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記事一覧 > 億万長者はシード投資によって寿命を伸ばす

「始皇帝」と号した古代中国秦王の政は、絶対的な富と権力を手に入れた後、不老不死を求めて、莫大な費用をかけて、あらゆる土地に霊薬を探しにいかせたとされています。

しかし科学技術が発展した現在では、億万長者が予防医療に力を入れているスタートアップに投資をすることで、その投資者だけではなく、そこのクリニックに通う人までもが、(不老不死までは行かなくとも、)寿命を相対的に伸ばそうとしています。

Zoī」は、パリに拠点を置く予防医療に特化した長寿クリニックを運営するスタートアップです。同社の顧客は富裕層が中心で、高額な会員費を支払う代わりに、全身の検査や健康維持のためのフォローアップを受けることができます。

今回はこの「Zoī」をはじめ、健康関連のスタートアップが富裕層からの注目を集める理由について、Siftedの記事を元に考察します。


「Zoī」が提供する360度チェックアップ

「Zoī」はパリに拠点を置く定期検診と予防医療に特化したスタートアップで、2021年に創業されました。当該クリニックでは、主に「360-degree check-up(360度チェックアップ)」と呼ばれる3時間にわたる一連の検査を提供しています。

このチェックアップには、血液検査、眼のスキャン、肺活量検査、腸内細菌叢分析など、多岐にわたる項目が含まれています。

引用:Zoī

「Zoī」の目的は、最大200のバイオマーカーに関する何百万ものデータポイントを収集し、それをAIモデルで分析することです。この分析結果をもとに、病気を予防し顧客の長期的な健康を改善するためのライフスタイル提案を行うことを約束しています。

同社の共同創業者であり、フランスのマクロン大統領の元特別顧問でもあるIsmaël Emélien氏は、「生命に年を加えるのではなく、年に生命を加えることが重要」と語っています。

また、「目標は、体の『取扱説明書』を学び、病気を予防し、人々がより長く健康に生きられるようにすること」だと、同社のビジョンを説明しています。


億万長者向けサービスの現状と展望

現在、「Zoī」の会員費は年間€3,600(約58.3万円)で、年1回のチェックアップとその後のフォローアップ提案が含まれています。この価格設定は、高級会員制クラブで、世界中のクリエイターが集う「Soho House」の会員費とほぼ同等であり、同社の顧客層が富裕層に集中していることを示しています。

クリニックは、世界的に有名なシェフ、Alain Ducasse氏が考案したスナックや、「日本の温泉」をモデルにしたバルネオセラピー(温泉療法)セクションなど、プレミアムなサービスを提供しています。

「Zoī」のCFOであるAntoine Attali氏は、長期的には同社のサービスを一般化し、価格を一般的なWiFi契約と同程度まで下げることを目指していると述べています。しかし、現時点では予防医療は上流階級の趣味の域を出ていません。

実際、「Zoī」の投資家はすべて個人投資家で、2022年に調達した€20M(約32.4億円)のシード資金には、Xavier Niel氏、Rodolphe Saadé氏、「Moderna」のCEO Stéphane Bancel氏など、著名な億万長者が多数含まれています。

(画像はイメージで、実際のサービスとは異なります)

長寿クリニック市場の展望と日本の場合

「Zoī」以外にも、億万長者が関与する長寿クリニックが登場しています。例えば、音楽サブスクリプションサービス「Spotify」の創業者Daniel Ek氏は、ストックホルムに「Sand Clinic」を設立し、全身チェックアップや各種治療を提供しています。同クリニックの会員費は月額€1,000(約16.2万円)から€10,000(約162.2万円)になると予想されています。

また、Ek氏は健康データ収集のための全身スキャナーを開発する「Neko Health」も設立しました。同社はストックホルムとロンドンにクリニックを持ち、ロンドンでは1時間のスキャンを£299(約5.6万円)で提供しています。

これらのサービスは、高額にもかかわらず人気を集めています。「Neko Health」は22,000人の待機リストがあると主張し、「Zoī」も現在約1,000人の会員がいると報告しています。

少し範囲を広げ、メディカルツーリズムについて考えてみても、その渡航者の多くを富裕層が占めています。彼らは高度な治療を目的としているだけではなく、高度な検査を受けることも目的としています。市場規模でみても、2022年時点の$97.3B(約14.0兆円)から、CAGR23.6%で、$337.0B(約48.3兆円)まで成長することが予想されています。

市場規模 年平均成長率(CAGR)グラフ | 医療ツーリズム市場レポート:治療タイプ別、地域別、2024-2032
引用:GlI

しかし、これらのスタートアップが提供する予防治療やメディカルツーリズムが大衆に届くようになるかどうかは未だ不透明です。高額なサービス料金、医療の専門性、規制の問題など、克服すべき課題は多く残されているほか、富裕層向けというマーケティングが、需給の双方からみて市場に刺さっているからこそ伸びていると考えることもできます。

日本でこのようなサービスを展開する場合を考えてみると、医療規制や保険制度との整合性、プライバシー保護の問題など、さらなる課題が予想されます。また、日本の医療文化や予防医学に対する認識の違いも考慮する必要があるでしょう。メディカルツーリズムについても、海外富裕層からメディカルツーリズムの目的地としての候補にも上がるようにはなっていますが、未だにインバウンド比率は15%程度で、他国と比べても低い水準です。

引用:厚生労働省

一方で、日本は世界有数の長寿国であり、予防医学への関心も高いことから、適切なアプローチと価格設定次第では、大きな市場が存在する可能性もあります。日本で同様の事業を検討する場合は、今後、これらの海外スタートアップの動向を注視しつつ、日本の文脈に合わせたサービスの可能性を探ることが重要となるでしょう。

参考記事:Billionaires’ body scans: Will longevity clinics ever hit the high-street?

※本記事には、AIが生成した文章、画像等が含まれています。


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投稿者:近藤 碧

京都大学経済学部経済経営学科在学(-2025.3)。ゼミではスタートアップの経営戦略に関するリサーチ・研究に取り組んでいる。2023年9月より、京都大学大学間学生交流協定に基づく交換留学生としてKoç Universityに派遣され、半年間トルコのイスタンブールに滞在した。2022年よりRouteXでインターンシップを開始し、業界リサーチから海外スタートアップの日本進出支援まで幅広い案件を担当。趣味は愛車のバイク(S1000RR ‘21)に乗ることであり、他大学のバイク部にも加入している。


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