2021年9月後半から10月中旬の中南米スタートアップの資金調達最新情報のうち、特に注目すべき6社を一挙にご紹介します。
スタートアップの資金調達額が大型化しているラテンアメリカですが、今月もその傾向は継続しており、今後の成長がますます楽しみです!
また、今回取り上げた資金調達のうち、4社にはソフトバンクグループが投資していることからも、同社のラテンアメリカ地域への力の入れようが伺えます!
先月のラテンアメリカにおける資金調達情報はこちらからご覧いただけます。
Kavak(メキシコ):7億ドル
メキシコシティを拠点として、ラテンアメリカで中古車のマーケットプレイスを運営するKavak(カバック)は、シリーズEラウンドで7億ドルという巨額の資金を調達し、評価額をこれまでの倍以上の87億ドルに引き上げました。
今回のラウンドは、General Catalystがリードし、Tiger Global、Ribbit Capital、SoftBankなどが参加しました。
同社は、2021年4月にシリーズDで4億8,500万ドルを40億ドルの評価額で調達してから、わずか5ヵ月しか経っていないにも関わらず、これだけの大型調達を果たしたことでより注目を集めています。
なお、今回の調達により、ブラジルのNubankに続き、ラテンアメリカ全体で2番目に評価額の高いスタートアップとなりました。
Kavakは、中古車市場に透明性、安全性、融資へのアクセスをもたらすことを目的としたオンラインマーケットプレイスで、不正行為を緩和する「信頼性の高い」取引を約束し、人工知能やデータ技術を活用して、機械的・安全的な観点から中古車の水準を高めることを目指しています。
また、約1年半前に立ち上げたフィンテック部門「Kavak Capital」を通じて、独自のファイナンスを提供しています。
同社は、過去1年間で300人から5,000人以上の従業員へと飛躍的に成長し、現在ではメキシコ、ブラジル、アルゼンチンにまたがる40のハブを運営しています。
今後、ラテンアメリカでの事業拡大を継続するとともに、他のグローバル市場への進出も視野に入れています。
Merama(メキシコ・ブラジル):2億2500万ドル
ラテンアメリカのEコマース企業と提携するスタートアップ企業であるMerama(メラマ)は、Advent InternationalとSoftbankが共同で実施した2億2500万ドルのシリーズBラウンドの資金調達を実施しました。
今回のラウンドでは、既存の投資家であるMonashees、Valor Capital、Baldton Capital、MAYA Capitalに加え、新たにGlobo Venturesが参加しました。
なお、この資金調達は、これまでのラテンアメリカのシリーズBの中で最高額の調達となっており、同社の評価額は8億5000万ドルに達しているとのことです。
メキシコシティとサンパウロに本社を置く同社は、昨年12月に事業を開始し、Mercado Libre、Amazon、Magazine Luiza、Via Varejoなどの小売業やeコマースの大手企業の最大のパートナーとなることを目指しています。
すでにラテンアメリカにおいて、幅広い消費財を扱う20以上の企業を買収しています。
シリーズA以降、同社は規模を2倍に拡大し、2021年までに2億5,000万ドルの収益を達成する勢いであると報告しています。
今回新たに投入された資金は、ブランドポートフォリオの拡大、既存ブランドへの運転資金の提供、需要計画の自動化や複数の国際的な供給元からの供給管理などの機能を備えたプラットフォームの開発に使用され、新興ブランドを加速させる予定です。
GetCourse(ロシア・ブラジル):5000万ドル
オンライン企業研修プラットフォームを提供するGetCourse(ゲット コース)は、ブラジルへの進出のために5,000万ドルの資金調達を行いました。
このラウンドは、 Goldman Sachsがリードし、Winter Capital PartnersとBaring Vostok Capital Partnersも参加しました。
ロシアのスコルコボ発のGetCourseは、セミナー、コース、対面式のオンラインコースを提供する営業・研修プラットフォームで、現在、12,000のオンラインスクール、インストラクター、トレーナー、ブロガーなど、20,000人以上の教育者を抱えています。
同社はロシアを中心に、東欧でオンライン学習に革命を起こし、今回の資金調達の4分の1を海外展開に充て、まずはブラジル市場への参入を目指します。
オンライン学習の需要増加に伴い、2020年の年間売上高を2倍以上の2,030万ドルに拡大しました。
