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記事一覧 > スペイン語圏最大級のスタートアップカンファレンス「South Summit 2021」イベントレポートvol.1

2021年10月5日~7日の3日間にわたって、スペイン・マドリードにて、スペイン語圏最大級のStartup & Technology ConferenceであるSouth Summitが開催されました!

RouteXはMedia Passを取得し、イベントへの参加および運営主であるSpain StartupのCEO、Marta del Castillo(マルタ・デル・カスティージョ)氏に公式に取材をすることができました!

スペインだけではなく、ラテンアメリカからも多くの注目企業を招く本カンファレンスの様子と、カンファレンスを通して語られたスペインおよびラテンアメリカのスタートアップ・エコシステムの特徴について、前編・後編の2回に分けてお伝えしていきます。

前編の本記事では、カンファレンス全体の様子と1日目に実施された注目のコンテンツ2つをレポートします!

スペイン語圏最大級のスタートアップ・カンファレンス
「South Summit」とは?

South Summitは、今年で10回目を迎えるスペイン語圏最大級の Startup & Technology Conferenceであり、2020年は新型コロナウイルス感染防止のため、完全オンラインで実施されましたが、今年はオンラインとオフラインのハイブリッド開催となりました。

今回はマドリードでの開催でしたが、11月には同じくスペイン・バレンシアでの開催が予定されています!

過去にはスペイン発のユニコーンとなった配車サービスの「Cabify」をはじめ、デリバリーサービスの「Glovo」、AppleやAirbnbにも採用されているSaaSの「Typeform」なども参加しており、毎年注目度の高いスタートアップを見ることができます!

また、スタートアップ関係者に留まらず、スペイン国王のフェリペ6世や、ペドロ・サンチェス首相、スペイン起業家国家担当高等長官であるフランシスコ・ポロ氏など、スペイン国家において重要なステイクホルダーも登壇しており、このことからも、スペインが国家全体として、スタートアップ・エコシステムの形成に力を入れていることがよくわかります。

スペイン国王のフェリペ6世のスピーチの様子
引用:IE大学

今年も世界中からスタートアップ関係者6,800人、投資家1,200人、ゲストスピーカー650人が参加するなど、大盛況の開催となりました!

また、今回のSouth Summitの特徴として、サステナビリティに関するセッションも多く、SDGsの「2030アジェンダ」に向けての各企業の取り組みの紹介も見られました。
South Summitの企画の1つとしても、カーボンフットプリント(CO2の可視化)の取り組みが行われ、カンファレンス全体を通して、サステナビリティを意識させる仕組みが見られ、参加者の意識向上に貢献しようとする姿勢を感じました。

カーボンフットプリントの算出画面


なお、RouteXはオンラインで参加しましたが、オンラインでも登壇者への質問や参加者同士でチャットでのコミュニケーションができるように工夫が凝らされており、オンラインのデメリットであるネットワーキングのしづらさも緩和されていたように思いました。

オンライン上でも参加者とネットワーキングが可能


South Summit 2021の概要をご理解いただいたところで、3日間の盛りだくさんのアジェンダの中から、初日に実施された特に注目度の高い2つのコンテンツについてご紹介します!

【注目コンテンツ①】スペインのテクノロジー・エコシステム

まず初めにご紹介するのは、初日のオープニング直後に行われた、スペインのテクノロジー・エコシステムについてのパネルディスカッションです。

モデレーターは、K FundCarina Szpilka(カリーナ・シュピルカ)氏が務め、パネリストとして以下4名が登壇しました。

  • Francisco Polo(フランシスコ・ポロ):スペイン起業家国家担当高等長官
  • Aquilino Peña(アキリノ・ペーニャ):ASCRI 社長、Kibo Ventures 創設者
  • Antonio Iglesia(アントニオ・イグレシア):Endeavor Spain マネージングディレクター
  • José Bayón(ホセ・バイヨン):ENISA CEO

スペインのテクノロジー・エコシステムについて、Dealroomと共同で執筆されたレポートがSouth Summitの開催に合わせて公開されたため、そのレポートの内容や背景についてのトークが繰り広げられました。

スペインにおけるスタートアップの合計評価額は2015年と比べて約5倍の460億ユーロまで増加しており、ヨーロッパ各国のハブ都市において、2000年以降に設立されたスタートアップの評価額合計は、バルセロナは8位、マドリードは11位と上位にランクインしています。

引用:Dealroom
引用:Dealroom

また、将来的なユニコーン企業であるスーニコーン(Soonicorn)の数は、ヨーロッパ各国の中で5位にランクインするなど、今後の大きな成長が期待されています!

引用:Dealroom

一方で、人口1人当たりの投資額はヨーロッパ平均よりも低いため、今の成長率に満足せず、他のヨーロッパ各国と比べてもベストな起業家国家を目指すために、スタートアップへの投資を促進するための仕組みを導入することが重要だと述べていました。

パネルディスカッションの中では、上記のような今後の成長への期待の他、スタートアップ・エコシステムの構築において、官民連携が重要となるということが繰り返し述べられており、2021年2月に発表された「スペイン起業家国家戦略」を中心に、起業家に対する支援を強化していくことが強調されていたのが印象的でした。

42億ユーロ(約5460億円)以上という大規模な予算をかけて、起業家国家を目指しているスペインの今後の動きに要注目です!

