みなさんは世界的なスタートアップ系のメディア、TechCrunchが毎年開催しているDisruptというイベントをご存知でしょうか?
Disruptとは秩序を乱す、破壊的、常識を覆す、といった意味がありますが、TechCrunch Disruptとはその名の通り、このイベントからこれまでの常識を覆すようなスタートアップを生み出すことを目的に、2011年からTechCrunchが開催している世界的なスタートアップイベントの一つになります!
最近はシリコンバレーにほど近い、サンフランシスコとヨーロッパで合わせて年2回開催されるようになっています。また、Disrupt開催中はStartup Battlefield というスタートアップのピッチコンペティションがあり、スタートアップが著名なVCやFounderの前でピッチを行い、賞金を競うイベントも開催されています。優勝すると世界中に名前が広がる事もあり、スタートアップが世界的に有名になるための一つの登竜門とも言われています。
今回はそんな世界的なスタートアップイベント
「TechCrunch Disrupt Berlin 2018」に参加してきたので、現地の盛り上がりとヨーロッパを中心とした注目のスタートアップの情報をお伝えします!!!
「TechCrunch Disrupt Berlin 2018」の会場となったのはベルリンのシュプレー川のそばにある、Arena Berlinという昔の倉庫を改装した様なモダンな作りのイベント会場です。
入り口を入るとすぐに受付があるので、まずはここで自分のチケットをもらいます。
こういったスタートアップ関連のイベントには共通のチケットという物はなく、かなりバリエーションが多くチケットのタイプが用意されおり、Startup、Investor 、General 、Press、Studentといった区分が一般的となっており、チケットのタイプによって会場で会いたい人や話してみたい人が区別出来る様になっています。例えば、StartupやInvestoreの人はお互いに話して経営戦略や投資方針についてディスカッションの機会が生まれやすい様な工夫がされています。また、チケットによっても値段や入場出来るブースがかなり異なってくるのでイベントに参加される場合は自分の区分をよく確認されてからチケットを申し込まれると、現地で効率良く動く事が出来ます。(チケットをアプライした後に主催者側からの選考があるので、必ず希望しているチケットが購入出来るわけではありません。)
「TechCrunch Disrupt Berlin 2018」
の開幕の挨拶として、TechCrunch Editor in ChiefのMatthew Panzarinoさんから今回のイベントの趣旨や期待する効果についての話があり、大きな拍手とともにイベントがスタートしました!
まず、最初のキーノートスピーチとして、
Roborace CEOであり元F1ドライバーのLucas di Grassi氏から人間とAIの共存によるレースという新しいマーケットの創造についての話をされました。
「Racing to the Future 」
Roboraceによる、人間×AIの新しいレーシングカーの開発
RoboraceはAI制御による F1と同程度の大きさのレーシングガーを走らせる事によって、
自動制御の自動車のレースをエンターテイメントとする事を目的としているスタートアップです。元F1ドライバーのLucas di Grassi氏がCEOとしてRoboraceを率いているのはとても面白いですね! 会場には実際のRoboraceの車も展示されおり、人が乗る場所が必要ないので、かなり特徴的なカッコいいフォルムになっています。上の実際の写真を良くみていただくと、小さな点の様な物がいくつかありますが、これは全てセンサーで通常のレーシングカーとは違いGPS等の様々なセンサーが取り付けられており、常に走行中のデータを取得出来る様に設計されています。Roboraceの設計をするにあたって、まず人間が乗れる車でデータを取得してそのデータを利用する事によって、こちらのAIの自動運転者に反映させていく方法が取られているようです。
実際にF1のような現在のレースは人が運転していますが、このようなレースは
「人が運転するから面白いのではないか?」「レースの醍醐味である、レーサーの癖やクラッシュ等のハプニング等を観客は楽しんでいるのでは?」というTechCrunchの記者からの厳しい質問には「Eスポーツが実際のスポーツではないのに、ここまで成功している。レースにおいてもそれは起こりうると考えている」という回答に続いて、Roboraceの真の狙いも語られました。
Roboraceがハイスピードでの、ある種の極限状態の自動運転を可能にするための技術開発によって様々なデータやブレイクスルーを達成する事が出来、その情報を様々な分野に応用出来る可能性があり、大きなマーケットを獲得する可能性を秘めているという真の狙いを語りました。確かに最近はGoogleやロシアのYandex、様々な世界的な企業が車の自動運転の開発に取り組んでいますが、Roboraceの様にハイスピードでの自動制御の技術が確立すれば、そういった日常生活での自動運転にかなり大きく寄与する可能性がありますよね!
