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記事一覧 > STATION FのFUTURE 40 – 2022の概要と注目のスタートアップの紹介

みなさんはSTATION Fをご存知でしょうか。

フランス・パリにある世界最大のスタートアップインキュベーション施設です。

STATION Fは、フランスのスタートアップ・エコシステムを牽引する一大施設として、フランスだけでなくヨーロッパ全域の多くのステイクホルダーを巻き込んでいます。何千ものシード/アーリーステージのスタートアップに、数多くのインキュベーションプログラム・数百のVCが一同に介している場所です。こういった施設は、世界どこを見てもパリにしかない規模感のものとなっています。

そんな中、STATION Fが毎年来たるメガスタートアップの一角になりうる40社を紹介しているのが、FUTURE 40です。


FUTURE 40 とは

STATION Fは、施設内に所属しているプレシード/シード期のスタートアップ40社を毎年紹介しています。2019年から始めた企画であり、2022年度の発表の前に、既に累計120社を紹介しています。


今年度STATION Fが注目している領域

毎年、FUTURE 40は多くのテーマ性を持った会社を紹介しています。中でも、今年度に注目している領域は以下のトピックだそうです。

  • Productivity – 生産性向上
  • Green Tech and Impact – 環境インパクト
  • Fintech and Insurance – フィンテック・保険事業
  • HR – 人事

生産性向上をはかるSaaS企業から、環境問題対策においてイニシアチブをとっているヨーロッパならではの環境問題に関わるITサービスなど、その他にもHR・Fintech・Insurance領域のスタートアップも取り上げています。今年度より、STATION Fは Binanceとの提携インキュベーションプログラムにてWeb3領域、Slackとの提携インキュベーションプログラムとしてFuture of WorkをテーマとしたSaaS領域に注力する姿勢を見せています。以前から強いイニシアチブのあったインパクト方面だけでなく他領域にも力を入れている様子が窺えます。


FUTURE 40はどのように選ばれたのか?

FUTURE 40に選ばれる企業はどれも非常に小規模なプレシード/シード期にあたるスタートアップです。1000社の応募から選ばれしこの40社は、厳正な審査をくぐり抜けており、ビジネスモデルの審査や人物/技術力、アセットがどの程度あるのかといった要素を元に選考されたスタートアップです。

40社のうち、大半は、まだ資金調達を経験していないプレシードであり、資金調達を経験済みの数社に関しても、100万ユーロ以下の調達しかしていないスタートアップです。彼らはSTATION Fにて行われている19のインキュベーションプログラムから発掘された会社であり、そのインキュベーションにはフランスを代表する経営大学院や大企業が参画しています。経営大学院としてはHEC, EDHEC, 会社やプログラムに関してはEntrepreneur First, Naver, Cegid, the founders, FemTech Programといったものが関与しているとのことが強調されています。

40社のうち、女性創業者が設立した企業は32%に上っており、日本のスタートアップ・エコシステムと比較しても女性起業家が多く注目を浴びているということが窺えます。どの会社も創業から平均2年ほど、社員数は平均7人ほどの小規模なチームで経営されています。また、トレンドとして40社のうちSaaS的なアプローチを行なっている会社は45%を占めており、フランスのスタートアップ・エコシステムにおいて、この様なアプローチは高いポテンシャルを持っていることがうかがえます。


FUTURE 40 注目のスタートアップ

そんな選ばれし40社ですが、今回はその中でも、特に筆者が注目したいくつかのスタートアップを紹介したいと思います。

Holis

引用:公式HP

Holisは、ヨーロッパで盛り上がっているLife Cycle Assessment(LCA)というプロセスに注目してプロダクト開発を行なっているスタートアップです。ヨーロッパにおける環境意識の高まりは政府によってイニシアチブが取られるほどになっており、その結果、企業/個人が製品の環境負荷を気にするようになっています。そんな中、注目されている環境負荷の評価法がLife Cycle Assessment(LCA)と呼ばれている手法です。その製品が出荷され自分の元に訪れるまで、どのくらいの環境負荷があったのかを判定する手段として扱われています。EUに拠点を置く企業やツールの多くはこういったLCA表記でCO2ガスの排出量を明記するようになっています。しかしながら、その表記に対する透明性が明らかでない個人顧客からの情報の非対称性が問題になっており、HolisはLCAを消費者向けにアクセス可能なものとするプラットフォームを目指しているそうです。

