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(マニラ大聖堂、フィリピンはスペインの植民地時代の歴史があり、至るところにその面影が残されている。)

みなさんはフィリピンと聞いてどのようなイメージがありますか?
最近だと、ドゥテルテ大統領による麻薬撲滅運動の影響で麻薬関連の犯罪者が大量に殺害されているという報道がありますよね。実はフィリピンの首都マニラは東南アジアでも特に治安の悪い都市として有名で、刑務所は収容人数の上限を超えて収容されている関係で無法地帯という報道もあったりします。

APAC地域の中でも特殊な状況のフィリピン・マニラのスタートアップ環境はどのようになっているのでしょうか? 

実際に現地に調査に行ってきたので、現地の様子をお伝えします!!

極悪都市?  マニラの実態とは、超格差社会の現実 

上記でお話した通り、フィリピン・マニラの治安は良好とは言えず、殺人や強盗といった犯罪も多く、現地調査の際に首絞め強盗の被害にも実際に合ってしまいました。

ドゥテルテ大統領の麻薬撲滅政策により、数千人以上の麻薬関係者が射殺されたと言われており、その中には冤罪の人も多く含まれていたという報道があります。このような半独裁的な政策等から国際社会から人権問題について糾弾されていますが、なおも麻薬撲滅のための強硬な姿勢は崩していません。それだけ、国内に広がる麻薬犯罪の影響度が高いことを表しているのかもしれません。

実際にマニラ中心部を歩いてみると、本当に多くのストリートチルドレンと野犬を目の当たりにします。街も荒れ果てた印象を受け、そこら中にゴミが捨てられ、異臭を放っている状況です。マニラの街の治安を含めた状況はあまり良いとは言えません。

 その一方で近代的な高層ビル群もあり、貧困層と富裕層はハッキリと街で区切られているのがよく分かります。一見しただけでは同じ国とは思えないほどに風景が違います。

社会格差の広がる一方のフィリピンでも、そういった社会課題を解決しようと

実はフィリピンも国を挙げてスタートアップの成長を目指す方向に動いています。

フィリピンのマニラにはスタートアップが成長するためのエコシステムがまだ形成されていないように見えますが、スタートアップ・エコシステム形成に向けて動いている流れがあります!  

今回はフィリピンのスタートアップ・エコシステム形成の現状と今後についてピックアップさせていただきます!

1 フィリピン政府による2020年計画

Image Credit: philippines The Department of Information and Communications Technology

フィリピン政府のICT部門を担当する、DICTが2015年にIT系スタートアップの国内での拡大に向けた戦略的ロードマップを発表しました。

この戦略的ロードマップはフィリピン国内でのIT系スタートアップの発展により、国内で広がる問題の解決や社会格差、ファイナンス、ヘルスケア分野の向上を目指したものとなっています。

Image Credit: philippines The Department of Information and Communications Technology

この戦略的ロードマップでは2020年を目標にフィリピン国内のスタートアップの拡大を目指している物になります。そのための指標として、フィリピン政府は上記の様な目標を掲げています。2020年までに500社のスタートアップの累積企業価値評価が20億ドルを目指している様です。ちなみに、2015年時点のフィリピン国内のスタートアップの現状は上記の表の左の通りですが、よく見ると2020年、5年後までに全てを5倍にするという一見シンプルな計画にも見えます。さらに2015年時点でのスタートアップの数はほとんどがアーリーステージに位置しているために、かなりの数のスタートアップの急成長が必要な事が分かります。

そのため、フィリピン政府は他の国のスタートアップ・エコシステムの成功例を参考にしようとこのレポートの中に他都市でのスタートアップ・エコシステムが形成された成功例として、シリコンバレー、イスラエル、中国やその他のAPAC地域を取り上げていますが、残念ながら日本は含まれていません。やはり、それだけ日本のスタートアップシーンは世界的にはあまり認知されていない、現状があるのかもしれません。

Image Credit: philippines The Department of Information and Communications Technology

さらにフィリピン政府は自国の状況をSWOT分析(強みや弱み、機会や脅威を分析する手法)

