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熾烈な競争市場 中南米のフードデリバリーサービス

2020年から続くコロナ禍で著しく成長したビジネスの1つとして、フードデリバリーサービスを思いつく方も多いのではないでしょうか?
日本ではUber Eatsや出前館をはじめとして、楽天デリバリー、dデリバリー、LINEデリマ、menuなど様々なサービスが乱立していますが、世界でもフードデリバリーサービスを提供する企業が急成長しています。(フードデリバリーサービスについての特集はこちら。)

実は中南米地域も、世界的に注目されるフードデリバリーサービスの拡大地域となっており、各社の熾烈な争いが繰り広げられています。

中南米地域の主要なプレーヤーとしては、日本でもお馴染みのUber Eatsのほか、ブラジル発のiFoodや、コロンビア初のDomicilios.com、ウルグアイ発のPedidosYa、チリ発のCornershop、スペイン発のGlovo、日本でも主に関西エリアを中心に拡大しているDiDiFoodなどが挙げられます。

コロンビアにおけるフードデリバリーアプリの利用状況(2020年)

引用:statista

ただし、上記のプレーヤーのうちの多くは、すでに他の競合に買収されています。
例えば、Cornershopはつい先日の2021年6月にUberが買収し話題となりました。
また、PedidosYaとGlovoのラテンアメリカ拠点はドイツのグローバルフードデリバリー企業であるDelivery Heroの傘下に入っています。(ちなみに、2020年より日本でも展開しているfoodpandaもDelivery Hero傘下のブランドです。)

また、Domicilios.comもかつてはDelivery Hero傘下だったのですが、2020年にiFoodが買収しています。中南米地域の主要な2プレーヤーの合併は大きな話題になりましたが、この2社の合併の背景にあったのが、今回ご紹介するRappiです。

iFoodとDomicilios.comは「打倒Rappi」を掲げて合併に至り、その結果、コロンビア国内で最多の12,000店以上のレストランにサービスを展開することが可能になりましたが、依然としてコロンビア国内のシェアにおいて、Rappiの1位の座は奪われていません。

今回は、そんな最強王者のRappiについて詳しく見ていきましょう!

Rappiとは?

Rappiは中南米では知らない人はいないほどの有名スタートアップですが、日本にはまだ進出していないため、まずはRappiのサービスについてご紹介します。

Rappiは、日本で例えるとUber Eatsに近いですが、いわゆる一般的なフードデリバリーサービスとは異なるサービス展開をしています。
というのも、配達するのはレストランの料理に限らず、スーパー・薬局・家電量販店の商品など、店舗で売られているものはほぼ全て注文可能と言っても過言ではないからです。
また、車の清掃、家電の修理、ペットの散歩、おつかいなど、いわゆるスキルシェアリングサービスとしても展開しています。

Rappiのアプリ画面

(※筆者のアプリ画面より作成)

そしてなんと、ATMから現金を引き出して届けるサービスもあるというので、さらに驚きです!
実はこのATMの現金配達サービスは、ユーザーの意見を受けて始まったサービスの1つであると、CEOのSimón(シモン)氏がインタビューで語っています。

貧困層が多く、一般庶民にクレジットカードが普及していないコロンビアでは、今でも現金でのやりとりが主流となっており、ユーザーから「現金が手元に必要だから届けてくれないか」という問い合わせがあったそうです。
多くの企業では、馬鹿げているとスルーされてしまいそうな意見ですが、Rappiではその意見を受けてから48時間後にオンデマンド型のATMシステムを開発し、自宅や買い物先など、ユーザーが指定する場所に15分以内に現金を届けるサービスを開始しました。
ものすごい開発のスピード感ですよね!

上記はほんの一例ですが、このようにユーザーの意見を聞いて、できるだけ速く実現することを繰り返していることが、Rappiの急激な成長につながっていると言えるでしょう。

ソフトバンクとの関わり

Amazonが掲げる「Everything Store」ならぬ「Everything Delivery」を実現するRappiですが、日本でも大きな注目を集めるきっかけとなったのが、2019年のソフトバンクからの大型出資です。

Rappiはソフトバンクの出資以前にも、アメリカのシードアクセラレータとして有名なY Combinatorや、FacebookやAirbnbの投資家として有名なAndreessen Horowitzなどから資金調達を行っており、2018年にDST Globalから2億ドルを調達し、ユニコーン企業の仲間入りを果たしていました。

そんな成長のさなかで、2019年にソフトバンクグループの出資により設立されたSoftBank Innovation Fund(ラテンアメリカに特化したテクノロジー投資ファンド)の最初の投資先として選ばれたのがRappiでした。

同じくソフトバンクグループのSoftBank Vision Fundと合わせて、10億ドルという多額の投資を受け、Rappiは一気に中南米で評価額が高いスタートアップの1つとなりました。

Rappiの評価額は約35億ドルと推定されており、2021年時点ではNubank(ブラジルのネオバンク)、Kavak(メキシコの中古車販売プラットフォーム)に次ぐ3番目の評価額の高さとなっています。
(ちなみに、SoftBank Innovation FundはKavakにも投資しています。)

ラテンアメリカにおけるユニコーン企業の評価額ランキング(2021年)

