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記事一覧 > 日本の「2024年問題」を考えるー運輸・建設業界の人材不足に挑む欧州発スタートアップ

日本における「2024年問題」

皆様は「2024年問題」をご存知でしょうか?

日本では2024年より働き方改革関連法によって、運輸業および建設業への影響が懸念されています。これが通称「2024年問題」と呼ばれるものです。

この問題は、同法によって、自動車運転業務の年間時間外労働時間が960時間、建設業の年間時間外労働時間が月45時間・年360時間に制限されることで、運輸・運送業界と建設業界に生じる問題の総称です。

具体的には、運輸・運送業界では、人材不足等の理由によって、長距離輸送が困難になり、輸送能力が不足する可能性があります。建設業界では、工期の遅延や品質の低下、人件費の増加などの問題が懸念されています。

この問題を回避するため、両業界は労働時間の削減、生産性の向上、人材の確保などの対策に取り組んでいます。実際に、大手運輸会社では従業員待遇の改善や業務省人化を目的として平均7%の値上げの実施、大手建設会社では週休2日を確保できるように受注を絞り込む動きが始まっています。

欧州でも運輸業・建設業における人材不足を抱える

日本では法規制によって運輸・建設業における「人材不足」がクローズアップされましたが、欧州でも同様課題を抱えています。

INTERNATIONAL TRADE UNION CONFEDERATIONによると、建設業界においては2023年から2030年の間に、最大150万人の追加労働者が必要と指摘されています。IRUによると、運輸業界ではヨーロッパでは2026年までに200万人以上のドライバーが不足し、全貨物輸送の半分と数百万人の旅客輸送に影響を及ぼす可能性があると指摘されています。

ちなみに日本では、2028年には運輸業の従事者数は約27.8万人が不足すると予測されており、建設業でも、2030年には最大で6万人の建設技術者の不足が見込まれています。

欧州の運輸・建設業界で人材不足解消に挑むスタートアップたち

その中で、欧州では運輸業・建設業の人材不足解消に向けて、スタートアップが新たな技術やサービスの導入に取り組んでいます。そのアプローチは、大きく以下の2つに分類されます。

・自動化やロボット化による業務の省人化
・データやAIを活用した業務効率化

これから欧州スタートアップによる具体的な事例を、業界別に2社ずつ紹介していきます。

運輸業界

Einride

出典:Einride

Einrideはスウェーデンの貨物テクノロジー企業で、大型電気トラックによる自律型輸送ソリューションを提供しています。同社は2016年に設立され、2019年には公道で自律走行する電気貨物車を運行する世界初の企業となりました。現在同社は、スウェーデンと米国で大型電気トラックの大規模な車隊(フリート)を有しており、スウェーデンではLidl、Maersk、Oatlyといった業界大手と提携しています。

Cubyn

出典:Cubyn

Cubynは、e-コマース業者向けにフルフィルメントと配送のロジスティクスサービスを提供するフランスのスタートアップです。倉庫内の在庫管理を含むフルフィルメントプロセス全体をカバーする、「ファースト・マイル」ソリューションが特徴です。Cubynのサービスは、他社と比較して約30%安く、求めやすい価格で国境を越えた迅速な配送が可能となっています。2021年には、パリ地区に25,000平方メートルの自動物流センターを開設しており、運輸業界における労働不足の解消に貢献しています。

また、運輸業界スタートアップ2社は、サプライチェーン上では下記の箇所にプロットされます。ご参考ください。

西濃運輸株式会社を参考に弊社作成

建設業界

MX3D

MX3Dは、ワイヤーアーク積層造形(WAAM)を使用した3Dプリント技術に特化したロボットの開発する、オランダのスタートアップです。同社は産業用ロボットに専用のツールを装備し、それらを制御するソフトウェアを開発することで、大規模な金属オブジェクトの3Dプリントを可能にしています。同社が3Dプリントで製作した、アムステルダムのステンレス鋼橋は欧州委員会からSTARTS賞を受賞しました。

製作の過程が以下から見れますので、ぜひご覧ください。

Gravis Robotics

出典:DFAB

スイスのGravis Roboticsは、建設、鉱業、農業などの産業向けの自律型産業車両とプラットフォームを開発しています。同社は同業界に10年以上の経験を持ち、特に過酷な環境や危険地帯でも稼働可能なロボット掘削機を開発してきました。(動画をご覧ください)

顧客のニーズに応じた高度な遠隔操作、半自律型操作、完全自律型操作などの様々な状況に応じたソリューションを提供しています。この技術は、オペレーターの安全性を向上させるだけでなく、遠隔操作により移動も無くすことができるので、危険かつ長時間労働が強いられ土木業界の人材不足解消に貢献することが期待されます。

また、Gravis Roboticsは、信頼性の高いシステムを持つ重要なインフラストラクチャー向けのリーダーとして認められ、ESA BICスイスの支援を受けています。

また、建設業界スタートアップ2社は、サプライチェーン上では下記箇所にプロットされます。ご参考ください。

(一財)建設業振興基金を参考に弊社作成

まとめ

欧州のスタートアップによる取り組みは日本でも参考にできるものが多くあり、例えば3Dプリンターの活用は、既に日本でも行われています。例えば、兵庫県に本社を構えるSerendix株式会社は、3Dプリンターを活用して総施工時間24時間以内の住宅を作り、住宅建設における人的・金銭的コストを大幅に削減しています。

欧州の運輸業・建設業におけるスタートアップは、自動化やロボット化、データやAIの活用による、新たな技術やサービスの導入によって、人材不足解消・労働生産性の向上の取り組みを進めています。2024年問題に向けて、ひいては日本の人材不足に向けて、今回のスタートアップ紹介が課題解決の一助になれば幸いです。


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