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記事一覧 > 英国、欧州初の「培養肉」商業化へ

英国は、欧州で初めて「培養肉」の商業化に踏み切る国となりました。規制当局が動物細胞から作られたチキンをペットフードとして使用することを承認したことで、英国のスタートアップ「Meatly」は、今年中に培養されたチキンをメーカーに販売開始する予定です。

Meatlyは、動物用飼料を規制する動植物衛生庁と環境・食糧・農村地域省から規制当局の承認を受けました。

MeatlyのCEO/共同創業者のオーウェン・エンサー氏は、ブレグジットによりEU規制からの離脱が可能となったことと、前政権がバイオテクノロジーとイノベーションに重点を置いていたことが、英国での迅速な承認に繋がったと述べています。

引用:Meatly

ペットフードから始める培養肉市場

植物性肉製品が大豆やエンドウ豆タンパク質から作られるのに対し、培養肉は動物細胞を培養槽で育てて作られます。

英国ではまだ人間用の培養肉は承認されていませんが、イスラエル、シンガポール、米国では既に承認されています。

動物を愛し、動物虐待に反対するペットオーナーが、ペットに与える食事には比較的寛容であるという「動物愛好家のパラドックス」に対する需要が明確に存在するとエンサー氏は述べており、ペットフード市場が培養肉の良い出発点となるでしょう。

実際に、ウィンチェスター大学の調査によると、回答者の50%がペットに培養肉を与えると回答し、32%が自らもそれを食べると答えました。


培養肉の進展と反対意見

過去10年間で、農業による排出ガスへの懸念に応えるために、肉の代替品を作るスタートアップが大幅に増加しました。動物農業は地球温暖化ガスの最大5分の1を排出しており、UN環境計画によると、2050年までに肉の消費が最大50%増加すると予想されています。

その一方で、この技術が畜産業にとって脅威であると主張する人々も多数存在します。

イタリアやフランス、オーストリアなどの国々では培養肉に対する強い反対があり、米国のフロリダ州やアラバマ州では完全に禁止されています。エンサー氏は、食品の政治化が非常に危険であると指摘し、「培養肉はおそらく史上初めて健康や安全、倫理的な問題ではなく、政治的な理由で禁止された食品の一つかもしれません」と述べています。


Meatlyの今後の展望

Meatlyはこれまでに350万ポンドの資金を調達しており、今後3年間で産業規模に達することを目指しています。次の資金調達ラウンドではさらに500万ポンドの調達を見込んでいます。

主要な投資家にはインキュベーターのAgronomicsや、投資家のジム・メロン氏が含まれ、彼は同社の取締役会にも名を連ねています。また、元保守党の食料政策顧問ヘンリー・ディンブルビー氏も取締役に就任しています。

しかし、経済の見通しが不透明で、パンデミック前のブームの後に資金調達が減少していることから、培養肉スタートアップは成長に苦戦しています。2022年には9億2230万ドルだった培養肉とシーフード企業への投資が、2023年には2億2590万ドルに急減しています。

しかし英国が新たに承認を行ったことによって、新しい革新的な分野や食品技術においてリーダーシップを取ろうとしている姿勢は明らかです。今後の動きに目が離せません。

参考記事:The Verge : The UK will start feeding lab-grown meat to pets this year


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投稿者:Ray Watabe

上智大学国際教養学部を卒業し、International Business and Economicsを専攻。香港とニュージーランドでの多文化的背景を基に、インキュベーターサークルや投資サークルを設立。学生時代にスタートアップへの関心を深める。LVMHのStudent Ambassadorや、TEDxSophiaUniversityのオーガナイザーとしても活躍。高校からのフランス語の習得経験を活かし、大学卒業後はフランスに拠点を移す。現地で日仏ビジネスの架け橋としての役目を担うべく、その理念に賛同するRouteXに入社。


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