引用:statista

Rappi誕生の経緯

創設からわずか3年でユニコーン企業に成長し、ソフトバンクからも大型出資を受けたRappiがどのように誕生したのか気になりますよね。
CEOのSimón Borrero(シモン・ボレロ)氏のバックグラウンドとともに、Rappi誕生の経緯について少し見てみましょう。

Rappiの共同創設者である3人
(左からCEOのSimón Borrero、Sebastian Mejia、Felipe Villamarin)

引用:Latamlist

Simónの両親は、自分でお金を稼ぐことを重視する教育方針だったとのことで、新しいおもちゃを手に入れるために、Simón自らジュースを販売するなど、幼い頃からビジネスについて考える機会の多い家庭で育ったそうです。

SimónはRappi創設前に、4つの会社を起業しており、学生時代から積極的に新たなビジネスにチャレンジしていました。
大学時代には、学生のパーティに飲み物を届けることを試したり、5,500人のモデルを抱えるオンライン事務所を設立したり、初産婦に出産経験を伝えるためのサービスを提供したりしました。
そして、Rappiの共同創設者であるSebastian Mejia(セバスティアン・メヒア)と一緒に、2013年にBtoB向けのスタートアップであるGrabilityを設立しました。
Grabilityでは、世界中のスーパーマーケット向けにオンラインでショッピングを行うためのソフトウェアシステムを開発し、WalmartやスペインのCorte Inglés、インドのRelianceなど、世界中の有名ブランドにもライセンスを提供して、そのUIの使いやすさから賞も受賞するなど、成功を収めました。
しかし、アプリの使いやすさの満足度は高い一方で、注文から24~48時間程度の時間がかかるロジスティクスの満足度は低く、大きな課題となっていました。

そこで、ロジスティクスも含めて全て自社でやろうと考え、家族経営の小さな商店の在庫を管理して、注文から20分で商品を配達するアプリを実験的に作ったところから、Rappiのサービスが始まりました。
Rappiのサービスに手ごたえはあったものの、アプリユーザーがいないことが課題であったため、サービス開始当初は路上でドーナツを配って、ダウンロードしてもらうようお願いしながらユーザーを増やしていきました。
そして、ドーナツを配った人にサービスに対する意見を聞き、レストランだけでなく、スーパーマーケットや薬局などの商品の配送も需要があることがわかり、現在のRappiのサービスの土台を作っていくこととなりました。

また、サービス開始当初は、パートナーとなるレストランを探すのも難しく、心を込めて作っている料理を、自転車やバイクで配達することに難色を示されていました。
そこで、料理をベストな状態で家まで配達することができると証明するために、配達用のボックスを改良したうえで、実際にシェフが作った料理を配達した後に、料理の温度や見た目の詳細をビデオに残し、自転車で配送しても料理完成直後の状態と変わらないことを示して、パートナーになってくれるレストランを増やしていったそうです。

先述のATMの現金配達サービスといい、創業当初からカスタマーの意見に耳を傾け、より良いカスタマーエクスペリエンスの提供を目指していることがよくわかるエピソードですね。

中南米発のスーパーアプリ誕生に向けて

2015年の創業当初から、ものすごい勢いで成長を続けているRappiですが、現在はコロンビアのほか、ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、チリ、ウルグアイ、ペルー、エクアドル、コスタリカの9カ国の200以上の都市でサービス展開をしており、ラテンアメリカではなんと700万人以上のユーザーがいます。

エリアの拡大だけでなく、スーパーアプリを目指して、サービス領域の拡大も積極的に行っています。

最も注力しているのが「Rappi Pay」で、2019年よりVisaとパートナーシップを組み、コロンビア、メキシコ、ペルー、ブラジルでQRコードで決済ができるようにしました。
また、最近ではデビットカードおよびクレジットカードの提供も始めており、Fintech領域にもかなり注力していることが伺えます。

そのほかにも、2020年より「Rappi Travel」を開始し、ブラジル、メキシコ、コロンビアで、航空会社とExpedia、Hotelbedsなどの旅行会社との提携により、国内外の航空券と宿泊オプションも提供しています。

エンターテインメントコンテンツとして2020年に「Rappi Games」もローンチされました。2020年時点で150以上のゲームを配信し、約27万人のユーザーと350万回のプレイ回数が記録されているとのことで、かなり規模が大きいことがわかります。

引用:LABS

また、音楽ストリーミングサービスとして「Rappi Music」や、YoutubeやInstagramのような形式でアーティストのライブコンサートやファンミーティングを開催する「Rappi Live Events」などのローンチもされています。

引用:LABS

このように、Rappiは中南米初のスーパーアプリを目指して、猛烈な勢いで様々なサービスを展開しており、今後どんなサービスがローンチされるのか非常に楽しみです!

現時点では中南米エリアのみの展開で日本進出はまだ予定されていませんが、中南米各国に旅行される際にはぜひ使ってみてください!

投稿者:大谷 奈々
オーストラリア滞在中に仲良くなったコロンビア人からレゲトンミュージックやサルサダンスを教わったことからスペイン語圏の文化に興味を持ち、スペイン語の学習を始める。
現在は、大手コンサルティングファームで人事コンサルタントとして働きながら、RouteXでは主にスペイン語圏のスタートアップエコシステムのリサーチを担当している。

RouteX Inc.では、引き続きスタートアップ・エコシステムにおける「情報の非対称性」を無くすため、スペインを始めとする世界中のスタートアップとの連携を進めてまいります。
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