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記事一覧 > オーストラリアのスタートアップ・エコシステムを現地調査!!

オーストラリアのイメージはみなさんどのような物をお持ちでしょうか?
カンガルーやコアラ、天気に恵まれている国、夏のクリスマスといったイメージがあるかもしれませんね!

スタートアップ関連でオーストラリアと言えば、これまでオーストラリアは
「起業家不毛の地」と言われるほど、あまり起業を行う文化や、スタートアップが人気ではなかったという特徴があります。
最近、世界中の他都市と同様にオーストラリアでもスタートアップのエコシステムを作る動きがあり、盛り上がっている情報を聞いたので、今回も現地に調査に行ってきましたので現地の様子をお伝えします!!

オーストラリア 「起業家不毛の地」とは?

 オーストラリアで一番の大都市と言えばシドニー、第二の都市はメルボルンと言われています。この二つの都市を中心にスタートアップのエコシステムを作る動きがあります。

しかし、この2つの都市を中心としてオーストラリア内にスタートアップのエコシステムを作ろうとする動きはごく最近のものであり、これまでオーストラリアは「起業家不毛の地」と揶揄されるほど、国内にスタートアップや起業を行う文化がなかった特徴があります。

なぜ、オーストラリアは起業家不毛の地」と呼ばれていたのでしょうか?
それには主に3つの理由があると言われています。

1 事業コストの高さと資金調達の難しさ

 オーストラリアで起業する人が少なかった一つの理由として、起業に関わる事業コスト(家賃やコンプライアンス費)が高額なのに対して、エンジェル投資家やVCなどの不在による起業するにあたって必要な資金を調達する事が難しかった事が要因に上げられます。

スタートアップが成功するためには、アイディアやプロダクトの素晴らしさだけでなく、スタートアップを取り巻くエコシステムも非常に重要と言われており、世界中のスタートアップのエコシステムが形成されている地域では、スタートアップに投資するエンジェル投資家やVCが多い特徴があります。そのことによってスタートアップは資金調達がしやすくなり、プロダクトの開発費等のスタートアップが成功していくために必要な費用を捻出する事ができます。そのようなスタートアップに投資する機能がオーストラリアにこれまで根付いていなかった事が、「起業家不毛の地」にした一つの要因と言えます。

ひとつのおもしろい例として、2002年に創業したオーストラリア初のスタートアップでもっとも成功したと言える、コミュニケーションツールを提供するAtlassianは創業の際に資金調達をする機関がなく、クレジットカードの与信枠を利用して創業資金を準備したと言われています。今では創業者のScott FarquharはForbesの長者番付に載るほどの起業家ですが、創業当時はそれだけオーストラリアに起業を支援するような機関がなかった事が伺えますね!

Atlassianの顧客はNASAやTeslaから、最近では同じ競合のSlackに大企業向けプロダクトのHipChatとStrideを事業売却するなど話題も豊富です!

このようにオーストラリアではスタートアップが成長していくために必要な資金の調達の困難さから、Atlassianの様な世界的な大企業になったスタートアップも自己資金で創業していたという背景があります。

2​  保護主義政策によるスタートアップ成長の阻害

 オーストラリアはこれまで広大な土地と豊富な資源を背景に経済発展を遂げ、教育水準も高く、先進国で最長の26年間にも及ぶ景気拡大を続けてきました。

治安も良く、雇用も安定し、医療も含め世界トップ水準の国と言えます。

そういった安定した生活と経済成長を維持するため、壊さないためにオーストラリア政府は「過保護国家」と揶揄されてしまうほどかなり保護主義的な政策を取っていました。

実際に経済は成長し、国民の生活も安定しており政府に対する満足度は高いと言えます。

ただ、その反面スタートアップを支援する動きは全く起きず、また規制の厳しさからスタートアップがチャンスを見つけても動く事が出来ないという、少し日本と似た現状がありました。

面白い例では、創業メンバーではない場合にスタートアップにジョインする醍醐味とも言える、「ストックオプション」の発行が事実上数年前まで出来なかったというのは驚きです!!

