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記事一覧 > 中南米スタートアップの資金調達最新情報(2021年9月)

2021年9月の中南米スタートアップの資金調達最新情報のうち、特に注目すべき5社を一挙にご紹介します。
8月と比べて全体的な資金調達規模は縮小気味ですが、今月も多くの企業が資金調達を実施し、特にメキシコのスタートアップでの資金調達が多くありました。

また500 Startups(500 Global)とSoftbankグループが、相次いでラテンアメリカに新たなファンド設立を発表し、南米スタートアップ業界の勢いは留まるところを知りません!

先月のラテンアメリカにおける資金調達情報はこちらからご覧いただけます。

Addi(コロンビア):7500万ドル

引用:Addi(アディ)

コロンビアのFintech企業であるAddi(アディ)は、Greycroftがリードする7500万ドルのシリーズBの資金調達を実施しました。
今回のラウンドでは、GGV CapitalCitius CapitalIntersection Growth Partnersが、新たな投資家として加わりました。

同社は、今年5月下旬に最初のシリーズBを調達しており、今回の調達により、総調達額は1億4,000万ドルとなっています。

Addiは、BNPL(Buy Now, Pay Later:今買って後で払う)というECの支払いスキームで、南米における決済問題の解決を目指しています。

南米の人々のクレジットカード所有率は25%程度と言われていますが、Addiを利用することで、ユーザーは無料で購入して、購入金額に応じて、3カ月または最長24カ月の分割払いが可能になります。

同社の共同設立者兼CEOのSantiago Saurez氏によると、同社のプラットフォームは15万人以上の顧客を獲得しており、毎月30~40%の成長を遂げているとのことです。

今回の資金調達をもとに、製品の改良を続けると同時に、2022年初頭にメキシコでのサービス開始を目指すなど、展開地域の拡大を予定しています。

GAIA(メキシコ):5000万ドル


引用:GAIA(ガイア)

メキシコで、家具やインテリア商品を販売するECサイトを運営するGAIA(ガイア)は、新しいデジタルマーケットプレイスのために、SoftBank Latin America Fundから5,000万ドルの資金を調達しました。

GAIAのCEOを務めるPhilippe Cahuzac氏によると、同社のパンデミックに対する回復力の高さと、ブラジルのユニコーン企業であるMadeiraMadeiraなど同業種の成長率の高さから、SoftBank Latin America Fundは同社に目を付け、資金調達を支援したとのことです。

同社は、従来の店舗でのショッピングと、オンライン販売を組み合わせたオムニチャネルのビジネスモデルをメキシコで展開するとともに、新しい家庭用品のマーケットプレイスの立ち上げを目指しています。

コロナウイルス禍のロックダウンにより、実店舗を数か月間休業する必要がありましたが、家の模様替えやリモートワークに向けた環境改善などの”巣ごもり需要”の高まりにより、オンラインでの売り上げが急激に成長しています。

B2Bビジネスも好調で、不動産開発業者と共同でデザインした家具付き住宅やアパートのレンタルも行っています。

現在、メキシコでの家庭用製品のオンライン販売比率は10%ですが、米国や中国ではそれぞれ25%、35%に達しています。メキシコでも大都市から郊外への移住傾向が高まるなどライフスタイルの変化が見られており、同社も今後さらに成長することが期待されています。

Kocomo(メキシコ):5600万ドル

引用:Kocomo(ココモ)

メキシコの不動産Tech企業であるKocomo(ココモ)は、デット・ファイナンスで5000万ドル、エクイティ・ファイナンスで600万ドルの計5600万ドルを調達しました。
エクイティ・ファイナンスはALLVPVine Venturesが共同で行い、Picus CapitalとFontes fundのメンバー(QEDFJ LabsClocktower Technology VenturesJAWS)が参加しました。また、Architect Capitalがデットファイナンスによる資金調達を行いました。
なお、今回の資金調達には、LoftのMate Pencz氏とFlorian Hagenbuch氏、CornershopのOskar Hjertonsson氏、KavakのCarlos Garcia氏、CreditasのSergio Furio氏など、4つのラテンアメリカのユニコーン企業の創業者も資金を提供していることから、スタートアップ業界における同社への注目の高さが伺えます。

Kocomoは、「世界中のより多くの人々に、夢のような別荘を手に入れてもらう」ことをミッションに掲げ、高級別荘の国境を越えた共同所有を可能にすることを目指しています。

