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記事一覧 > フランス発AIスタートアップ「Argil」がY Combinatorの夏季プログラムに選出

アメリカのシリコンバレーに位置する著名なアクセラレーターの「Y Combinator」は、同社の夏季プログラムに選出されたスタートアップのリストを公開しました。フランスからは2社(「Agril」「The Forecasting Company」)が採択されており、今回はそのうちの1社「Argil」に注目します。

「Argil」は、AIを活用した動画生成プラットフォームを開発しており、クリエイターエコノミーに革新をもたらす可能性を秘めています。今回は、この「Argil」の事業内容とディープフェイク技術の現状と今後について、Maddynessの記事を元に考察します。


AIスタートアップに注目が集まる中での選出

「Argil」は2023年に設立されたばかりの新興企業ですが、その革新的な技術が評価され、世界的に有名なアクセラレーターである「Y Combinator」の夏季プログラムに選ばれました。同社が開発しているのは、わずか2分間の動画から自分自身を「クローン化」し、多数の動画やアバターを生成できるプラットフォームです。

このプラットフォームの特徴は、ディープフェイク技術を駆使して、ユーザーが入力したテキストや音声スクリプトを基に、数クリックで字幕付きの動画を生成できる点です。これにより、広告業界やコンテンツクリエイターは、短時間で魅力的なコンテンツを作成し、視聴者層を拡大することが可能になります。

Argil Deepfake Generator: The Top D-ID Alternative for Content Creators
引用:Agril

「Argil」の共同創業者であるLaodis Menard氏とBrivael Le Pogam氏は、フランスの動画広告専門会社「Teads」(最近Outbrainに€1b(約1,622億円)で被買収)での経験を活かし、この革新的なプラットフォームを開発しました。彼らの豊富な経験と先進的な視点が、「Argil」の強みとなっています。


Y Combinatorプログラムがもたらす可能性と課題

Y Combinatorの夏季プログラムに選出されたことで、「Argil」は今後3ヶ月間、サンフランシスコにあるアクセラレーター施設で集中的な支援を受けることができます。「Y Combinator」は、AirbnbStripeDropboxなど、世界的に成功を収めたテック企業を多数輩出していることで知られており、「Argil」にとっても大きな飛躍の機会となる可能性があります。

しかし、このチャンスを掴むためには、7%の株式を「Y Combinator」に譲渡し、50万ドルのプレシード投資を受け入れる必要があります。この取引条件については、わずか3ヶ月の支援に対して高すぎるという批判もあります。

特に、多数のスタートアップが同時に支援を受ける「バッチ」形式のプログラムでは、個別の企業に対する支援の質に疑問が投げかけられることもあります。

Startup Accelerator Y Combinator releases 20 new startup ideas for Summer  2024 - Technext
引用:Technext「Startup Accelerator Y Combinator releases 20 new startup ideas for Summer 2024

それでも、Y Combinatorを経験した多くの企業が大きな成功を収めている事実を考えると、「Argil」にとってこの機会は非常に価値があると言えるでしょう。このプログラムへの採択率はわずか1-2%であり、採択された企業同士のネットワークや、「Y Combinator」パートナーのNicolas Dessaigne氏の指導を受けられることを鑑みれば、ここに参加する意義は大きいと考えられます。

北米のスタートアップが大部分(192社/234社)である中でプログラムに飛び込んだ「Argil」が、このプログラムをどのように活用し、自社の技術と事業をさらに発展させていくかが注目されます。


AIによる動画生成がもたらす可能性と課題

「Argil」の技術は、動画コンテンツの制作プロセスを大きく変革する可能性を秘めています。特に、以下のような分野での活用が期待されています。

  • ブランディング:ソーシャルメディアでの効果的な動画活用
  • 教育:リードマグネットとしての無料トレーニングビデオ提供
  • プロモーション:インフルエンサーマーケティングの自動化
  • エンターテインメント:YouTubeなどでの大量コンテンツ生成

一方で、この技術の普及に伴い、いくつかの課題も浮上してきます。例えば、ディープフェイク技術の悪用による個人のプライバシー侵害や、偽情報の拡散といったリスクが考えられます。また、AIによる大量の動画生成が、人間のクリエイターの仕事を奪う可能性も懸念されています。

日本でこのような技術を導入する場合、肖像権や個人情報保護に関する厳格な法規制との整合性を慎重に検討する必要があるでしょう。また、AIが生成したコンテンツの著作権やクレジットの問題、さらには日本でのAI関連の法整備なども今後重要なトピックになると予想されます。

実際、日本語のコンテンツでもディープフェイクを利用して注目を集め、会員制サイトへの登録を促す動画などが増えてきており、ユーザーのAIリテラシーが求められるようになってきています。

引用:YouTube
ディープフェイクを用いて作成したコンテンツを利用しているとされているアカウントの例。
主に男性向けのコンテンツを作成しており、YouTubeの登録者は18万人、Instagramのフォロワーは40万人を超える。

また技術力そのものについても課題が感じられる部分もあります。2023年に立ち上げられたことを考えれば今後技術力がさらに伸びていくことは容易に想像できるものの、現在人々に受け入れられているかどうかは疑問が残ります。

例えば「Y Combinator」による「Argil」の紹介ページには、「チャンネル登録者数1,500万人のYouTuber『Kwebblekop』は、「Argil」プラットフォームで月に1,000本のショート動画*を生成し、完全に自動化されたワークフローでチャンネルを成長させている」(筆者訳)と記載がありますが、そう上手くは言っていないように思われます。

ショート動画*:おそらくYouTube以外のプラットフォームの1分程度の縦型動画を含む

「Kwebblekop」のYouTubeチャンネルのショート動画は直近ではほぼ投稿されておらず、数本のAIを利用したと考えられる投稿には、「ChatGPT is wearing this guys skin(ChatGPTはこの男の皮を着ている)」や「bro sold his soul(彼は魂を売った)」などの否定的なコメントが散見され、直近の再生回数は数万回程度で、かつての1,000万人超えYouTuberとしての輝きは失われています。

こうした現状を踏まえて、「Argil」の今後の展開と、AIによる動画生成技術が社会にもたらす影響や活用法について、引き続き注目していく必要があります。

参考記事:Y Combinator : quelles sont les startups françaises retenues pour la promotion estivale de l’accélérateur américain ?

※本記事には、AIが生成した文章、画像等が含まれています。


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投稿者:近藤 碧

京都大学経済学部経済経営学科在学(-2025.3)。ゼミではスタートアップの経営戦略に関するリサーチ・研究に取り組んでいる。2023年9月より、京都大学大学間学生交流協定に基づく交換留学生としてKoç Universityに派遣され、半年間トルコのイスタンブールに滞在した。2022年よりRouteXでインターンシップを開始し、業界リサーチから海外スタートアップの日本進出支援まで幅広い案件を担当。趣味は愛車のバイク(S1000RR ‘21)に乗ることであり、他大学のバイク部にも加入している。


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