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記事一覧 > スタンフォード大学 D.SCHOOLに潜入!

1. デザインスクールとスタートアップの関係

シリコンバレーに置けるイノベーションエコシステムの中心、スタンフォード大学。

世界トップのイノベーション・センターであるハッソ・プラットナー・デザイン研究所、通称d.schoolを訪問しました。

デザイン思考という概念が育てられ、シリコンバレーのスタートアップにも多大な貢献をしているこの施設。

d.schoolのWebページには、

「We believe everyone has the capacity to be creative. The Stanford d.school is a place where people use design to develop their own creative potential.」

「私達は全ての人が創造的になれると信じています。スタンフォード d.schoolは人々がそれぞれの創造的なポテンシャルを、デザインを使って発揮出来る場所です。」 

と書かれています。

デザインは全ての人に開かれている、という理念を感じますね。

またその下には、

「Are you looking for experience working at a STARTUP?」

「あなたはスタートアップで働く経験がしたいですか?」

という問いかけが。

『Launchpad』というイノベーターやアントロプレナーと共同で実際に起業をするプログラムがあり、スタートアップとかなり密接に繋がっているようです。

このプログラムでは、今まで100を超える会社が立ち上がり、その半分以上がいまだに存続しているとのことです。

シリコンバレーはスタートアップが多産多死し、その母数の多さによってエコシステムが形成えされているとも言われていますが、半分以上が現在も存続している事を考えるとスタンフォード大学 d.schoolの圧倒的な実績を感じずにはいられません…!

スタジオの中には、いたるところにポストイットのメモ書きやブレインストーミングの跡が。

とにかくどこででもアイデアを書き留められる環境になっています。

2. スタンフォードが掲げる「デザイン思考」とは?

d.schoolで学ぶことができるのは、狭い意味でのプロダクトデザインではなく、

『デザイン思考』。

デザイン思考には大きく5つの指針があります。

1共感

2問題定義

3アイデア創造

4プロトタイプ

5テスト&フィードバック

1番に「共感」を掲げている通り、デザイン思考では

「人のニーズや要求に自分の心で寄り添う」ことが重要視されています。

スクール内を色鮮やかに彩っている蛍光色のポストイットには、落書きのようなラフなものがたくさんありました。

ただ便利で、単に洗練されているだけでなく、遊び心を持った視点で見た世界の中に、「共感」を呼ぶアイデアがあるのではないかなと感じました。

また、デザイン思考では「実践すること」も大事にしています。

スクール内にあるオープンスペースにはこんな垂れ幕が。

『間違いなんてない。勝ちも負けもない。あるのはつくること、それだけだ。』

スタンフォード大学工学部教授で、dスクールのアカデミックディレクターであるバーナード・ロスは、書籍『THE ACHEVEMENT HABIT』(『スタンフォード大学dスクール 人生をデザインする目標達成の習慣』)では、以下のように語られています。

問題の解決策を探っていると、最初に浮かんだまともなアイデアを選びがちになる。使えそうなアイデアが浮かぶと、そこで真剣に考えることをやめてしまう。

(中略)

他の解決策が浮かんだときも、最初に浮かんだ解決策と同じように歓迎し、また探し続ける、という姿勢が好ましい。

​たくさんのアイデアを試し続けていることが伺えます。アイデア自体だけでなく、テストしフィードバックする「デザインのプロセス」についても考えられているのが「デザイン思考」なんですね。

そして今回、京都大学デザインスクールで講師をなさっている、白石晃一さんにコメントをいただくことができました!

私も2015年の夏にstanfordの大学院に在籍し、d.schoolにも参加していた友人を訪ね内部に潜入したことがあります。

その時、アメリカの他の大学とも違う、マーケットを強く意識する姿勢とか、東海岸に対する結構強烈なライバル目線などにストリートワイズな雰囲気を感じ、ちょっとしたかっこよさを感じました。

さて、デザイン思考についてですが、

これはトップクラスのデザイナー達の思考方法をアンデザイナーにもわかりやすく伝えるために、重要なエッセンスを抽出し理解しやすいようにまとめた思考法です。そして時が経つにつれて、抽象的なエッセンスを実践で活用できるように具体的なメソッドを伴い伝播していったパッケージだと捉えています。

デザイン思考は、多くのメソッドを含んだパッケージとして世界中に知られたことによって、他分野での共同プロジェクトのスタート時点において重要な部分を占める「共通言語の発見」という部分を手助けしていると思います。

しかし、デザイン思考も実学的な分野の持つ帰納法的推論の積み重ねですので、具体的な問題を取り扱う場合においては当てはまらないことも多く、そのような場合、状況に合わせて思考方法全体をリデザインすることが必要になります。

特にメソッドに固執してしまうと、身動きが取れず創造的な活動を阻害する場面も生まれます。

私は、思考方法も完璧なものとはとらえず、批判的な目線を忘れずに、ことあるごとに根源的な問いを自問自答したり、チームで共有したりすることだとが重要だと考えています。

デザイン思考の中でもキーワードとして扱われている、反復(イテレーション)は、批判的思考を持つことにこそその回転軸があるのですから。

(白石)

白石さん、コメントありがとうございます!

スタンフォードで作り上げられ、アップデートされてきた「デザイン思考」。

今までの固定観念にとらわれないその思考が、シリコンバレーでの数々のイノベーションと繋がっているようです。

これからもシリコンバレーに限らず、デザインとイノベーションの関係については様々な形で紹介していきたいと思います!!