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記事一覧 > 環境保全に関わる企業が集う 欧州最大規模のイベント ChangeNOW 2023 現地参加レポート

2023年5月25日から27日にかけての3日間 フランスのパリ中心部、エッフェル塔前の会場Grand Palais Ephémèreにて環境保全に関わる大企業やスタートアップ、有識者が集う欧州最大規模のイベントChangeNOW 2023が開催されました。今回、弊社RouteX Inc. はMEDIA PASSを取得し現地イベントに参加してきたのでフランスを中心とした環境保全に関わる最新スタートアップトレンドをお伝えします。

ChangeNOWとは?
ChangeNOWは、地球が抱える課題(気候変動、大気汚染、食糧生産、エネルギー消費等)に取り組む最も革新的な解決策や影響力を有する有識者や起業家を集め、産業や地理的な範囲を超えて解決策を拡大・普及させることに尽力しています。ChangeNOWは、起業家、ビジネスリーダー、政策立案者の架け橋となり、変化を加速させる事を目的に2017年から活動しています。

(ChangeNOW 2023会場のGrand Palais Ephémèreはエッフェル塔の目の前です。)

イベント会場の様子

イベント会場は各企業が取り組むカテゴリーごとに分かれています。特に印象的だったのは、ブースの一番大きな面積を閉めていたサーキュラーエコノミー(循環経済)に関する展示です。ここでは数多くの企業がリサイクルや再利用に関わる技術を展示し、サステナビリティの観点から資源の効率的な利用を強調していました。また、エネルギー、ファッション、バイオダイバーシティなど、幅広い分野を網羅している事から、このカンファレンスの規模の大きさと欧州での環境保全の取り組みへの関心の高さが伺えます

有識者によるパネルディスカッションやワークショップでは、持続可能な開発や環境保全に関わる課題や解決策等の最新トレンドやイノベーションが共有され、活発なディスカッションが交わされました。子供たちを対象とした環境教育活動も注目を集め、次世代への環境意識の育成を重視する姿勢が伝わってきます。

(イベント会場で販売される食事も全て環境に配慮されたプレートや食材が利用されています。)
(イベント会場に併設されたフードトラックコーナーの様子)
(フランスの大手新聞社Groupe Les Échos-Le Parisienもパートナーとして出展しています。)
(MEDIA PASS取得者が利用出来るコワーキングやインタビュースペースも用意されています。)
(子供が環境保全について学ぶ事が出来るブースも複数用意されています。)
家族で参加出来るアクティビティとして、アフリカの民族ダンス体験等も提供されています。
(フランス大手通信会社Orange社の環境保全に関わる取り組みを紹介するブース)
(ルノー社の環境保全に関わる取り組みを紹介するブース)

ドイツのデザイナーが設計した生物多様性における環境との共存と景観に配慮したアート「HABITATS」が会場中心部に展示されています。鳥や虫が住処として利用出来る様に設計されており、ワイン生産用のブドウ畑に設置する事で、ブドウ畑に様々な生物を呼び戻し、共存できる場所として発展させる事を目的に制作されています。実際にフランス北東部Taissyのブドウ畑に設置されています。

フランスを拠点に世界中にホテルを展開するAccorHotelsの環境に配慮したホテルブランドgreetの紹介ブース。greetは地元に根ざしたホテルで地域のお店の商品を販売したり、アンティークやリサイクルされた家具を利用する事で、各ホテルにユニークで暖かな雰囲気を与え、循環経済にフォーカスしたホテル作りを行なっています。

(greetブースではエネルギー節約のイメージを伝えるため、自電車を漕いだエネルギーでストロベリージュースを作るデモ等が行われています。)
(海中の環境保全や科学的調査のために深海探査を行うプロジェクトUnder the poleで実際に利用されている深海探査ポッドの展示)

フランスの注目スタートアップ紹介

Urban cuisine社は家庭菜園を効率的に行う事が出来るデジタルデバイスを開発販売しています。写真にあるボックスに野菜やハーブを植える事で、光や換気、水分量を適切に調整し、栽培と収穫を効率的に行う事が出来ます。また、スマートフォンとの連携により野菜の栽培管理をユーザーが簡単に行う事を可能にしています。実際に90%の節水に繋がり、通常よりも早く収穫できる等の環境に配慮された上で効率的に収穫が出来る理想的なプロダクトと言えます。toB向けの大規模な室内栽培施設はよく取り上げられますが、Urban cuisine社のプロダクトは家庭やレストランオーナー向けに販売されており、送料込みで約€1000とお手頃な価格なのも魅力的です。

HappyVore社は植物性の代替肉を開発、販売しています。既に大手スーパー等での取り扱いもあり、環境保全に関心の高いフランスの消費者から多く受け入れられている様です。実際にナゲットやソーセージを食べましたが、普段食べている食品と大きな違いを感じず、美味しかったです。動物性から植物性の代替肉に一部変更するだけでもCO2排出量の削減に繋がるという事で、美味しい食事をしながら環境保護にも繋がる、イノベーションの一端を垣間見ました。


