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ヨーロッパ最大のスタートアップカンファレンスのひとつ
TechCrunch Disrupt Berlin 2018と並行して行われていたStartup Battlefield 2018の様子を現地からお伝えします!!
TechCrunch Disrupt Berlin 2018の様子はこちらから
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Image Credit: TechCrunch
Startup BattlefieldとはTechCrunchが2007年から行なっている、スタートアップのピッチコンペティションです。事前選考に通過したスタートアップがVCやTechCrunchの記者の前でピッチを行い、厳しい質問を受けながら優勝者を決定するイベントとなっています。
事前選考の通過率が3〜6%という事からも狭き門という事がよくわかりますが、さらにVC達の厳しい質問に耐え抜き優勝する事は非常に難しいと言えますね!
しかし、このStartup Battlefieldに優勝すると世界中のメディアに取材されスタートアップの名前が広がる事や、VCからの投資や提携先、クライアントが見つかる等の結果、
スタートアップが優勝後にスケールした例は数多くあります!
そのためStartup Battlefieldはスタートアップがスケールするために重要な登竜門の一つと考えられています。
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(Disrupt Berlin 2018でのStartup Battlefield登壇者のブース)
また、事前選考を通過したスタートアップはイベント会場で自社を説明するブースを置く事が出来るので、必ずしも優勝せずともスケールするためのチャンスを得る事が出来る事から世界中からStartup Battlefieldへアプライするスタートアップが数多くあります。
VCや大企業にとっても投資先や提携先のスタートアップの情報を掴む重要な機会と言え、Startup Battlefieldで登壇するスタートアップは常に注目されており、どれだけ早く情報に早くキャッチアップ出来るかも重要と言えます。
今回はDisrupt Berlin 2018で並行して行われたStartup Battlefieldを現地から、
次のイノベーションを起こすかもしれない登壇スタートアップ全てをご紹介します!!
コーディング知識ゼロでもAR開発が出来るプラットフォームを提供
wiARframe (Wilmington, USA)
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Image Credit: wiARframe
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Image Credit: wiARframe
wiARframeはコーディング技術を必要としないAR開発ツールを提供するスタートアップです。
ARはデザインが重要にも関わらず、デザイナーのようにデザインを専門としている人はコーディングの知識がなく適切なデザインをARに適用する事が出来ないという課題があり、このwiARframeはデザイナーにARのプロトタイプを作る最初のステップを提供するプロダクトと言えます。ARの開発ツールではFacebookが提供しているARstudio等が有名ですね。
そういった大手の競合がいる中で、ターゲットを明確にする事によって差別化を図っています。
こちらがwiARframeの使用動画になります。
確かに簡単にARを導入出来そうですね!
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VCからはUnityの様な競合とどのように住み分けをするのか?
スケールするための戦略は?
将来狙うマーケットとはという質問が投げられました。
AR関連のプラットフォームは大企業も多く参入していますが、他のAIやブロックチェーン関連に比べるとまだまだチャンスの多い分野にも感じますね!