さらに自動運転技術を可能にするために、RoboraceはAIの世界的企業のNvidiaとパートナーを組んでいることからも、どれだけAI関連からもRoboraceが注目されているかも分かります。CEOのLucas di Grassi氏はRoboraceの発展によって、これまでの生活を
「より低コストで安全にする事が可能となる」という言葉でRoboraceの目的をまとめてくれました。 確かにこれまで起こった大きなイノベーションの数々は様々な研究開発の副産物として生まれた物が多いですよね。特にインターネットは軍事開発の副産物の中でも一般の人々を大きく変えたイノベーションですが、RoboraceがAIや様々なテクノロジーを駆使して、自動運伝のハイスピードカーを達成する事によって全く別の方向性での大きなイノベーションを起こす可能性を秘めている事からも、Roboraceの今後の動きから目が話せませんね!!
このようにTechCrunch Disruptでは世界を変える様なイノベーションを起こす可能性のあるスタートアップのFounderやそれに投資をするVC等からのキーノートスピーチを聞く事が出来、今後の世界のスタートアップやテクノロジーのトレンドを掴む事が出来るよになっています。
そして、最初にご紹介したDisruptと並行して行われる
「Startup Battlefield Berlin 2018」については別途記事にまとめる予定です!
キーノートスピーチの会場の横では、アーリーステージのスタートアップがブースを出展し、それぞれのスタートアップのプロダクトを参加者や投資家に向けて宣伝をしています。
こういったイベント会場に来ている人はかなりアーリーのスタートアップの情報にも敏感な人が多いので、スタートアップとしても出展するメリットは大きいと言えます。
このイベントの間に提携や投資の話が決まることもあるために、偶然の出会いもスタートアップの成長にとってとても重要と言えますね!
そういったスタートアップと投資家にとって非常に重要な「出会い」を偶然のものから、必然にするために「Crunch Match」というサービスも並行して行われています。
これはDisrupt Berlin参加者に対して、それぞれが自身のプロフィールを作成して、気になった人にアポイントの申請を行う事が出来、すぐにミーティングに移る事が出来るサービスになっています。
Crunch Matchのブースは常に人だかりが出来ているので、どれだけ多くの人がこのサービスを利用してマッチしているかが良く分かりますね。
ここでまずは最初のミーティングをこなして、その後別日に提携や投資のミーティングに移っていく流れがあるので、非常に重要なサービスです!
こういったスタートアップ関連のイベントはもちろん特別ゲストによるキーノートスピーチを聞く事が出来るのも重要な要素のひとつですが、どれだけ多くのネットワークを作れるかもスタートアップにとっては非常に重要な要素と言えますね!
また、Crunch Matchの横にはランチスペースも用意されています。
一見殺風景なベンチのみのランチスペースに見えますが、必然的に横の人と相席になるので自然と会話が生まれる工夫もされています。会場の至る所で初対面の人同士でコミュニケーションが生まれている事がよく分かります。
「How Electric Scooters Could Reshape Cities with Lime」
世界的なシェアリングエコノミースタートアップ Limeの戦略
キーノートスピーチでさらに注目を集めていたのが、
急成長して世界的なスタートアップになったシェアリングエコノミーの代表格のひとつ
Limeの Co-founderであるCaen Contee氏ののトークでした。
みなさん、Limeはご存知でしょうか?
まず先にこちらの動画を見てもらうと分かりやすいかもしれません!
Limeはシリコンバレーに本社を置く企業で、上の動画の様にどこにでも乗り捨て可能なシェアリングスクーターを提供しており、それ以外にもシェアリングサイクルも提供している企業です。2017年に創業して、既にユニコーン企業(評価額10億ドル以上)となっている事を考えるととんでもない急成長を遂げたスタートアップだという事が良く分かりますね!