住宅の取得や所有に伴う法的な手続きや管理が、同社のサービス上ですべて実施可能で、通常必要とされる煩わしさや手間をかけずに、全費用を分担できることが大きな特徴です。

また、光熱費の管理や造園、継続的なメンテナンスにも対応しています。

今年設立された同社は、5月からステルスモード(外部に公表しないまま事業を進めること)で運営されており、最近ベータ版のウェブサイトを立ち上げ、ウェイティングリストの中から顧客を獲得し始めています。

現在は、メキシコ、カリブ海、コスタリカで別荘を購入したいと考えているアメリカ人やカナダ人をターゲットとしていますが、将来的にはヨーロッパでも同様のサービスを提供することを目指しています。

今回の資金調達により、メキシコの主要都市であるロスカボス、プンタミタ、トゥルムで、約20軒の住宅を取得することが予定されています。

Flat.mx(メキシコ):2000万ドル

引用:Flat.mx(フラットドット エムエックス)

上述のKocomo(ココモ)と同じく、メキシコの不動産Tech企業であるFlat.mx(フラット ドット エムエックス)は、Anthemis500 Startupsが共同でリードした2000万ドルのシリーズA資金調達ラウンドを実施しました。
今回の資金調達には、ALLVPExpaや複数のエンジェル投資家も参加しています。

メキシコを含むラテンアメリカの不動産市場においては、家を売却するのに6カ月から2年程度の長期間かかることが多く、課題となっています。
また、アメリカと異なり、MLS(Multiple Listing Service)がないため、価格データの入手が困難であったり、エージェント資格が不要のため住宅売買のプロセス全体が非公式なものになっているという、ラテンアメリカ特有の課題があります。

そこでFlat.mxは、MLS、サードパーティ/業者マーケットプレイス、金融商品、ブローカーテクノロジー、ホームメンテナンスプロバイダーなどの複数のサービスを構築し、ラテンアメリカの事情に特化した不動産スーパーアプリを構築しました。

さらに、即日オファーを可能にし、所有権の再取得プロセスをわずか数日で完了させることで、ユーザーエクスペリエンスの向上を実現しています。

同社は、前四半期比で70%の売上増を達成しており、在庫数は昨年の10倍に増加しています。また、昨年半ばには30人だった従業員数も、現在は85人以上と3倍近くに増員しており、成長著しい企業の1つです。

Cayena(ブラジル):350万ドル

引用:Cayena(カイエナ)

ブラジル・サンパウロを拠点にB2Bの食品マーケットプレイスを展開するCayena(カイエナ)は、350万ドルのシリーズAラウンドの資金調達を実施し、これまでの総調達額は400万ドルとなりました。

今回の資金調達は、Picus Capitalがリードし、Astella InvestimentosFEMSA VenturesMSA CapitalCanaryGrão VCNorte VenturesFJ Labsなどが参加しています。

同社はこれまでデジタル化が遅れていたレストランの卸売りに着目し、レストランが週単位で必要とする食料品や消耗品を扱うB2Bマーケットプレイスを2019年9月にMVPでローンチしました。

従来、レストランのオーナーは、食材や消耗品を様々なサプライヤーに注文しなければならず、卸売業者に行ったり、地元の流通業者に行って、都度どこから購入するかを決める必要がありました。
そこでCayenaは、最小数量、価格、サプライヤーを最適化するアルゴリズムを作成し、ユーザーによって最良の価格を提示できるようにしました。

同社の共同設立者兼CEOであるPedro Carvalho氏によると、同社のサービスにより、ユーザーは1回の販売で平均約15%の節約ができ、すでに約2000のレストランの顧客を持っているとのことです。

同社のプラットフォームでは、パッケージ商品、乳製品、タンパク質、飲料、清掃用品、果物、野菜など、複数のカテゴリーから2万点以上の商品が掲載されており、サンパウロ州の大都市全域で翌日配達を行っています。

なお、今回の資金調達により、サンパウロ州内での配送をさらに拡大する予定です。

投稿者:大谷 奈々
オーストラリア滞在中に仲良くなったコロンビア人からレゲトンミュージックやサルサダンスを教わったことからスペイン語圏の文化に興味を持ち、スペイン語の学習を始める。
現在は、大手コンサルティングファームで人事コンサルタントとして働きながら、RouteXでは主にスペイン語圏のスタートアップエコシステムのリサーチを担当している。

RouteX Inc.では、南米諸国をはじめ、世界のスタートアップ・エコシステムにおける「情報の非対称性」を無くすため、世界中のスタートアップとの連携を進めてまいります。
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