起業家の国外流出

上記の様なオーストラリアの現状から、オーストラリアで起業する事は難しく、また公用語が英語という事もあり、世界中で働きやすいために野心的な起業家が起業する国として母国ではなく外国を選ぶという流れも起こってしまいました。シリコンバレー等で経験を積んだ後に、母国ではなく他国で起業してしまい、自国に優秀な人材のナレッジが蓄積しないのは国としてもかなり大きな問題ですよね。スタートアップが成長していくのに必要な要因としてメンターの存在は大きいと言われています。メンターとは先輩起業家として、彼らの成功や失敗体験を次世代に受け継いでいくことによって、スタートアップのエコシステムを活性化する役割があります。そういったメンターやエンジェルはシリコンバレーをはじめ、多くのスタートアップエコシステムが形成されている地域では存在していますが、オーストラリア国内に不在となると今後起業していく次世代が回避可能な問題にぶつかり、スタートアップを成長させる事が出来ずに倒産してしまうという問題を抱えることになってしまい、メンターの存在は非常に重要と言う事が出来ます。

次世代に向けたオーストラリア スタートアップ・エコシステムの変革

上記の様に、安定した経済成長と教育や医療の水準の高さから超優良先進国に見える

オーストラリアですが、世界中の都市でスタートアップのエコシステムが形成されている事やスタートアップが世界中に与えるイノベーションのインパクトの大きさから、オーストラリア政府もスタートアップに対して何もしない事に危機感を感じ、

2015年のマルコム・ターンブル政権発足後、

「起業家への税制優遇」

「インキュベーションファンドの設立」

「外国人研究者誘致のためのビザ改革等」

などの

国内のスタートアップが成長するのを支援する枠組みを整え、優秀な外国人を国内に誘致する取り組みも始めた。他のスタートアップ・エコシステムが形成されている地域も同様な政策を取っている場合も多く、本格的にスタートアップ支援に動き出したと言えるかもしれません。

また、政府主導でシドニーに11フロアに広がるスタートアップ支援施設

「Sydney Startup Hub」も建設し、ひとつの建物の中にスタートアップが成長していくためのエコシステムを作るというかなり大規模な動きも進んでいます。

政府がどれだけ本気でスタートアップのエコシステム作りに動いているのかがよく分かりますね!

(Startup Grind APAC Conferenceの開催が予定されている、Melbourne Convention Centre )

メルボルンではシリコンバレー発の組織でグローバルなスタートアップ・エコシステムを作っているStartup GrindがメルボルンにてAPAC  Conferenceを予定しており、シリコンバレーもオーストラリアを中心としたスタートアップのエコシステムの形成に関心を寄せている事が分かります!

(メルボルンの中心部に位置する、Startup Melbourne 。Facebookとの連携等も進めている)

また、メルボルンにもシドニー同様にスタートアップを支援するための施設が出来始めており、スタートアップのエコシステムがオーストラリア全体で出来つつあると言えます!

この様なオーストラリアの主要都市において、スタートアップ・エコシステム形成の動きが始まったことから、オーストラリアのスタートアップが活性化する可能性を勝手に予想してみたいと思います!

これまで述べた点➕
以下の3点の要因によって、オーストラリアのスタートアップ・エコシステムが急速に成長していくのではと予想しています!!

オーストラリアの言語的・地理的特性(APACに位置するという事)

オーストラリアはみなさんがご存知の通り、英語を公用語とする多民族国家です。

しかし、実はオーストラリアは広義にアジアとして区別されているという事を知っていた人は少なかったのではないでしょうか?