今後は、スペインやラテンアメリカでのグローバル展開を続けながら、2021年には評価額が10億ドルに達すると予想されています。
Buk(チリ):5000万ドル
チリに拠点を置き、HRマネジメントプラットフォームを提供するBuk(ブク)が、Greenoaksを中心に5,000万ドルのシリーズAを調達しました。このラウンドには、Softbankのほか、Rappi、Kavak、Konfio、GBM、Ualá、Brexなどのユニコーン企業の創業者グループも参加しています。
今回のラウンドは、ラテンアメリカのスタートアップがこれまでに調達したシリーズAの中でも最大級のもので、同社の評価額は4億1,700万ドルに達し、Cornershop、NotCoに次いでチリで3番目に評価の高いスタートアップとなりました。
<<NotCoの過去の資金調達ニュースはこちらからご覧いただけます。>>
Bukは、クラウドベースのプラットフォームを構築しており、企業は給与の支払いからプロフェッショナルな能力開発まで、人材を「エンド・ツー・エンド」で管理できるとしています。「より幸せな職場を作る」というミッションのもと、企業風土調査、業績評価、採用モジュール、勤怠管理などのツールも提供しています。
現在は、ラテンアメリカに4,000社以上の顧客を持ち、40万人以上の従業員の給与を管理しています。
過去1年間、同社は顧客の支持を得て、9月の収益を昨年比で151%増加させました。
なお、今回の資金調達により、メキシコでの成長を加速させ、コロンビアとペルーでのプレゼンスを強化していく予定です。
Trybe(ブラジル):2620万ドル
オンラインのテクノロジースクールを運営するTrybe(トライブ)は、Base PartnersとUntitledがリードするシリーズBの資金調達ラウンドで2,620万ドルを調達しました。
その他の投資家には、IP Inc.、Global Founders Capital、Endeavor Scale Up Ventures、Verde Capital、Luxor Capital Group、GGVのマネージングパートナーであるHans Tungなどがいます。
Trybeは、コンピュータ、テクノロジー、ウェブサイト管理など、さまざまなオンラインコースを提供しており、ユーザーは、12ヶ月プランへの申し込みや、特定のコースを選んで申し込むことも可能です。
現在約2,200人の学生が学んでおり、年内に3,000人に達することを目指しています。
生徒は、データの知識やアルゴリズム、JavaScript、HTML、CSS、Pythonなどのソフトウェアに関する高いスキルを身につけています。
同社は今回の資金調達を利用して、トレーニングプラットフォーム、特にWeb Development、Data、Cybersecurityの各コースをさらに発展させる予定です。
Ontop(コロンビア):2000万ドル
リモート採用プラットフォームを提供するOntop(オントップ)は、Tiger GlobalとPoint72がリードする2000万ドルのシリーズA資金調達ラウンドを実施しました。このラウンドには、ソフトバンクのSB Opportunity Fundも参加しています。
Ontopは、企業の国際的な採用・決済プロセスの効率化を支援しており、自動化されたプラットフォームを通じて、契約、文書、税金、規制遵守、支払いなどを管理しています。
最近では、Y CombinatorのWinter 21コホートに参加し、多くの企業がリモートワークに移行する中、「未来の仕事」のソリューションとして急速に認知を広げています。
現在、中南米を中心に67カ国以上で利用されており、前月比で40%の顧客数と収益の増加を記録しています。
Ontopでは、自社のプラットフォームを利用して採用を進め、現在では15カ国で200人が働いています。今後は、新規採用によるチームの拡大と、グローバルな決済ネットワークの強化を計画しており、最終的に、クロスボーダー契約を支援するためのフィンテック製品を発売する予定です。
投稿者:大谷 奈々
オーストラリア滞在中に仲良くなったコロンビア人からレゲトンミュージックやサルサダンスを教わったことからスペイン語圏の文化に興味を持ち、スペイン語の学習を始める。
現在は、大手コンサルティングファームで人事コンサルタントとして働きながら、RouteXでは主にスペイン語圏のスタートアップエコシステムのリサーチを担当している。
RouteX Inc.では、南米諸国をはじめ、世界のスタートアップ・エコシステムにおける「情報の非対称性」を無くすため、世界中のスタートアップとの連携を進めてまいります。
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