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近年、スマートシティをテーマとした都市開発や、それらに関連する技術が注目されており、各国や各企業で多様な定義のもと事業展開や技術開発が実施されております。今回はタイ王国(以後タイと表記)の大手不動産ディベロッパーMQDC(Magnolia Quality Development Corporation Limited)の研究所のひとつである、RISC(Research & Innovation for Sustainability Center)についてご紹介していきます。
前回はタイにおけるスタートアップカンファレンスについてご紹介しましたが、今回ご紹介するRISCは、近年もっとも注目されるテーマのひとつである、スマートシティにおける「Well-Being」、「持続可能な社会」の実現をミッションとして掲げており、タイのDeepTech、Research Ecosystemに関しても多くの知見を有している研究所になります。タイのスタートアップカンファレンスに関するレポートはこちらの記事でまとめています。
RISCはタイ バンコクの中心地、Central WorldやBig Cなど大規模複合施設が立ち並ぶエリアに位置しており、BTSシーロム駅を最寄りとしています。駅周辺の商業施設での買い物を目的とする多くの人が必ず目にする、シンボル的な高層ビル「Magnolias Ratchadamri Boulevard」の4階にオフィスがあります。 Magnolias Ratchadamri Boulevardはマンション(コンドミニアム)、ホテルとオフィスで構成されており、ホテルとマンションは非常にラグジュアリーなデザインとなっており、富裕層向けに提供されております。ホテル前を通る際には、滞在中のお客さんが大量購入したブランド商品の箱や袋がホテルマンによって運ばれていく光景をたびたび目にします。
RISCオフィスの様子
オフィス入り口は、植物が歓迎する異世界へといざなわれるような雰囲気が漂っています。窓辺は自然光による光合成、内側はライト(人工光)による光合成を実験する場にもなっており、最適な植物育成環境がそこにはありました。また、植物があるということは蚊も存在しており、その対処方法も興味深いものでした。蚊を弱体化させる化学成分で撃退させる方法ではなく、蚊が一時的に眠くなる睡眠薬に近い芳香剤を揮発させることで、人間を含めた動物の血を吸わなくなるとの事です。このように、蚊を殺傷せずに防虫する取り組みにもバイオダイバーシティの精神が体現されておりました。
写真のエリアはオフィスのカフェスペースになっており、訪問者含め誰でも利用することができ、コーヒーやお水が常備されております。デザインが非常に個性的で、360度みわたせるバーカウンターのようなつくりになっています。
上に見える植物はフェイクではなく、すべて本物の観葉植物です。なんとこれらがリモコンで昇降し、降ろすことで水やりを実施しているそうです。プランターの土から水が逆さに降ってこないように工夫もされているとのことでした。
RISCホールでは定期的に外部向けセミナーを開催しております。今回はMQDCスタンダードというMQDCが固有に設定する厳しい建築基準や、バイオダイバーシティに関するセミナーを学生向けに開催しておりましたので、少しだけ我々も参加させていただきました。日本の東大といわれる「チュラロゴン大学」の建築学や生物学の学生も参加しており、積極的に英語で発言している様子から学生の英語力の高さも実感することができました。
RISCはワンフロアまるごとを使用しております。 Materialライブラリー、Materialラボ、Materialレクチャーエリア、セミナーエリア、コワーキングエリア、アドレスフリーオフィス、会議室、カフェスペースで構成されており、すべてのエリアで個別に室内空調、空気の質、ライトの明度など、室内環境をすべてモニターで個別に調整できるようになっております。管理モニターはフロアの各エリアごとに複数設置されており、誰でも自由に操作することができます。
マテリアルライブラリー(材料図書館)エリアには、環境にやさしい材料サンプルが展示されており、一般の方、建築業界や関連業界のみなさんにご覧になっていただき、参考にしてもらうことで、環境にやさしい適切な材料活用を促進しているとのことでした。説明欄にはQRコードもあり、気になった材料をさらに詳しく調べることもできます。ライブラリには日本で開発された建築材料も多く、高級コンドミニアムや複合施設における日本の材料活用、コラボや共同研究に対するニーズも高く、日本の材料研究開発に対するリスペクトを感じることができました。
オフィスは、 MQDC Building Standardに沿って設計されており、「空気」「水」「音」「照明・景色」「清掃」「オフィス家具」「アクセシビリティ」「居住フィードバック」と、独自に8つの項目に非常に厳しい基準が設けられています。
RISCオフィスの設備やオフィス家具などはすべて上記の建築基準を満たしており、みんなにとっての快適な空間づくりに強いこだわりを感じます。
RISCの親会社、MQDCとDTGOについて
RISCはMQDCの研究所のひとつであり、先日のTechsauce会場として活用された大型複合施設のアイコンサイアムを建設した、タイ バンコクにある不動産開発大手で、Forestiaなど大型都市開発も国家プロジェクトとして手がけております。
MQDCの親会社、DTGOは世界で最も倫理的な企業として、2019年はじめてタイ企業として選定され、建設的な変化を生み出す戦略と取り組みを認められ、その後も今年2022年まで4年連続で「World‘s Most Ethical Companies(世界で最も倫理的な企業)」に選ばれております。日本ではキャノンや花王、米国ではAppleやスターバックスなどの有名企業が選定されています。
RISCのリサーチ・エコシステムとビジョン&ミッション
次にRISCの研究活動と、ビジョン&ミッションについて伺いました。以下、RISCのビジョン、ミッションとなります。(原文ママ)
<Vision>
To contribute to the happiness of all living beings and help maintain a sustainable and resilient environment through research and innovation.