Kumulus

引用:公式HP

KumulusはDeep Tech寄りの分野から登場した特徴的なスタートアップです。上記にあるような装置「Kumulus One」を販売しています。この装置は「土や空気から水を作り出す」ことができ、水分供給の困難な地域や貧困問題に新たなソリューションを見出すことができるプロダクトと言えます。ヨーロッパ市場と繋がりの深いアフリカ地域にて既に実装を行なっており、FUTURE 40の中でも既に投資を受けており、かなり期待されているプロダクトと言えます。

aHRtemis

引用:公式HP

aHRtemisはデータ利活用を通して、従来よりもコスト削減をした形でリクルートを行えるHRスタートアップです。to B向けに良質な雇用可能な人材プールと企業をつなげるCRMモデルの事業を行なっています。aHRtemisが有している多様な人材プールのデータと、企業が欲している人材をデータ分析でつなげるサービスにより、aHRtemisは多くのデータ利活用の成果を上げています。既に、Vestiaire Collectiveといった有名企業と人材プールを、SuntraleSupélecというフランス理工学グランゼコールで優秀な学校と繋げる場を設けたりしています。

Symeo

引用:公式HP

Symeoは、ITエンジニアのコーディングにおける生産性向上を目指し、コードクオリティを上げるためのツールを提供しています。実際のプロダクトは開発環境を一つに統合するためのSDK /プラットフォームを提供しています。このサービスはエンジニアが簡単に実装することができ、煩雑になるコーディングのプロセスを一括管理し、なおかつセキュリティも担保するように設計されています。徹底的にエンジニアが快適になるように設計されているツールです。

blitz

引用:公式HP

blitzは、ノーコードで社内用の専用ツールを設計することができるプラットフォームを提供しているスタートアップです。多くのSaaSがヨーロッパでも乱立しているわけですが、このサービスの一つは、プロダクトチームのオペレーションに使われるツールをノーコードで好きな形にデザインできるよう設計されているそうです。そのほかにも、ビジネス面のKPIを扱うための専用ツールもノーコードで作れるようになっているそうで、他のSaaSツールが取れていない隙間のパイを狙った巧妙なプロダクトとなっています。

Konect

引用:公式HP

Konectは、ゲーマーの評価を可視化するためのコミュニティプラットフォームを提供しているスタートアップです。創業者がLeague of LegendのeSports部門で成績を残しているほどのトップゲーマーであり、ゲーマーが評価されるためのプラットフォームがないことに気づいたことがこの起業のきっかけだそうです。eSportsの盛り上がりに対応したゲームコミュニティの正当な繋がりが広がっていないことを解決するため、eSports選手やトップゲームプレイヤーをリスティングできるプラットフォームを作っています。

Leto

引用:公式HP

Letoは、中小企業がデータセキュリティ問題を解決するためのソリューションを提供しているスタートアップです。ヨーロッパではGDPRといった個人情報権利保護に関わる規約がEU規模で展開されており、大企業のように簡単に対応のできない中小企業についてもこの権利保護に対応する必要性が出ています。こうした需要を受け、LetoはWeb上のデータに関わる事業をしている中小企業がGDPRフリーになるようなツールを提供しています。Mailchimp, Slack,PostgreSQLなど、多く存在する企業側のデータ周辺ツールとLetoを接続させることでGDPR問題に関わる情報管理を一元化することができるのです。こういったヨーロッパ特有の事情によって生まれるスタートアップは芽が出ると注目されやすく、現にLetoは120万ユーロの資金調達を完了させています。


最後に

今回取り上げたものは、ほとんどがSaaS、他のスタートアップも新たなマーケットでのtoCサービスに集中しています。この比率は前述したようにFUTURE 40全体に現れており、2023年現在、一貫してSaaSサービスでの展開にトレンドがあることが見込まれます。
FUTURE 40 – 2022はそのほかにも多くの興味深い企業がリスティングされており、どの事業内容も興味深いものでした。その他の企業についてもぜひ調べてみてください!

いかがでしたでしょうか?
RouteX Inc.では引き続きスタートアップ・エコシステムにおける「情報の非対称性」を無くすため、世界中のスタートアップとの連携を進めてまいります。
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