を使って、フィリピン国内のスタートアップにとってチャンスはどこにあるのかを分析しています。

代表的な物を取り上げると

Strengths 強み

フィリピンの特徴として、将来的な労働人口としての若年層が多く、英語話者が多い特徴があります。特に英語話者の多さは顕著で、フィリピン政府が例としてあげているTOEFLでの世界的な調査結果ではアジア地域ではシンガポール、インドに次いで3番目に英語の理解力が高い国と認定されています。これは、シンガポールが英語が公用語であり、インドがイギリスの植民地時代があった影響で英語話者が多いことを考えるとかなりのハイレベルな状況と言えると思います。確かに、現地調査の際もみな流暢に英語を話している人が多い印象がありました。英語話者が多い強みとして、世界的な流れですが先進国からのアウトソーシングの仕事を引き受けやすく、ネット関連のビジネスでグローバルマーケットに進出出来る可能性を秘めていると言うことが出来ます。

Weaknesses 弱み

弱みとしては政治的なカントリーリスクの高さ、気候変動、社会格差等が取り上げられています。フィリピン政府が自ら、自国の政治的なカントリーリスクは高いと取り上げているのはおもしろいところですね! 特にこの政治的なリスクについて明記されている内容としては、裁判のための司法制度が複雑で遅い事が述べられています。これはビジネス上での紛争についても問題を引き起こし、ビジネスをストップさせてしまうリスクもあると述べられています。

また、社会格差も大きな問題でなんと国民の20%近くが貧困に苦しんでいるとのデータがあるようです。こういったフィリピン国内の問題は、現時点では弱みとして認知されるかもしれませんが、スタートアップが解決すべき課題として大きなチャンスとも言えます。例えば、司法制度を簡略化、もしくは見える化するようなサービスや貧困層向けにマイクロファイナンスで成功したバングラデッシュのグラミン銀行等の例があるので、フィリピンのスタートアップが成長する大きなきっかけのひとつとなる可能性もありますね!!

Opportunities 機会

国としての急激な経済成長とやはりAPAC地域に所属している事が取り上げられています!

発展途上国特有の急激な経済成長は長い期間で見た場合に投資対象として、有利だという事が述べられています。確かに先進国のシリコンバレーやイスラエル等のスタートアップ・エコシステムが形成されている地域はスタートアップの急激な成長は見込めても、地域として急激に成長する可能性は少ないと言えます。その分、フィリピンは国自体が急激な成長をしているため、他国からすると投資対象としてはおもしろいと言えるかもしれません。さらに、APAC(アジア地域)に所属している事も大きな機会と言えます。例として、シンガポールは国土も資源も少なく、独立わずか50年であれほど急成長した理由として、APAC地域と英語話者が多いこの2点をうまく利用したと言われています。APAC地域における首都のような機能を作る事により、自国の資源や国土不足を補い金融分野でとても成功し、現在はスタートアップのエコシステムも形成されています。その様にフィリピンは上記でご紹介したとおり、英語話者が多いという特徴もあり、シンガポールの成功モデルを導入出来るチャンスがあると言えます。

Threats 脅威

脅威としては、これまで説明した強みや機会の裏返しとして、フィリピンの成長が他国に依存している事から、他国の状況に振り回されるリスクが高い事が述べられています。また、弱みの部分でも取り上げた政治的なリスクも非常に高く、政権が変わるとビジネス環境が大きく変わってしまう可能性もあるという事が述べられています。さらに、フィリピンの社会格差や労働環境の悪さから優秀な人材が他国にチャンスを求めて、どんどん自国を離れていっている現状もあるようです。確かに英語が話せて、自国の労働環境が悪ければ、他国の労働環境の良い地域に移る事も考えそのためのハードルも低いと言えますよね。それだけ、グローバル化した中での人材の流動性という面では英語は本当に必要と言えますね。

(フィリピン大統領府)

このようにフィリピン政府もスタートアップの成長に向けて本格的に動いている事がよくわかりましたね!