<<「スペイン起業家国家戦略」についての記事はこちらからご覧いただけます。>>

【注目コンテンツ②】ラテンアメリカのユニコーン企業の実態

続いてご紹介するコンテンツは、ラテンアメリカのユニコーン企業を創設者を招き、創業当時の状況や今後のラテンアメリカにおけるスタートアップ・エコシステムの展望について語られたパネルディスカッションです。

このセッションでモデレーターを務めたのは、SoftbankLaura Gavirias(ラウラ・ガビリア)氏です。

Softbankグループは2021年9月に第2号となるラテンアメリカ・ファンドの設立を発表するなど、ラテンアメリカにおけるスタートアップへの投資を語るうえで欠かせない存在となっています!
(ちなみに、ソフトバンク・ラテンアメリカ・ファンドのCEOを務める、Marcelo Claure(マルセロ・クラウレ)氏も、South Summitの別のセッションに登壇していました。)

本セッションのパネリストは以下3名のユニコーン企業の創設者です!

  • Martín Umarán(マルティン・ウマラン):Globant 共同創設者
  • José Renato Hopf(ホセ・レナート・ホップ):4All Tecnologia 共同創設者兼CEO
  • Sergio Furio(セルヒオ・フリオ):Creditas 創設者兼CEO

Creditasのフリオ氏はオンライン参加で、ハイブリッドでの実施となりました。

3社とも設立時期やユニコーンとなった時期が異なるため、それぞれの設立初期の話は興味深く、3社の中では最も歴史の長いGlobantが設立された2003年当時は、まだ「ユニコーン」という呼称自体がなかったそうで、当時はユニコーンを目指すということよりも、”Think Big”(野心を持って考えること)を意識していたとのことでした!

2000年代はストックオプションも主流ではなかったため、現金が欲しいと言われていたのに対して、今ではストックオプションをくれないか?という会話に変わってきており、世間全体としてスタートアップに対する期待感が高まっていると話していました。

3名が揃って口にしていたこととして、1人では良いビジネスはできないため、いかに良いチームを作るかが重要だということです。

4All Tecnologiaのホップ氏は、イノベーションを起こすためには、Good Idea(良いアイデア)だけでなく、Great People(最高の人材)・Great Excecusion(最高の実行力)・Great Culture(最高の文化)の3つが必要だと強調していました。

また、設立初期は実績もないため、起業の目的を明確にし、経済的・社会的な影響など実現したい世界観を情熱を持って伝えることで、同じ夢を抱いて仲間となってくれる従業員を増やしていったとのことでした。

ラテンアメリカにおけるスタートアップ・エコシステムのチャレンジとしては、資本市場のさらなる活性化が必要だとCreditasのフリオ氏は述べていました。

以前と比べて資金調達も活発になり、市場における総調達額も急増しているものの、現地のVCやPEがさらに増えることにより、エコシステムの成長を後押しするとのことです。

なお、3名ともユニコーン企業を生んだ「成功者」として、様々な形でエコシステムの形成を支援しているとのことで、ホップ氏は非営利の起業家支援組織であるEndeavor Brasilにも関わり、30~40社の企業と話してチャレンジを支援しているとのことです。
フリオ氏はエンジェル投資家としてスタートアップに投資をしており、ウマラン氏はメンターとして起業家と1on1をし、孤独を感じやすい立場である起業家の支えになれるよう相談に乗っているとのことでした。

彼らよりもさらに若い世代が新たなイノベーションを起こして社会課題の解決を進めてくれることを期待しているとのことで、このように起業家同士で支援の輪を広げていくことが、スタートアップ・エコシステムの成長には欠かせないものだと改めて感じたやりとりでした!

まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回のレポートでは、スペインとラテンアメリカのスタートアップ・エコシステムに関するセッションについてご紹介しました。

どちらも、近年スタートアップ・エコシステムが急成長しているマーケットであり、政府の支援強化や新たなVCの設立なども見られ、今後ますます成長が加速していく見込みです。

そんな注目のマーケットで、実際にエコシステムの構築を担っている起業家・著名人のディスカッションは新鮮な話ばかりで、やはり最新情報をキャッチできることがカンファレンスの魅力だと感じました!

また、ヨーロッパ諸国よりもラテンアメリカからのゲストが多かったことから、スペイン語圏での結びつきの強化を重視していることがわかります。
Marta del Castillo氏へのインタビューでも、今後の動きについて詳細を伺っていますので、別途公開されるインタビュー記事を楽しみにお待ちください!

次回のイベントレポートvol.2では、South Summitにて毎年行われているスタートアップ・ピッチと、ペドロ・サンチェス首相のスピーチ、そして大注目のカスティージョ氏へのインタビュー結果をお届けします!乞うご期待ください!!

投稿者:大谷 奈々
オーストラリア滞在中に仲良くなったコロンビア人からレゲトンミュージックやサルサダンスを教わったことからスペイン語圏の文化に興味を持ち、スペイン語の学習を始める。
現在は、大手コンサルティングファームで人事コンサルタントとして働きながら、RouteXでは主にスペイン語圏のスタートアップエコシステムのリサーチを担当している。

RouteX Inc.では、スペインを始め、引き続きスタートアップ・エコシステムにおける「情報の非対称性」を無くすため、世界中のスタートアップとの連携を進めてまいります。
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