先ほど、ご紹介させていただいたStartup Grind APAC Conferenceとあるように

APACとはAsia-Pacificの略語となっています。アジア太平洋地域という事で、オーストラリアもAPACに所属しており、位置的にもアジアのマーケットに近いと言う事が出来ます。

実際にRouteX Inc.代表の大森がFacebook Singaporeで行われたDeveloper Circle のAPAC Leads Summitに招待された際もオーストラリアはAPACとして参加しており、一般的にイメージされるアジアの国々の代表とコミュニケーションを取っていました。

そして、このAPAC地域に位置し、英語を公用語として一般的にビジネスレベルで使っているのはシンガポールとオーストラリアの2カ国のみと言えます。

英語がビジネスレベルで使えるという事はアジアのマーケットだけでなく、グローバルマーケットへのアクセスも比較的容易と言えます。

以上の事から、オーストラリアは言語的・地理的特性からアクセスできるマーケットが広いと言えます。ただ、シンガポール同様に国内のマーケットがあまり大きくないので、グローバルマーケットに進出するのが必須とも言えます。

(日本は国内のマーケットが比較的大きく、グローバルマーケットに進出しなくても一定までスケールする事が出来、グローバルへの進出が遅れているという意見もあります。)

2 アメリカへの特別パス「E3ビザ」

世界最先端のイノベーションを起こし続けている地域と言えば、FacebookやGoogleの本社があるアメリカのシリコンバレーですが 、外国人としてシリコンバレーで働くためには単に優秀なだけでは難しい壁があります。それはアメリカのビザ取得の難しさと言われています。

アメリカのビザ取得は非常に難しく、またトランプ政権に変わってからその難易度がさらに上がったと言われており、外国人にとってアメリカで働くためにはいくつもの壁があると言えます。そんな難しいアメリカのビザ取得ですが、世界でオーストラリアにのみ「E3ビザ」というアメリカに移住と労働が可能なビザの発行が政府間で認められています。

これは、アメリカとオーストラリア間で自由貿易協定が結ばれた事により、2005年から始動した制度です。

この「E3ビザ」がオーストラリアのスタートアップ・エコシステムにどのような影響を与えるのでしょうか?

オーストラリアはアメリカと言語的な壁はなく、文化的にも近い事から非常に働きやすい環境と言えます。さらに、アメリカで働く際に最も難しいと言われているビザ問題も「E3ビザ」によって解消された事により、シリコンバレーを始めとした先進地域で働く意欲の高い優秀な人材を送る事が可能となります。また、オーストラリアは上記でもお伝えさせていただいた通り、教育や医療の水準も高いため、アメリカの先端企業で経験を積んだ後にオーストラリアに帰国する流れが出来つつあります。これはスタートアップ・エコシステムを形成する上で重要な様々なナレッジを持ったメンターが増えていく事と言えます。この事によってシリコンバレー等で経験を積んだエンジェルやメンターがオーストラリアの次世代起業家と交わる事が可能となり、スタートアップ・エコシステムの発展がさらに加速していくと予想出来ます!!

3 世界水準の大学の存在

(オーストラリア最高峰 シドニー大学) 

オーストラリアのスタートアップ・エコシステムが発展していく可能性のさらなる決め手となるのは世界水準のシドニー大学を始めとした教育、研究機関の存在です。

世界中のスタートアップ・エコシステムが形成されている地域でも大学を中心として優秀な人材がスタートアップに流れています。また、スタンフォード大学を始めとした大学での研究シーズをそのままスピンアウトさせて起業するような流れもあり、教育、研究機関のレベルの高さもスタートアップ・エコシステムを形成する上では非常に重要と言えます。

 いかがだったでしょうか?
「起業家不毛の地」と言われたオーストラリアが急速にスタートアップ・エコシステム作りを進めている事が分かりますね!

オーストラリア特有のAPAC地域という特殊な地理的要因、英語が公用語で「E3ビザ」によるアメリカでの働きやすさを始めとしたポテンシャルからも、オーストラリアが南半球のシリコンバレーに向かって直進しているようにも感じますよね!

RouteX Inc.では、引き続きオーストラリアのスタートアップとの連携を含めた現地調査を行っていきます!また、各国のスタートアップ環境についてもっと詳しく知りたい方はお気軽にお問い合わせください。海外のスタートアップとの連携やイノベーション拠点の調査依頼、海外アテンド依頼等もお気軽にお問い合わせください!