やはり、スタートアップの成長は国内の様々な課題を解決したり、国の成長に直結する事からも国の方針として欠かせないという事でしょうか。

フィリピン政府が発表した2020年計画に実際に2020年にどれだけ達成する事が出来たのかを追加調査していきます!
ただ、今回の政府発表の戦略的ロードマップは、正直なところ計画というよりは海外のスタートアップのエコシステムと自国の現状を比較しただけのレポートの様にも見え、もっと具体的なフィリピンとしてどのようにしてスタートアップを成長させていくのかの内容が欲しかった印象もあります。もしかすると、フィリピン政府内ではもっとバリバリ計画を練っているのかもしれませんね! 2020年の達成度が楽しみです!!

2​  コンサルティングファーム PwCの狙い

 Image Credit : PwC

実は世界的に有名なコンサルティングファームのPwCもフィリピン政府同様にフィリピンのスタートアップ環境に対するレポートを2017年に発表しています。

とてもおもしろいのが、フィリピン政府が他機関の調査レポート等を組み合わせて分析しているのに対して、PwCは数字だけの分析ではなく、実際に多くのスタートアップのFounderにインタビューを行って調査している点です。スタートアップにインタビューをしているPwCの方がフィリピンの実際のスタートアップ環境を捉えている可能性が高いですよね!
資料も見やすいデザインで工夫もされており、さすがグローバルコンサルティングファームと感じます!!

 Image Credit : PwC

PwCの調査によると、スタートアップのFounderの人の多くが高学歴でIT分野を学んだ事のある人が多いというデータが出ています。これは世界のスタートアップ界の人材の特徴と似ており、最も優秀な人が起業をしてスタートアップとして活躍していくという流れが出来つつある事が分かります。日本はまだまだ、スタートアップという選択肢や「スタートアップ」という言葉自体が認知されていませんよね。

 Image Credit : PwC

特に驚きなのが、30%以上の人が現在のスタートアップの前に2,3社の創業を経験しているという点です。これはシリコンバレー等のスタートアップ・エコシステムの流れと同じで何社も起業していく、シリアルアントレプレナーが多く出てくる可能性を示唆しています。そのようなシリアルアントレプレナーは前職で成功した資金を元に起業を行い、さらにイノベーションを起こしたり、エンジェル投資家となって次世代の起業家達に投資をしていく等、スタートアップのエコシステムを形成していく上で非常に重要な人材と言えます。

Image Credit : PwC

さらに、スタートアップのFounderになぜ今のビジネスを始めたのか? 

直面した問題は何か?といったインタビューによるデータも集めてくれています。

ビジネスを始めた理由としては実行可能なアイディアやプロダクトがあった、マーケットにチャンスを見つけた等が多くなっており、直面した問題はやはり資金関係の様です。

スタートアップ・エコシステムが形成されている地域と比べるとVCやエンジェル投資家が圧倒的に少ないので資金調達についても苦戦がかなり予想されます。

Image Credit : PwC

成長のための戦略的な10のステップについても解説を行ってくれています。

本当に自社に競争優位性があるのか? マーケットフィットしているのか?
変化に合わせてピボットせよといったように、短い言葉で分かりやすく成長するためのキーを説明してくれています。

Image Credit : PwC

実際にPwCがインタビューしたFounderでビジネスモデルと創業のストーリーが分かりやすい方をご紹介します!

彼はFetch Valetの創業者で、元々は保険会社に勤めていたそうです。

そこで彼は会社から駐車スペースを与えられていたのですが、同僚には与えられていない人もおり、彼らは駐車スペースを探すためにいつも労力を取られているのを見ていたそうです。

フィリピンは渋滞も多く、治安も悪いことから駐車スペースを見つける事に時間や労力を取られてしまうという課題がありました。そのため、彼は彼らの無駄な労力を省くために、安全で確実な駐車場を提供するFetch Valetを創業しました。

 Image Credit : Fetch Valet

このサービスは専門のスタッフがクライアントのために駐車スペースを確保し、セキュリティも保証する物となっています。社会格差が広がるフィリピンでは、富裕層やアッパークラスのビジネスマン等にこの様な需要があると見抜いた彼はこのビジネスで順調に自社を成長させています。今は圧倒的なユニコーンとなったUberも元々は創業者のトラビス・カラニックがタクシーを捕まえる事が出来なかった事から思いついたアイディアと言われており、このように自身が気づいた課題を解決する形でスタートアップが成長していく可能性は至るところにあると言えますね!!