<Mission>
To create a knowledge-sharing research and development center and cultivate world-class researchers with a focus on sustainable developments.
RISCは名前の通り、サスティナビリティを実現するためのイノベーション研究センターとなっており、建築におけるサスティナビリティのみならず、Well-Beingを実現させる基礎研究や、その他大学研究所との連携も積極的に実施しています。このようにリサーチ・エコシステムも積極的に構築しており、「R&D working space」「Research」「Knowledge Management」「Implementation」「Knowledge Sharing]でエコシステムを実現させます。
次に研究内容についてもご紹介いただきました。RISCでは大きく5つの研究ハブを有しております。
PLANTS & BIODIVERSITY
持続可能なエコシステムにおけるバイオダイバーシティの研究開発を担当。都市計画においても人間の幸せだけでなく、動物の幸せを実現する「PETOPIA」や昆虫なども多様に存在する環境づくりを実施しています。
AIR QUALITY
快適な住環境を実現するための、居住空間のみならず、都市全体の空気を改善する研究開発を担当。具体的には「Fahsai」という大型空気洗浄装置が街中に設定されており試験中です。
HAPPINESS SCIENCE
脳神経の研究や分析による幸せな暮らしのデザイン担当。タイの医療分野でトップであるマヒドン大学と共同研究をしており、レーザーによる目線把握や脳信号によるストレス分析などDeepTech分野です。
MATERIALS & RESOURCES
快適な住環境、そして持続可能な環境を実現する材料の研究開発を担当。具体的には、カーボンニュートラルを実現する材料や、環境に優しい建築材料の研究開発を実施しており、外部との連携も積極的に模索中です。
RESILIENCE
快適な住環境を実現するためのデータ分析によるレジリエンスデザインを担当しております。
RISCの活動について
いかがでしたでしょうか?
RISCのVice President、Dr.Sarigga氏いわく、RISCの各研究ハブはいずれも発展途中であり、今後もWell-Being 実現のため、積極的に各国の研究ラボや企業と連携を進めていきたいとのことでした。
みなさんもタイを訪れる際にはぜひHPからRISC訪問の予約をしていただければ、スタッフが丁寧にRISCオフィスや活動について英語でご紹介いただけます。タイではRISCをはじめとする多くの機関が、形式的な取り組みだけでなく、継続的に「持続可能な社会」や「カーボンニュートラル」実現のための取り組みを真剣に実施されております。それら分野を専門とする方、または推進していきたい方にとっては非常に良いパートナーとなるでしょう。
もしRISCにご興味がある方はお気軽に問い合わせよりご連絡ください。
いかがでしたでしょうか?
RouteX Inc.では引き続きスタートアップ・エコシステムにおける「情報の非対称性」を無くすため、世界中のスタートアップとの連携を進めてまいります。
RouteX Inc.との協業やパートナーシップにご興味のある皆様はお気軽にお問い合わせください。
投稿者:宮緒 ディフェイ
学生時代、ナノテクノロジーなどの基礎研究に従事していた際に、最先端技術が一部の研究者や専門家の間だけで議論され、世の中に出回ることが少ないことに課題を感じ、在学中にサイエンスコミュニケーターとして活動をはじめた経験をもつ。大学院時代に訪れたバンコクのラグジュアリーデパートーや、マンションに魅了されことをきっかけに、タイ王国における最先端技術にも興味をもちはじめる。
現在は、大手通信企業の研究開発部門で働きながら、RouteXでは主にASEAN諸国のスタートアップ・エコシステムのリサーチを担当している。