強力なセキュリティによってデータを守る
Kaleps (Montreal , Canada)
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Image Credit : Kaleps
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Kalapsは独自の技術を利用して、ユーザーのデータを安全にデータベースに移行するサービスを提供しています。
このKaleps独自の暗号化技術はハーバードでの研究の成果として、利用可能になった事もアピールされていました。こういったサイバーセキュリティ系のスタートアップは多いですが、アイディアよりも技術が他のスタートアップよりも重要視されるため、ピッチの短い時間では伝えきれず少し不利にも感じました。ただ、実際にこれまでよりも早く安全にセキュリティを確保出来るのであれば、今回の登壇でKalepsを知ったところから投資や提携の話が一気にきそうですね!。
全ての人に適切な教育機会を
Apoll01 (San Francisco US)
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Image Credit: apoll01
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Apoll01は暗号化され、パーソナライズされたオンライン学習ツールを提供するスタートアップです。多くの教育機関が学生の不足から経営困難に陥っている事や貧困層の教育格差の問題をパーソナライズされたオンライン上の学習ツールによって解消しようという試みです。
特にまだ教育の機会が届いていない、アフリカやインドのマーケットをメインに攻めて行き、要望の高いテクノロジー系の人材を育成し、雇用を生み出そうとしています。
さらにパーソナライズされ分散化によりセキュリ化されたデータを利用する事により、適切な教育機会や講師の提案を行う事が出来るシステムを目指しています。
しかし、VCの人たちからはオンライン上の学習ツールは既にたくさんあるなかでどのように差別化をするのか? このサービスを利用するメリットは? マネタイズの方法は等が厳しく問われていました。
自動車の走行データを取得し、利用可能にするプラットフォーム
V2X Network (London UK)
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Image Credit: n2x Network
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V2X Networkはブロックチェーンにより分散化されたデータによるセキュリティを元にして、車の所有者からデータを取得し、それをオンライン上でアクセスできる様にするプラットフォームを提供することを目指すスタートアップです。
自動車関連のエンジニアが自動運転等の様々な開発の際に、実際の車の走行データが必要になりますが、それを一般の車の利用者からデータを取得しようという新しい試みです。
自動車のオーナーは走行データーを共有する事によって、報酬やポイント等のメリットがあり、エンジニアは開発に必要な走行データを容易に取得できるものとなっています。
さらに保険会社やスマートシティを目指す行政等もユーザーになるポテンシャルがあると説明されました。確かに、Uberや自動運転車等の車に関連したサービスが急拡大している現在では車の走行データを利用する事に対して大きな価値があるかもしれませんね!
IoT化された車椅子により、利用者の活動をこれまで以上に活発にする
Loro (Boston US)
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Image Credit: lolo
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LoroはIoT化された車椅子により、利用者の可能性を広げる事を目的に活動しているスタートアップです。車椅子を利用する際に、様々な不便が発生しますが、車椅子を様々なソフトウェアと繋げる事によってその不便を解消する事に成功しています。
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Image Credit : Loro
上の写真のように電動の車椅子にモニターとカメラ、アイトラッキングを装着する事によって、車椅子のユーザーが必要とする様々なサービスを提供する事が出来ます。
具体的な例としては、モニターから車椅子でアクセスできるをお店を検索出来たり、IoT化された部屋の電気等を消す事が出来る事や、アイトラッキングによって見ている方向に合わせて車椅子が方向転換を行ってくれる点が非常に優れています。このように明確な課題を既存の方法とは違う方法で解決出来るのもスタートアップの魅力と言えますね!最近は車椅子の改良がスタートアップ界隈で一つのトレンドにもなりつつあります。
ビッグデータとAIによる金融のリスクマネジメントを行う
Spin Analytics ( London UK)
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Image Credit: Spin Analytics
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Spin Analytics はビッグデータをAIによって分析する事によって、将来的に発生する可能性のある、リスクに対してマネジメントをするサービスを提供するスタートアップです。
例えば、銀行や保険会社に対してユーザーの動向やトレンドを分析したデータを提供する事を目的としています。この事によって、保険会社や銀行はより精度の高い分析によりリスクマネジメントを行う事が出来ます。銀行の貸し倒れや、保険会社の利益を最大化するためにも今後このようなビッグデータを何らかの方法で分析するスタートアップはどんどん出て来そうなので、こういったビジネスモデルは非常に注目ですね!