いかがだったでしょうか?
PwCの調査レポートは実際にスタートアップのFounderにインタビューをしている事からも、現在のフィリピンのスタートアップ環境のリアルを的確に捉えている可能性がありますよね!
では、なぜPwCの様なコンサルティングファームがスタートアップに関わろうとしているのでしょうか?

一般的にはスタートアップが急激に成長した場合にクライアントとしてついてもらうために初期の段階からスタートアップとの関係を構築していると言われています。

PwCはフィリピンのスタートアップ・エコシステムの概要をまとめた動画も用意してくれているので、そちらもご紹介させていただきます!!

Facebookも狙う、フィリピンマーケット

(Facebook Philippines Officeが入る、マニラ中心部にあるMenarco Tower)

フィリピンでも中国製のoppo等の格安スマホが普及した影響でインターネットユーザーは飛躍的に増えました。それに伴ってSNSユーザーも増え、フィリピンでのFacebookのユーザーも大きく増えました。最近、フィリピンでのFacebookユーザーの増加もあり、Facebook Philippines Officeもさらに拡大するために新オフィスへと移りました。

 Image Credit : newsbytes

その新オフィス発表会でFacebook Philippines代表のRubio氏もFacebookとして、スタートアップ支援に乗り出すことも発言しています。

実際、Facebookはスタートアップ支援のための「FbStart」や「Developer Circle」というプログラムも既にローンチしているのでスタートアップを支援するための体制は整っていると言えます。Facebookがフィリピンでスタートアップ支援に本気で乗り出すという事はPwCもそうですが、それだけフィリピンのスタートアップの成長に期待が集まっているという事ですね! 常にフィリピンのスタートアップ環境の動向をキャッチアップする必要性がありそうです!!

Developer Circleについてはこちら

さらに、APAC地域を中心に急拡大を続けるシェアリングカーサービスのGrabもフィリピンに進出しています。日本にはGrabもUberも無い事を考えるとAPACの中でどんどん日本はガラパゴス化してしまっている実感はありますね。やはり、APAC地域にある国々はAPAC間でIT系スタートアップはボーダレスに動ける事から、単純な自国の人口にとらわれないチャンスがあるとも言うことが出来ると言えます。また、シンガポール同様にフィリピンも英語話者が多いことから、グローバルマーケットに対しても行動出来るので、Facebook やPwCが認める様にフィリピンではスタートアップ・エコシステムがまだ形成されているとは言えませんが、これからの成長期待が非常に高いと言うことが出来るのではないでしょうか。

たとえば、「Geeks on a Beach」というスタートアップ向けの大きなイベントが開催されている事からも、そのようなスタートアップのエコシステムを形成する動きが大きくなってきている事が伺えます。

 Image Credit : Geeks on a Beach

フィリピン・スタートアップの将来

 いかがだったでしょうか?

極悪都市と言われてしまうようなフィリピン・マニラのスタートアップ環境はまだまだエコシステムが発展途中と言えますが、上記でご紹介したようないくつもの要因からこれからスタートアップの急成長の可能性が見えますよね!

実際のフィリピン・マニラは治安は確かに悪いですが、それよりも目立つのがとても大きな社会格差です。ストリートチルドレンが大量にいる反面、高層ビル群にはおしゃれなお店が多く連なり、完全に隔絶され同じ国とは思えないほどに雰囲気が違うのが強い印象です!

こういった社会課題を解決していくのもスタートアップの存在意義でもあり、魅力だと思うので、スタートアップの人たちにはぜひ頑張ってもらいたいですね。外国からの投資が集まれば、フィリピンの社会格差に対しても何か良い影響を与えてくれるかもしれません!!

RouteX Inc.では、引き続きフィリピンのスタートアップとの連携を含めた現地調査を行っていきます!また、各国のスタートアップ環境についてもっと詳しく知りたい方はお気軽にお問い合わせください。海外のスタートアップとの連携やイノベーション拠点の調査依頼、海外アテンド依頼等もお気軽にお問い合わせください!

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