GreenBig社が開発するペットボトルのリサイクルマシーンb:botはスーパー等に設置されています。b:botを用いる事でリサイクル可能かどうかを自動でスキャンし判断する事で、リサイクル可能なペットボトルのみを回収し裁断して保管します。また、ユーザーは提供したリサイクル可能なペットボトルの数に合わせて、提携店舗で利用可能なクーポンを受け取る事が可能です。b:botを利用する事で、配送専有面積を1/10、リサイクルまでのステップを減らし、回収前に自動でリサイクル可否を判断しているため、回収後のペットボトルのリサイクル率100%等の環境保全に貢献しています。実際に回収されたペットボトルは同じくペットボトルの再生産や繊維等に再加工されています。

(実際のMokkiの店舗の様子、こちらに持ち込む事で一括回収してくれるので利用者は特に考える事なく、寄付やリサイクルに貢献する事が出来ます。)

Mokki社はパリ市内に複数ある店舗やオフィスにてユーザーから服を回収し、再販、寄付、リサイクルを代行するサービスを提供しています。ユーザーがいらなくなった服を捨てる前に、一括してMokki社に持ち込む事で面倒な手間がなく環境保全活動に参加する事ができます。ユーザーが自分の服がリサイクルや寄附が出来るものなのか判断する事が難しく、結局捨ててしまう事による資源の無駄が発生してしまうという課題を解決しています。

日本のスタートアップも出展

Shibuya Startup Supportの支援を受けて日本のスタートアップ SOLIT社も出展していました。SOLIT社は、障害・セクシュアリティや体型に関係なく自分の好みに合わせてサイズ・デザイン・丈を服の部位ごとにカスタマイズした服が作れるサービスを提供しています。世界3大デザインアワード「iF DESIGN AWARD 2022」にて、最優秀賞であるGOLDを受賞し、障害のある方に向けた着脱しやすい服のデザイン等も行なっています。ファッションの聖地パリにおいてもSOLIT社の先進的な取り組みが受け入れられていくのが楽しみです。

AC Biode社が開発しているCO2を吸収し、ガラスを生産するプロダクトの展示

京都とヨーロッパにも拠点を持つ、化学、材料科学、電子工学をベースにしたクリーンテックに関わるサービスを研究開発しているAC Biode社も出展していました。欧州連合EU傘下のVCである、EIT InnoEnergy等から出資を受け、灰リサイクル、交流電池と付随する回路、廃プラスチック解重合触媒等の開発、製造販売を行なっています。現在も国内外で様々なプロジェクトが進行中という事で、フランスでのパートナーシップ締結に向けて出展されておりました。

パリ各地で開催されるサイドイベント

ChangeNOW開催期間中はパリの各地でサイドイベントとして、各企業が主催のイベントが開催されています。交流会からスタートアップのピッチイベントまで様々なイベントが並行して開催されており、この期間はパリに多くの環境問題に関わる課題解決に取り組みプレイヤーが世界中から集まるため、各所で活発なディスカッションが行われています。

筆者はStripe ParisオフィスにてTechstars Sustainability Parisが行った、Pitch your Climate VentureというClimateTechに関わるスタートアップのVC向けのピッチイベントに参加しました。欧州の環境保全に関する規制対応が企業に求められる一方で、まだそれを支援するサービスが少ない様で参入チャンスと捉えられている様です。企業向けに欧州の環境保全に関する規制対応をサポートするダッシュボードやデータ取得、DX系のスタートアップが多かった印象です。


いかがでしたでしょうか?
欧州最大規模の環境保全に関わるプレイヤーが集うChangeNOW 2023の盛り上がりがお伝え出来たのではと思います。フランスでは消費者が環境に配慮した製品を購入するよう促し、食品メーカーに対して環境により配慮した製品づくりを求めることを目的とした「エコ・スコア」が既に導入され、多くのスーパーの商品にて確認する事が出来ます。また、イベントの来場者も一般的なビジネスイベントとは違い家族連れも多く、環境保全について学ぶ事が出来るアクティビティも多いことから、欧州における環境保全への取り組みや関心が日本以上に進んでいる状況と言えます。フランスのスタートアップ・エコシステムでは、SaaSプロダクト以外にもDeepTechや環境保全に関わるエコシステムも急拡大しています。

RouteX Inc.では引き続きスタートアップ・エコシステムにおける「情報の非対称性」を無くすため、世界中のスタートアップとの連携を進めてまいります。
欧州のスタートアップとの事業連携、フランス進出、海外最新トレンドのリサーチ等、RouteX Inc.との協業やパートナーシップにご興味のある皆様はお気軽にお問い合わせください。

投稿者:大森 貴之
海外渡航歴103ヶ国、パリ在住。学生時代にシリコンバレー、イスラエル、ロシア等でのインターンや調査を経験。海外のスタートアップ・エコシステムのリサーチを専門とし、世界中のスタートアップのビジネスモデルやテクノロジーの分析を行なっている。ロシアや旧ソ連地域が得意。シリコンバレーで毎年開催されるFacebookの最も重要なカンファレンス「F8」にて2019年度は日本人で唯一「F8 Hackathon」に参加。シリコンバレー発の世界最大のエンジニアとスタートアップのコミュニティFacebook Developer CirclesとAngelHackの日本運営代表を歴任。
京都大学MBA (経営学修士) 修了