行政向けのデータベースを提供
Polyteia ( Berlin Germany)
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Image Credit: polyteia
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Polyteiaは行政のリーダーや意思決定機関に、政策等を決定するための分析対象となるデータを提供するスタートアップです。例えば、保育園不足の場合にいくつ増設すれば良いのか、予算はどれくらい必要なのかといった事を行政で決定する場合にこれまでは様々な資料を取り寄せて、計画を練る必要がありました。それを一括して、Polyteiaがデータベース化する事によって、市長や市議会が判断しやすい形で提供する事を可能にします。ただ、情報量が膨大になるためにまずは比較的小規模の市を対象に広げて行く事を戦略にしています。確かに政策決定に必要な情報を都度調査によって集めるよりも、データーベースとして一括管理する方が、これまで以上に決定が早く正確に出来る可能性が高いですね。テクノロジーの導入が遅い行政関連にPolyteiaaは改革を起こすかもしれません!
ブロックチェーンによってセキュリティ化されたIDの発行
Gravity.Earth ( Nairobi Kenya)
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Image Credit:grabity
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ケニアからはブロックチェーンによって暗号化されたデータによって身分を証明するIDを発行するサービスを提供するGravity.Earthが登壇しました。
ケニアやその他の発展途上地域では住民登録や、出生証明書がなく、就職や保険、ローンなど基本的な社会生活を送る事が出来ない人がいるという課題があります。
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Image Credit :Gravity.Earth
世界中で15億人の人が公式のIDを持っていないとされている一方で、スマートフォンのユーザーはそれを上回る勢いで増加しているとするデータもあり、今後はデータによるIDの証明の方法も必要ではないかという事をGravity.Earthは語っていました。この事によってこれまで以上に金融関係のマーケットが広がる事やNG0等の難民の特定に役立つとされています。このようなデータによるIDは少なからず将来利用される可能性が高そうですよね!
糖尿病患者の命を助けるモバイルアプリ
Spike ( Beirut Lebanon)
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Image Credit:Spike
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Spikeは糖尿病患者の状態をリアルタイムに分析する事により、インスリン注射や食事、運動のタイミングをリマインドする事で健康状態を維持する事が出来るサービスを提供しているスタートアップです。SpikeのCEO自身が糖尿病でもあり、自身に必要なサービスであり、同じ様に糖尿病に苦しむ人たちの助けになればとサービスを開発しているようです。
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Image Credit : Spike
また、糖尿病患者の人から収集したデータを元に、医者や介護者、薬を提供する業者も適切に行動を事前に準備出来る様に工夫されています。
Spikeが解決する課題は明確で、社会的に意義があるサービスですよね!
その証拠に既に数多くのスタートアップ関連のイベントで受賞実績があります。
AIによる画像解析により、農作業を最適化する
ImagoAi ( Gurgaon India)
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Image Credit: imagoai
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ImagoAIは農作業を効率化するために、農作物の写真の画像解析によって病気の判断や、適切な交配によって、より強力で収穫効率の良い農作物を作る事を目指すソフトウェアを開発するスタートアップです。農作物のビッグデータをAIで解析する事によって農作物の収穫量をあげる事ができれば、食糧不足の地域ではかなり大きな変革を起こす可能性がありますね。
VCの関心も高く、質問が次々と投げかけられていました。
データ取得のクラウドソーシング
Rlay ( Berlin Rlay)
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Image Credit:rlay
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Rlayはエンジニア等が開発の際にデータを必要とする場合に企業等にデータの取得を頼むのではなく、データをクラウドソースという形で提供する事によってこれまで以上に早く確実にデータを取得する事が出来るサービスの提供を目指すスタートアップです。
これまでは情報を集権化していたのでこの様なサービスは提供出来なかったか、ブロックチェーンによって分散化が可能になったので、データのクラウドソースという形でデータを提供出来る可能性に気づいたそうです。ブロックチェーンの活用によってスタートアップのビジネスプランもかなり多様になり、多くの可能性を感じさせますね!
