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記事一覧 > 欧州の新たなサステナビリティ規制ー消費財業界を直撃するEUグリーンクレーム指令とは

はじめに

欧州はサステナビリティの推進において先導的な役割を果たしており、その一環としてEU規則が大きな特徴となっています。しかし、この規則は非常に幅広く、かつ頻繁に改定されるため、企業の中にはEU規則を十分に理解できておらず、自社ビジネスへの影響を把握しきれていないケースも少なくありません。

本レポートでは、2024年に制定された主要規則である「EUグリーンクレーム指令(EU Green Claims Directive)」と、この規則が企業に与える影響について紹介いたします。 

EU Green Claims Directiveとは

2024年に欧州委員会によって採用されたEUグリーンクレーム指令は、2023年に出されたEU法案であるグリーンクレーム指令案を元に制定されました。

この指令は、グリーンウォッシング(環境に優しい企業であるかのように見せかけるマーケティング活動)や、誤解を招く製品やサービスの販売を防ぐことを目的としています。消費者が十分な情報に基づいて意思決定を行えるよう支援するものです。

EUグリーンクレーム指令の主な特徴として、「明瞭性」と「検証可能性」が挙げられます。

まず、「明瞭性」については、企業は製品ラベルや、即時にアクセス可能なQRコードやリンクを通じて、どのように環境対策に取り組んでいるかを明確に示さなければなりません。
次に「検証可能性」については、企業は環境配慮に関する主張を裏付けるため、分かりやすい基準と科学的なエビデンスを使用する必要があります。例えば、製品ラベルに「この製品は50%のリサイクル素材で作られています」と記載する場合、その50%という数値をデータによって検証しなければなりません。

EUグリーンクレーム指令によって影響を受ける業界

この指令が特に影響を与える可能性が高い業界として、ファッション業界、化粧品業界、食品・飲料業界が挙げられます。

ファッション業界では、リサイクル素材やオーガニックコットンなど、環境に配慮した素材をアピールする企業が多く見られますが、これらの主張がどれほど信頼性があるのか、グリーンクレーム指令によって厳しく精査されることになります。
化粧品業界では、「天然由来」や「エコフレンドリー」といった表現がよく使われますが、これらの記載にも規制がかかるため、企業は具体的な根拠を示す必要があります。
同様に、食品・飲料業界においても、「サステナブルなパッケージ」や「環境に優しい」「エコ」といった曖昧な表現が使用されることがありますが、これらも指令の下で規制対象となります。

また、これらの業界全体に共通する課題として、サプライチェーンの透明性強化が求められます。企業は、原材料の調達から廃棄に至るまでのプロセスをしっかりと管理し、サプライチェーン全体でトレーサビリティを向上させる必要があります。

EUグリーンクレーム指令による企業および顧客への影響 

本規制に対応することで、データ収集や検証にかかる追加コストや作業工数が発生し、場合によっては各製品・サービスに対するマーケティング戦略の見直しが必要になることもあります。また、企業が製品やサービスを持続可能なものに変えるための追加コスト(素材の変更、製造プロセスの改善、検証コストなど)は、最終的に顧客に転嫁される可能性があります。特に、価格弾力性が高い消費者が多い業界では、これらのコストをどのように転嫁するかを慎重に検討する必要があります。

この規制は、消費者が購買決定を行う際に信頼性の高い情報を提供することを目的としていますが、企業が規制対応に追われることで、消費者に対してネガティブな影響が及ぶ可能性も考えられます。たとえば、グリーンクレーム指令の要件に対応することが難しい企業やブランドが市場から撤退し、その結果、消費者が購入できる製品やブランドの選択肢が減少し、自分に合った商品を見つけにくくなる可能性があります。また、環境に優しい素材やプロセスを採用することで、一部製品の供給が遅れたり、季節的な需要に応じて在庫切れが発生したりすることも懸念されます。

さらに、信頼性の高い、詳細な情報を提供することで、消費者が情報過多に陥り、購買意思決定が複雑化してしまう可能性もあります。

規制を取り巻く欧州のスタートアップ紹介

出典:OpenSC

WWFとBCG Digital Venturesの共同プロジェクトとして2019年に設立されたOpenSCはドイツの企業で、リアルタイムのデータを使用して製品の持続可能性を検証し、サプライチェーン全体で追跡するプラットフォームを提供しています。OpenSCはもともと魚などの食品を対象としていましたが、現在ではパーム油や乳製品など、環境や人権リスクがある商品にも対象を拡大しています。

出典:OpenSC

たとえば、このプラットフォームを利用することで、パーム油が合法的かつ森林破壊を伴わないプランテーションから供給されていることを確認したり、コーヒー農家に公正な支払いが行われ、適正な所得が確保されていることを検証したりすることが可能です。

実際に、スイス企業のNestlé(ネスレ)は、ニュージーランドから中東に至るミルクのサプライチェーンや、アメリカでのパーム油のサプライチェーンを追跡するためにOpenSCを活用しています。また、日本の海産物企業である丸は日魯のグループ会社であるAustral Fisheriesも、エビなどのシーフードを追跡し、持続可能に漁獲されたことを証明するためにこのプラットフォームを使用しています。

さいごに

今後もサステナビリティトレンドを始めとした欧州を取り巻くトレンドの動向をタイムリーに捉え、皆さまに情報発信をしてまいります。

RouteX Inc.では引き続きスタートアップ・エコシステムにおける「情報の非対称性」を無くすため、世界中のスタートアップとの連携を進めてまいります。

RouteX Inc.との協業やパートナーシップにご興味のある皆様はお気軽にお問い合わせください。

※本記事には、AIが生成した文章、画像等が含まれています。

投稿者:Sangmoon Kim

RSM清和監査法人およびデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社での経験を経て、RouteXに参画。財務面からのコンサルティングに一貫して取り組む一方、事業計画策定や財務モデリングにも強みを持つ。RouteXではトレンドリサーチや新規事業創出支援など、幅広い業務を担当。米国公認会計士(ワシントン州)。2024年よりベルリン在住。ESCP Business School MSc in Sustainability Entrepreneurship and Innovation在学
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