そんなLimeの急成長を支えたCaen Contee氏にTechCrunchの記者がLimeの戦略や今後について鋭く質問しています。既に中国で成長しいているofd等とのスタートアップとの住み分けや、アメリカ国内でもロサンゼルス発のBirdやUberに買収されたJumpなどの競合との厳しい戦いになるのでは? どこかに買収される可能性は ? シェアリングサイクルとシェアリングスクーターの都市間による違いは?等、間髪入れずに質問が繰り返されましたが、Caen Contee氏も同様に全ての質問に即答をしていました
(ベルリンの国会議事堂前に置かれたLimeのシェアリングサイクル)
実際にベルリン市内でもLimeが利用出来るので、Caen Contee氏の発言に会場の人々の注目も高まっていました。サンフランシスコやシリコンバレーに行った際は、Limeのスクーターを至る所で見つける事が出来、利用者も多い事が良く分かります。実際、シリコンバレーの様に駅からの距離が遠い場所が多い地域に行く際にはLimeの様なサービスは非常に有効的でLast-mileの問題を解決してくれると言えます。その反面、どこでも乗り捨て可能な事から地域の住民からの反対やイタズラや破壊をされてしまうといった課題も抱えています。
Caen Contee氏は現状様々な問題がありつつも、このシェアリングサービスのマーケットは拡大し続けるだろうとトークを締めくくりました。
ベルリン市内を歩くとすぐにこのDriveNowというロゴの書かれた車を見つける事が出来ます。このDriveNowはかなりおもしろく、BMWが提供している車のライドシェアではなく、車そのものをアプリ上からレンタル出来るサービスとなっています。ユーザーはアプリから車のキーを開けて、ドライブした時間によって課金されるサービスとなっており、Uber等のライドシェアのサービスとはまた違ったユーザーエクスペリエンスを提供出来る特徴を持っています。Uberの広がりによって、車を所有する必要がなくなりつつあり、車の購買需要の低下やGoogle等の自動運転車開発などに対抗して作られたサービスとも言われています。
DriveNowを利用する事によって、ユーザーはBMW等のラグジュアリーカーの最新モデルを運転する事が出来ることや、Uberの車中での様々な問題を心配しているユーザーにも適していると言えます。
この車その物をシェアリングするサービスを提供出来るのは車を作っているBMWだからこそ出来ると言えますね。このDriveNowはまだヨーロッパでしか利用出来ませんが、このビジネスモデルが他国で広がる可能性も非常に高いですね!
このDriveNowのビジネスモデルが分かりにくい場合はぜひ上の動画を視聴してみてください!驚くほど簡単に車をレンタル出来る事がわかると思います!
この様にベルリン市内では既に車のシェアリングサービスが提供されている事からも、シェアリングエコノミー等のサービスの導入にとても関心が高い事が分かります。
これほど世界中でシェアリングサービスが広がる中で、日本でほとんど利用出来るサービスがない事はかなり異常な状況かもしれません。
日本に観光に訪れた外国人がUber等のシェアリングサービスを使えない事に驚く人も多い様です。インバウンドの観光客が多い日本ではグローバルなシェアリングサービスの導入は早急に必要かもしれません!
キーノートスピーチの会場の横にはアーリーステージのスタートアップのブース以外にも今回のスポンサーや関連企業も出展しています。例えば、世界中でStartup Weekendのプログラムを行なっているtechstarsも出展しています。techstarsはVCであり、アクセラレータープログラムも提供しているので、Disrupt Berlinに出展しているスタートアップが気軽に話を聞きにいけるのでお互いにとってかなり有益な出会いが生まれやすいですね。
それ以外にも、ベルリンのスタートアップエコシステムを代表するFactoryも出展していました。FactoryはパリのStationFの様に大きなキャンパスの中にスタートアップが成長していくために必要な要素を集める事によって独自のエコシステムを形成している事でも世界的に有名です。今回のDisrupt Berlinの出展ではFactoryの説明と、ハードウェアプロダクトを会場から遠隔操作して、Factory内部にある自走のプロダクトとの中継を行なっていたりもしました。
今回のベルリン滞在中にFactoryに訪問させていただいたので、Factory内部の様子も別記事にてお伝えします!
