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記事一覧 > 革新的な溺れ防止Tシャツを開発するFloatee

8月が終わり、暦では秋に入りましたが、まだ暑い日が続くことが予想されています。夏の暑い時期に好まれるレジャーとして海水浴や川遊び等があり、これらの需要もしばらくは高い状態が続くでしょう。

そうした水に関係するレジャーと切っても切り離せないのが、水難事故です。

そんな中、フランスのスタートアップ「Floatee」は、突然の水への落下に対して、溺れることを防ぐTシャツを開発しました。

本記事では、このTシャツの概要に加え、スタートアップによる海外展開の好例として、Maddynessの記事を元に考察します。


安全性と機能性を兼ね備えた画期的なTシャツ

「Floatee」はフランスのスタートアップで、UVカットと溺れることを防止する機能を備えた革新的なTシャツを開発しました。2014年に工科大学で2人の男性によって構想され、2021年に正式に設立されました。

この画期的なTシャツは、水に触れると自動的に膨らみ、着用者の背中を上にした状態で浮かばせる機能を持っています。開発には1年半の期間をかけ、100回以上のテストと50の試作品を経て完成しました。フランスにて救命胴衣と同等の認証を取得しており、安全性が保証されています。

Floatee: So funktioniert das Anti-Ertrinken T-Shirt
引用:startupmag「Floatee: So funktioniert das Anti-Ertrinken T-Shirt

「Floatee」の製品は、特に子どもの水難事故防止に大きな役割を果たすことが期待されています。共同創業者のPhilippe Rouvier氏は、「溺れる事例の80%は、子どもたちが海やプールのそばで遊んでいるときに起こる」と指摘しており、既存の浮力装置の限界を克服する新しいソリューションとしてこの製品を位置づけています。実際に彼らが「Floatee」の創業を決めたのも、フランス南部で溺死事故を目撃したことがきっかけであったと話しています。

「Floatee」は2023年にフランス国内での販売を開始し、初年度から高い注目を集めました。フランスきっての発明コンクールである「Le Concours Lépine」での金メダル獲得や、Made in France Expoでのイノベーション賞受賞など、各種の賞を受賞したことで知名度が一気に上昇しました。

現在、「Floatee」の製品は「Bébé neuf」や「Vertbaudet」などの子ども向け店舗、プール関連店舗、さらには「Monoprix」の50店舗で販売されています。2023年の売上は80万ユーロ(約1.3億円)を超え、初年度からプラスの収益を達成するという驚異的な成長を遂げました。


さらなるグローバル展開を目指す「Floatee」の挑戦

同社は急速な成長に伴い、従業員数も増加しています。設立時の3人から現在は12人まで増え、年末までには15人になる見込みです。

さらに「Floatee」は国際展開にも積極的です。現在、ドイツ、スイス、ベルギー、スペインですでに販売を開始しており、売上の20%を海外市場で達成しています。2024年7月には€2M(約3.24億円)の資金調達を完了し、さらなるグローバル展開を目指しています。

現在「Floatee」は、アメリカとブラジルという2つの大きな市場への進出を計画しています。特にアメリカは、1,000万個のプールを有する世界最大の市場であり、大きな潜在需要が期待されています。ただし、アメリカ市場での販売には新たな認証取得が必要であり、来年4月までの取得を目指している段階です。

またブラジルは世界第3位のプール市場であり、南半球に位置するため、北半球とは異なる季節サイクルを持つことから、年間を通じた安定した需要が見込めます。これにより、「Floatee」は季節性による売上の変動を平準化することができます。

「Floatee」は製品ラインの拡大も進めています。子ども向け製品に加えて、成人向けの2つの新製品を発売しました。水に触れると自動的に膨らむTシャツと、手動で膨らませるTシャツです。これにより、サーフィン、シュノーケリング、釣り、帆走など、幅広い水上活動を行う人々をターゲットにしています。


安全性と革新性の融合がもたらす可能性

「Floatee」の溺れ防止Tシャツは、安全性と日常的な着用の両立を実現した画期的な製品です。この製品が広く普及することで、水難事故の大幅な減少が期待できます。特に、長時間ライフジャケットを着用したがらない子どもたちにとって、Tシャツという親しみやすい形態は大きな利点となるでしょう。

データを見てみると、水難事故において、溺れたタイミングですぐに救助活動が行われることは全体の4割程度にとどまっており、半数近くは水難救助行動が行われなかったというデータも存在しています。

引用:河川財団「水難事故2024

「Floatee」のTシャツは水に誤って落下した際に作動するため、データの状況と必ずしも一致するわけではありません。一方で、例えば、川沿いでBBQをする場合などに、川に入る予定がないタイミングではこのTシャツを着用し、川に入る間だけライフジャケットを着用する等の工夫で、大幅に事故の可能性を減らすことができるでしょう。

「Floatee」のTシャツは、オンラインストアで€149(約24,000円)で販売されており、使い捨てのCO2カプセルを交換するだけで、子どもの成長に合わせてTシャツを交換しながら何度でも利用することができます。

引用:Floatee

現在この技術は、子ども向けがメインで、水に誤って落下した場合に限定されていますが、この技術を応用することで、他の衣類や装備品にも安全機能を組み込むことができるかもしれません。例えば、登山用のジャケットに雪崩対策の浮力機能を組み込むなど、様々なアウトドア活動の安全性向上に貢献する可能性があります。

日本での展開を考えた場合、自宅にプールがある家は多くありませんが、一方で水辺のレジャーが盛んな国として大きな潜在市場があると考えられます。ただし、日本の水辺環境や安全基準に合わせた製品開発や認証取得が必要になるでしょう。また、日本の消費者の好みや体型に合わせたデザインの調整も重要になると思われます。

ただし、そうしたポイントさえクリアすることができれば、日本に限らず多くの国に簡単に展開できるプロダクトであることは間違いないでしょう。一般に海外展開の障壁として、文化の相違や地理的距離などの様々な要因が挙げられますが、「Floatee」のTシャツのような製品は誰にでも理解がされやすいため、創業4年目の早い段階ながらも海外展開に成功することができたと考えられます。

「Floatee」の革新的な製品は、安全性と快適性を両立させた新しいアプローチとして、世界各国の水辺の安全文化に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。

参考記事:Les t-shirts anti-noyade de Floatee veulent traverser l’Atlantique

※本記事には、AIが生成した文章、画像等が含まれています。


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投稿者:近藤 碧

京都大学経済学部経済経営学科在学(-2025.3)。ゼミではスタートアップの経営戦略に関するリサーチ・研究に取り組んでいる。2023年9月より、京都大学大学間学生交流協定に基づく交換留学生としてKoç Universityに派遣され、半年間トルコのイスタンブールに滞在した。2022年よりRouteXでインターンシップを開始し、業界リサーチから海外スタートアップの日本進出支援まで幅広い案件を担当。趣味は愛車のバイク(S1000RR ‘21)に乗ることであり、他大学のバイク部にも加入している。


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