa(カンパ)は、2020年の設立から1年、事業開始からわずか数か月でPitchfestのファイナリストとなった、成長著しいスタートアップです。

HR Tech Conferenceの直前の2021年8月にBase10 Partnersを中心とした390万ドルのシードラウンドの資金調達を実施し、ステルスモードを脱却・TechCrunchに掲載されるなど、話題になっていましたが、今回のファイナリスト選出で、ますます注目を集めることになるでしょう。

Compaが解決する人事課題は、企業の採用プロセスにおける報酬決定です。
採用担当者が候補者にどの程度の報酬を支払うべきかを考えるあまり、報酬決定プロセスを効果的に伝えるためのデータやツールを欠いていることが多い、とCEOであるCharlie Franklin氏は指摘しています。
そこで、Compaはオファーマネジメントプラットフォームを提供し、採用担当者による希望給与の入力、最近のオファーの比較などを通して、他のチームメンバーや採用担当者と協力して、より早く、報酬合意を実現することを可能にしました。

また、すべての市場情報をリアルタイムで可視化し、類似する業界や組織の報酬に関する情報提供も行うことで、報酬の妥当性を確認することもできます。

コロナウイルスの感染拡大を契機に、世界的にリモートワークが普及し、企業が多様な人材を確保するために、報酬はより重要な要素となっています。

今後、報酬決定プロセスの透明化を求める企業が増えることは容易に予想され、Compaのさらなる成長が期待されます!

ICC (Innovate. Coach. Consult.)(アイシーシー)

コロラド州・デンバーに本社を置く、ICC(アイシーシー)は2010年に設立し、現在は28カ国に225のオフィスを持ち、世界各国でサービスを提供しています。
ICCは、職場のリーダーと従業員の成果を向上させるために、エグゼクティブ・コーチング、再就職支援サービス、リーダー育成プログラムの3つのサービスを提供している企業です。

エグゼクティブ・コーチングでは、最初にリーダーの役割と期待に沿った目標を定めたうえで、360度の定性インタビュー、定量評価、観察セッションを行いながら、自己認識を深めていきます。
さらに、月に2回のコーチング面談を行い、過去の行動を振り返りながら、成功に結びつく行動を強化し、目標の達成に導いています。

リーダー育成プログラムはAccelerator™と呼ばれ、マイクロラーニングを用いたプログラムや、専任のファシリテーターによるライブのバーチャルグループコーチング、1対1のコーチングセッションなどの様々なプログラムを提供し、エンゲージメントや知識定着率の向上を図っています。

再就職支援サービスは、リストラなどで退職せざるを得ない従業員のためのプログラムで、履歴書の作成や書き方、面接のサポートなどを含め、従業員が再就職に必要なスキルを習得するために、専任のトランジション・コーチが、各従業員にカスタマイズされたプランを設計し、迅速に転職活動を行えるように支援しています。

アメリカでは経営者がプロのコーチングを受けることは一般的ですが、従業員向けにもコーチングの需要が高まっていることがよくわかりますね。

Learn In(ラーン イン)

引用:Learn In公式HP

カリフォルニア州・サンフランシスコに拠点を置くLearn In(ラーン イン)は、upskilling-as-a-serviceのプラットフォームを提供し、企業が従業員にサバティカル休暇を与え、その間に職場で必要な新しいスキルを習得することを実現しています。
前述のCompaと同じく、2020年に設立したLearn Inは、同年4月にAlbum VCなどから350万ドルのシードラウンドの資金調達を実施しており、成長過程にあるスタートアップです。
Learn Inは、従来、在職期間の長い従業員のために用意されていたサバティカル休暇を、新入社員から役員まであらゆるレベルの従業員を確保したいと考えている企業のためのオプションとして提供しています。
Learn Inのプラットフォームを活用することで、例えば、週の一部は会社で働き続け、残りは学習ブートキャンプで過ごしながら、自身のスキルアップの時間に充てることができます。

また、特にデータサイエンスやソフトウェアエンジニアリングなどのデジタルスキルや人材確保が困難な職種に焦点を当て、Podium EducationFlatIron SchoolFoundry CollegeなどのEdtech企業と提携し、従業員がスキルアップできるようなオンライントレーニングプログラムや学位取得のオプションも提供しています。
上記の他、スキル習得支援のためのコーチングプログラムや、企業のDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)を高めるための人材分析ツール、企業が提供している学費補助の状況や、従業員のスキルアップに伴うROIの把握などを行うTuition Assisatanceなどのサービスも提供しています。

日本でも従業員のアップスキリングが重要視されつつあるものの、まだまだ既存の業務を優先してしまい、後回しになっている傾向にあるかと思います。

WORQDRIVE(ワークドライブ)

引用:WORQDRIVE公式HP

オハイオ州・コロンバスに拠点を置くWORQDRIVE(ワークドライブ)は、従業員の定着率を向上するために設計された社内モビリティソリューションです。
LinkedInの調査によると、94%の人が、会社が自分のキャリアに投資するなら転職せずにより長く企業に留まる、と考えていると言います。

WORQDRIVEは、そのような課題に目を付け、インターナルモビリティ(社内異動)を効率的かつ効果的に行うためのソリューションを提供しています。
例えば、LinkedInなどでリクルーターからスカウトメールが来るように、従業員の希望やスキルに基づいて募集中の仕事を自動でマッチングし、提示します。従業員は、興味があればOneCliQ Apply機能を使って、マッチした求人に応募することができます。

また、スキルに焦点を当ててマッチングするために、従業員のデータは全て匿名となっているため、従業員は安心して利用することが可能で、人事担当者もバイアスを取り除いて候補者を確認することができます。

なお、WORQDRIVE Analyticsというピープルアナリティクス機能も提供しており、従業員のスキルの可視化や、ハイパフォーマー・ハイポテンシャル人材の認知、確保も促進しています。

日本でも人材の流動性が高まっており、従業員のリテンションは各企業の大きな課題となっていますので、同社も要注目のサービスとなりそうです!

まとめ

いかがでしたでしょうか。
例年、新しいトレンドが生まれるHR Tech Conferenceですが、今年もOnwards HRの解雇プロセス、Compaのオファー時の報酬決定、WORQDRIVEの社内異動など、これまであまり着目されていない領域でのスタートアップが活躍する結果となりました。

昨年はPitchfestは開催されませんでしたが、一昨年の2019年のPitchfestではAIの活用やEmployee Experienceに着目したサービスが多くありました。

2019年と比べると、AIを前面に押し出したサービスは少なくなった印象ですが、Sciolytix、ICC、Lean Inは、手段は違えど従業員のアップスキリングやキャリア支援などのEmployee Experienceを後押しするソリューションを提供しています。

EdTechを絡めたHR Techのソリューションは、引き続き注目すべきトレンドと言えそうですね。
今後も新しいサービスが出てくるのが楽しみです!

投稿者:大谷 奈々
オーストラリア滞在中に仲良くなったコロンビア人からレゲトンミュージックやサルサダンスを教わったことからスペイン語圏の文化に興味を持ち、スペイン語の学習を始める。
現在は、大手コンサルティングファームで人事コンサルタントとして働きながら、RouteXでは主にスペイン・中南米のスタートアップエコシステムのリサーチを担当している。

RouteX Inc.では、スペイン・中南米を始め、引き続きスタートアップ・エコシステムにおける「情報の非対称性」を無くすため、世界中のスタートアップとの連携を進めてまいります。
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