他にもマップの交通量予測やカーナビのためのデータ関連の企業であるhereの自動運転車も展示されています。hereは基本的にはB to Bの企業なので一般的にはあまり親しみがないかもしれませんが、このようにDisruptのスポンサーとなる事によって、一般の人への認知も広がりますね。
他にもスポンサーブースではこの様にリラックス出来るブース等も用意されています。
こういったスタートアップのカンファレンスの多くでは出来るだけ自分たちのブースに来てもらえる様に様々な工夫がされています。お菓子を置いているところや、ボールペン、USB等、参加者の人たちが少しでも興味を持ってくれる様に様々な工夫をされています。
VR等の実際に体験出来るプロダクトがあるブースには人がたくさん来ていますが、ソフトウェア系のスタートアップは人を呼び込むのに少し苦戦している様子もありましたが、ポスター等で大きくプロダクトの簡単な説明をしているところには人も流れている様子がありました。
キーノートスピーチの会場とは別のNEXT STAGEという会場でも同時進行でトークセッション等が繰り広げられています。
上の写真はVCの人たちがどういったスタートアップに投資をするのか?をメインテーマに話しているところですが、スタートアップのFounder等の多くがVisionや戦略、将来の展望に対して熱を持って話すのとは対照的に、VCの人たちは淡々と投資先のスタートアップの選定方法について話している印象でした。これまで多くのVCやCVCの人たちのトークを聞いて来ましたが、みなさん共通しているのは創業メンバーの能力やVision、実行可能性について触れています。スタートアップのビジネスモデルはピボットを繰り返す事が前提でもあり、さらにアイディア自体も先行者がいる可能性がほとんどなので、常にピボットを繰り返しても前進させる事が出来るメンバーかどうかという事も非常に重要な要素としてチェックしている様です。VCの人たちにも投資先のステージによって選定基準は違いますが、シードやアーリーのスタートアップに投資をするVCの人たちのほとんどはこの点に触れています。
スタートアップとしても、競合がいたとしてもVCからのアドバイスによって一気にスケールする可能性が高い事からも常にタッグを組んで前進出来るかどうかはスタートアップの成長にとって非常に重要です。
ランチの時間にはDisruptの参加者専用にフードトラックが用意されていました。
会場の熱気とは違い、ベルリンの冬の外気は非常に冷たく、参加者の人々も震えながらフードトラックの列に並んでいました。
シリコンバレーのイベント等では昼食やスナック等は無料の場合がほとんどですが、他国のイベントでは自費の場合がほとんどの様です。
シリコンバレーの晴天の天気と比べると、身を切る様な寒さですが、それだけ世界中にスタートアップの盛り上がりが広がっていると思うと本当におもしろいですね!
初日のイベントの後にはベルリンの一番の名所と言える、ベルリンの壁から徒歩5分ほどの距離にあるナイトクラブにてAfter Partyが開催されました。ベルリンの中心部を流れる川を見ながらカクテルを飲むのは中々贅沢な時間です。DJも来ているので、ダンスをする事も可能です。スタートアップ関連のビッグカンファレンスではこの様にAfter Partyをする事が一般的でFacebookのシリコンバレーで開催される年に一度の最も重要なカンファレンス「F8」でもイベントの後にはクラブイベントが開催されています。
そして、TechCrunch Disrupt Berlin 2018はStartup Battlefieldの優勝者の発表とともに幕を閉じました。Startup Battlefieldの優勝者は世界中のメディアに取り上げられるので、今後一気にスタートアップがスケールする可能性を秘めています!
優勝者以外にもTechCrunchによる事前選考を通過したスタートアップばかりなので、どのスタートアップも将来がとても楽しみと言えます!
そんな注目のスタートアップの全てはこちらに記載しているので、ぜひチェックしてみてください!!
TechCrunch Disrupt Berlin 2018の様子はいかがだったでしょうか?
こういったスタートアップのカンファレンスに参加するとインターネットだけではキャッチアップしにくいスタートアップの動向やアーリーステージのスタートアップと出会う事が出来る事が伝わったのではないでしょうか?
RouteX Inc.ではこのような世界的なスタートアップのカンファレンスに常に情報のキャッチアップのために参加しています。お一人や企業の調査として単独で行くのは心配というご要望があれが、この様な世界中のスタートアップカンファレンスの現地アテンドも行いますので、お気軽にお問い合わせの方からご連絡ください!
みなさんのご要望に合わせて、世界中のスタートアップ系のカンファレンスから選定をしてご提案いたします !!
RouteX Inc.では、引き続きドイツのスタートアップとの連携を含めた現地調査を行っていきます!また、各国のスタートアップ環境についてもっと詳しく知りたい方もお気軽にお問い合わせください。海外のスタートアップとの連携やイノベーション拠点の調査依頼、海外アテンド依頼等も承ります。