みなさんはフランスのスタートアップエコシステムについてどのような印象をお持ちでしょうか。
フランスは2013年にフランス政府が立ち上げたプロジェクト・La French Techに端を発し、首都パリを中心に急速に発展を遂げています。またBpi Franceとよばれる公的な投資銀行を中心とした起業家支援によって、若年層を中心に多くのスタートアップ人材が誕生している、ヨーロッパでも注目のスタートアップエコシステムとなっています。
(フランス、パリのエコシステムについてはこちらをご覧ください)
今回パリで2019年にVRを用いたサービスを展開するスタートアップを立ち上げたAptero CEO Cedric Chaneさんにお話を伺いました!現地の起業家に対するインタビューを通じて、フランス・パリのスタートアップエコシステムを探っていきたいと思います。
VRを用いた仮想会議室でビジネスにおける出張を減らす
ではまずChaneさんがCEOを務めるApteroについて説明します。
Apteroは、VR(Virtual Reality)を用いて各企業が頻繁におこなっている自社外での出張を減らすことをビジョンとしています。フランスでは主に社外の人との打ち合わせを目的として、従業員一人当たり年間で€2,500(約¥300,000)も費やしているというデータがあるようです。
さらに出張は金銭面だけではなく、時間と地球環境に対しても大きな負荷をかけており、年間に直すと一人当たり12日分の時間を浪費し、2.5トンの二酸化炭素を地球に排出しているというデータを算出しています。これはフランスに限らず、基本的には対面での打ち合わせを望む日本においても類似しているのではないでしょうか。
Apteroでは3次元空間における作業を様々な技術を使って再現しており、WebVRによってVRキットでもスマートフォンでも利用できるようになっております。
現在フランスに本社を持つ世界最大の化粧品会社L’Orealと合同でPoCを実施し、フランス本社と中国支社をシームレスに繋ぐ社内サービスを開発しているようです。他にもフランスのメガバンクBNP Paribasやシャルルドゴール空港などさらなる発展に向けてプロジェクトを推進しているようです。これからのさらなるサービス拡大に期待がもたれます!
さらにApteroのサービスを後押しするのが近年のCovid-19の蔓延です。実際にApteroではリモートでの業務でも生産性を下げないための施策として、WebVRを用いたビジネス会議を提案しており、YouTubeにおいてそのデモ動画を発信しています。詳しくはこちらをご覧ください。
またApteroの事業内容や協業に興味がある方は弊社お問い合わせよりご連絡ください。
スタートアップにおける国籍の多様性
今回お話を伺ったChaneさんは、もともとインド洋に浮かぶフランス語圏の島国モーリシャスにルーツをもち、幼少時にフランスに移り住んだ経歴をもっています。その後アメリカのUC Berkeley、フランスのHEC Parisを経て、現在のチームでシリコンバレーで最も有名なVCの一つ、Y CombinatorのStartup Schoolを卒業されています。
またApteroのチームメンバーはコロンビア・タイのルーツをもつメンバーが役員を務めているようです。
Y Combinatorはシード期に特化したVCおよびアクセラレータとして、AirbnbやDropboxといった著名なユニコーン企業を多数輩出しているとともに、自社独自のカリキュラムに沿ったStartup Schoolを通じて将来のユニコーン企業を生み出すスタートアップエコシステムを構築しています。
近年では、シリコンバレーの成熟にともない投資対象が世界中に広がっていることが特徴です。
2019年にY Combinator Startup SchoolがYouTubeで配信している資料を見ると、これまでStartup Schoolを卒業した21,000のスタートアップのうち大半はアメリカ出身ですが、国外からもパリを含めた世界中から集まってきていることがみてとれます。
このように、世界中のスタートアップエコシステムで多国籍化が進むとともに、スタートアップのチーム内も多様性が進んでいることがいえるのではないでしょうか。
現地の起業家が考えるフランスのエコシステムの課題とは
2013年のLe French Techローンチ以降、急速に成長しているフランスのスタートアップエコシステムですが、現地の起業家は様々な課題を抱えているようです。Chaneさんによると、パリではVCからの十分な出資が得られず倒産に追い込まれるケースが散見されるようです。
急速なスタートアップエコシステムの発展に伴って、スタートアップへの投資が堅調に伸びているフランスにおいても、シリコンバレーのような包括的な投資にはまだ至っていない現状があるのだと考えられます。
いかがでしたでしょうか。
RouteX Inc.では、フランスを中心にヨーロッパのスタートアップエコシステムに関する調査を引き続き進めてまいります。記事として現地の様子を発信しておりますので、詳しくはこちらをご覧ください。
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