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記事一覧 > 海事・オフショア産業の脱炭素化に挑む仏スタートアップ

引用:Unsplash

スタートアップの成長とイノベーションは、現代のビジネスシーンやグローバルな課題の解決において、重要な役割を果たしています。

特に、環境問題への対応としての脱炭素化は、地球の未来に直結する課題です。多くの先進国では、2050年までに脱炭素化を達成することが目標とされています。

今回は、フランスに拠点を置く「D-ICE Engineering」が€6m(約9.7億円)の資金調達を行ったことと、海事およびオフショア産業の脱炭素化に向けた取り組みに注目します。

特に「D-ICE Engineering」の取り組み内容、その意義、そして日本における類似の取り組みの可能性について、Silicon Canalsの記事を元に考察します。


革新を追求する「D-ICE Engineering」

「D-ICE Engineering」は、海事およびオフショア産業に特化した技術ソリューションを提供するスタートアップで、2015年に海洋に情熱を注ぐ科学者らによって設立されました。

設立以来、彼らは温室効果ガスの排出削減、海上での安全性の向上、クリーンエネルギー生産の推進など、海洋の課題に取り組む革新的な研究およびエンジニアリングを行い、DeepTechとして持続可能な未来のための技術開発を推進してきました。フランスを拠点とする彼らの取り組みは、世界中から注目を集めています。

そして「D-ICE Engineering」のプロダクトの中でも注目を集めているのが、ナビゲーションシステム「OCEANiCS」です。

「OCEANiCS」は、船舶の安全性を向上させるために設計された高度なナビゲーションシステムで、予測分析技術や人工知能を駆使し、操縦士に最適なルートと速度を提案することでエネルギー消費量を削減します。

引用:The Arch

今回の資金調達の詳細と脱炭素化への意義

「D-ICE Engineering」は、8月初旬に€6m(約9.7億円)の資金調達を成功させました。この資金は、主に「D-ICE Engineering」の脱炭素化プロジェクトの推進に使用される予定です。

資金調達の成功は、彼らのビジョンと取り組みが市場から高く評価されている証であり、このAラウンドは海洋生物多様性の再生に役立つイノベーションを目標とするSWEN CPの「Blue Ocean fund」がリードしました。

調達した資金は、ナビゲーションシステム「OCEANiCS」を軸に、世界中の船主や海運業者をサポートし、彼らの二酸化炭素排出量の削減を支援する活動を拡大します。

また、IMO(International Maritime Organization)の調査によれば、海運産業に限定しても世界の炭素排出量の2-3%ほどを占めています。

参考:IMO “Fourth Greenhouse Gas Study 2020

数字だけ見ると小さく感じるかもしれませんが、これらの産業が温室効果ガスの削減に寄与することは、地球温暖化対策において非常に重要です。「D-ICE Engineering」の取り組みは、業界全体の環境負荷を軽減することに貢献します。


日本における脱炭素化の可能性

日本の海事およびオフショア産業も、当然ながら環境負荷の軽減が求められています。そして日本にも、大企業からスタートアップまで、海運を中心に二酸化炭素排出量の削減に貢献する企業が存在しています。

例えば、「e5 Lab」は船のEV化を目指しており、気象情報で馴染みが深い「Weathernews」も、海運におけるコスト削減サービスを提供しています。

引用:e5 Lab

現在は国内向けにサービスを展開している企業が多い印象ですが、「D-ICE Engineering」が提供するような事業は国境を超えて展開することが可能であるため、今後グローバルに活躍するスタートアップの誕生が大いに期待される分野でもあります。

実際に、「D-ICE Engineering」は、投資家から事業の海外展開を期待されており、今回の資金調達により、他国市場への参入も視野に入れています。

一方海運業の市場規模が大きいながらも、日本における脱炭素化の取り組みはまだまだ進んでいない現状があります。脱炭素化に向けた取り組みには多くの課題が伴いますが、技術革新とグローバルな協力体制により、これらの課題を克服することは可能だと言えるでしょう。持続可能な未来を実現するためには、スタートアップ・エコシステム全体の協力が不可欠です。

参考記事:France-based D-ICE Engineering secures €6M to decarbonise the maritime and offshore industries


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投稿者:近藤 碧

京都大学経済学部経済経営学科在学(-2025.3)。ゼミではスタートアップの経営戦略に関するリサーチ・研究に取り組んでいる。2023年9月より、京都大学大学間学生交流協定に基づく交換留学生としてKoç Universityに派遣され、半年間トルコのイスタンブールに滞在した。2022年よりRouteXでインターンシップを開始し、業界リサーチから海外スタートアップの日本進出支援まで幅広い案件を担当。趣味は愛車のバイク(S1000RR ‘21)に乗ることであり、他大学のバイク部にも加入している。


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