ボイスSNS
Koo ! ( Stockholms Sweden)
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Koo!はこれまでのSNSの様に動画や画像ではなく、音声だけのSNSのサービスを提供するスタートアップです。調査によるとSNSを利用したくても顔を出したくないユーザーが一定層いる事に気づき声に特化したSNSを提供しています。実際、ボッドキャストのようなサービスにも利用者は多く、通勤中や作業中に聴く事が出来るSNSがあっても良いのではないかというところから開発が始まった様です。確かに、VTuberの様に顔を出さない利用方法も人気になりつつあるので、ボイスSNSの広がりの可能性もありますよね!
家族計画をサポートするサービスを提供
Legacy ( Geneva Switzerland)
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Image Credit:legacy
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Legacyは男性の精子を検査するキットを提供し、検査結果から子供を作るための生活習慣のアドバイスや健康な精子の冷凍保存をするサービスを提供する事を目指しています。
出生率の低下や家族計画をLegacyのサービスを利用する事によってこれまで以上に可能にする事が出来ると言います。Legacyの特徴としては、完全なプライバシーが保たれている事、検査結果が通常の病院の様に分かりにくい物ではなく、具体的なアドバイスで提供される点が挙げられます。
Legasyのピッチを最後に全てのスタートアップの登壇が終わりました!
厳しいVCやTechcrunchの記者からの質問をくぐり抜けたスタートアップのみなさんも安堵の様子です。
これからの自社の成長がかかっているので、どのスタートアップも優勝者発表を緊張の面持ちで待っています。
そして、まずは準優勝者の発表です!!!
準優勝は農作物のAIによる画像解析による効率的な生産を実現する
ImagoAIです。
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Image Credit : imagoAI
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ImagoAIの技術が広がれば、食料不足の地域を助ける事や画像解析の技術が様々な分野で応用出来そうでこれからの成長から目が離せませんね!!
そして、優勝者は
家族計画をサポートする検査キットを提供のLegacyです!!
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Image Credit: Legacy
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Legacyのサービスは一般的なスタートアップの様にデータを用いて急成長する様なビジネスモデルではないですが、選考理由として、これまでにないマーケットを開く可能性がある、
まさにDisruptという事です!!
LegacyのCEOのピッチは正直、他のスタートアップの人たちを圧倒する程、うまかったので自身のビジネスプランを説明するためにピッチがどれだけ重要かも分かります。
Startup Battlefield at Disrupt Berlin 2018の様にスタートアップのコンペティションに観客として参加するメリットとして、いち早く次のイノベーションを起こすスタートアップの情報をキャッチアップ出来る以外にも、スタートアップのピッチの方法やVCの質問内容など、自身がスタートアップを経営している場合には参考になる物がたくさんあります。
ぜひ、みなさんもご参加してみてください!!
Disrupt Berlin 2018の全体の様子はこちらからもご確認いただけます!
TechCrunch Disrupt Berlin 2018の様子はこちらから
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TechCrunch Disrupt 2018のキーノートスピーチはこちらからもご確認いただけます!!TechCrunch Disrupt 2018のキーノートスピーチは
Startup Battlefield at Disrupt Berlin 2018の様子はいかがだったでしょうか?
こういったスタートアップのカンファレンスに参加するとインターネットだけではキャッチアップしにくいスタートアップの動向やアーリーステージのスタートアップと出会う事が出来る事が伝わったのではないでしょうか?
RouteX Inc.ではこのような世界的なスタートアップのカンファレンスに常に情報のキャッチアップのために参加しています。お一人や企業の調査として単独で行くのは心配というご要望があれが、この様な世界中のスタートアップカンファレンスの現地アテンドも行いますので、お気軽にお問い合わせの方からご連絡ください!
みなさんのご要望に合わせて、世界中のスタートアップ系のカンファレンスから選定をしてご提案いたします !!
RouteX Inc.では、引き続きドイツのスタートアップとの連携を含めた現地調査を行っていきます!また、各国のスタートアップ環境についてもっと詳しく知りたい方もお気軽にお問い合わせください。海外のスタートアップとの連携やイノベーション拠点の調査依頼、海外アテンド依頼等も承ります。
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