RouteX ✖︎ NTT DOCOMO Ventures
【Startup Academy #2】
フランス版MaaSとは!?
2021年2月16日(火)に、NTT DOCOMO Venturesとの共催にて、スタートアップアカデミー MaaS編の第2弾である、「フランス版MaaSとは!?」を開催しました!
今後大きな成長が見込まれるMaaS市場、注目されている方も多いのではないでしょうか?
今回は、MaaS市場が成長する理由を紐解くべく、フランスにあるChoose Paris RegionのDirector Mobility & Spaceとしてご活躍のRomain Erny様をお招きし、フランスにおけるMaaSに関連する法律(MaaS法)や、MaaS開発の取り組みなどについてご講演いただきました。
スタートアップアカデミーとは?
主にスタートアップの事業成長に必要となる、資金調達、マーケットリサーチ、法律関係等の様々なノウハウについて学ぶ場を提供させていただくイベントとなっております。
イベント概要
Romain Erny様は、モビリティと宇宙分野におけるイル・ド・フランス地域(*1)への進出に関するコンサルティングを主導されています。これまで本地域への進出と接続に関する10年以上の経験があるとともに、成長戦略・市場進出・官民連携において特に強みを持っていらっしゃいます。
また、交通輸送・宇宙産業・イノベーション・アントレプレナーシップ・フランスにおけるビジネスなど、さまざまなトピックにおける登壇経験があります。
まずは、イル・ド・フランス地域についてのご説明と、本地域で進行中のプロジェクトについてのご紹介をして頂きました。
現在、イル・ド・フランス地域にはフランスの人口の約20%が集中し、一日に延べ4300万人もの人が移動するため、大気汚染や交通渋滞といった社会問題が深刻化しています。
政府は、その解決策としてMaaSの活用を奨励しています。
具体的には、全自動で走行する新たな地下鉄路線の開発や電動モビリティ普及の支援を行っているとのことで、例えば、電動モビリティ分野では、2023年までに12,000の公共充電ステーションを設置や電動モビリティを購入する際の補助金を既に導入しています。
これらの例から、イル・ド・フランス地域がMaaS普及に全力で取り組んでいることがうかがえますね。
MaaSは前述した社会課題の解決へ貢献することに加え、
人々の移動をより簡便にする手段として機能するということを述べられました。
次に、フランスにおけるMaaS法(LOM)の概要と、具体的な施策についてお話をして頂きました。
MaaS法は2019年12月に採択され、以下3つの方針を柱としています。
①日常の交通に対して多額かつ最適な投資を実施し、市民間の交通格差を是正する
②車の所有に代替する新たなモビリティサービスの開発を促進・奨励する
③クリーンなモビリティへの移行に向けた取り組みを行う
具体的な施策としては、モビリティサービスの管理機関であるAOMの設置や、2040年までにガソリン車及びディーゼル車の販売を禁止することなどがハイライトとして挙げられています。
そして、MaaS開発に大きなインパクトを与える3つの条項についてご説明頂きました。
特に、オープンデータに関する第25条については、MaaS開発のために極めて重要な条項であると述べられていました。フランスでは既に、国家によって公共交通機関のデータが公開されており、民間による開発が促進されています!
また、第82条に記載のある「モビリティ・パッケージ」ついては、先進的でユニークな取り組みだと感じ、興味深く拝聴しました。
最後に、MaaS事業が抱える課題と、今後の展望についてお話を頂きました。
課題は、4つ挙げられていました。
その中から2つご紹介させていただきます。
「モビリティサービスの提供を集約」が難しいということです。マルチモーダルなMaaSプラットフォームの実現には必要不可欠な要素です。しかし、自社のサービスが顧客とのつながりを失い、切り離されてしまうことを懸念する交通サービス事業者も存在します。したがって、事業者間の交渉は容易ではなく、これはクリティカルな課題であると述べられていました。
「実行可能なビジネスモデルの発見」は、利益を獲得できるようなビジネスモデルが未だ確立していないということです。理由は、フランスでは車の所有コストも低く見積もられており、交通事業の収益性が低いためです。
MaaSにおいて、日本の遥か先を行くフランスでも課題は残っているようです。
今後の日本におけるMaas取り組みの参考になりますね。
最後に、欧州で今後成功するMaaSのモデルについてご説明していただきました。
こちらは1のみご紹介させて頂きます。
1つ目の「勝ち組が全てを勝ち取る」というのは、”The winner takes it all.” という英文でよくプラットフォーム系のスタートアップの文脈で用いられる言葉です。この言葉を真に受け止めるとするならば、欧州のMaaS業界にはいまだにThe Winnerがいないということです。GAFAはMaaSに必要なデータ(属性データや位置情報データなど)を多く持っていますが、独占禁止法やデジタル税の適用など、欧州ではかなりの逆風下にいます。
そのため、MaaSに必要なデータやアセットを取得し、かつ欧州にフィットする操業ができるスタートアップが現れれば、そのスタートアップはMaaS業界を牛耳ることが可能だということです。
Q&Aセッション
最後のQ&Aセッションでは、多くのご質問を頂き、非常に内容の濃い時間となりました
そのQ&Aの中から一部を抜粋してご紹介します。
(AはErny様の回答を要約し、記載しております。)
Q:日本ではオープンデータがない状態で、公共交通事業者の利益を最大化するためのMaaSが実装されるという流れがあります。オープンデータなしで、地域にとっての便益最大化や、公共性の担保は可能なのでしょうか。
A:オープンデータなしの包括的なMaaSの導入は難しいのではないかと考えます。オープンデータの取り組みについてのビジョンをフレームワークに落とし込んでいくプレイヤーが、民間なのか、それとも政府なのかという違いはあります。しかし、概念としてのオープンデータの導入がなければ、MaaSを実現することは難しいですし、そもそもそれはMaaSと呼べないのではないかと考えます。
最後に
今回のイベントでは、フランスにおけるMaaSについて、モビリティと宇宙分野におけるイル・ド・フランス地域への進出に関するコンサルティングを主導されているRomain Erny様からお話を頂ける貴重な機会でした。
フランスでは、MaaS法の制定や多岐にわたる支援施策が既に実行されており、MaaSが浸透した社会の確立への機運が高まっていることがわかりました。
一方で、実行可能なビジネスモデルが確立されていないなど、未だに課題が残っている現状も知ることができました。
日本でも、「2030年までにガソリン車販売禁止」が打ち出され、環境問題に対する意識は高まってきていることを実感できると思います。その勢いに拍車をかけるように、既にマイクロモビリティのシェアリングサービスが拡大していたり、空飛ぶタクシーの実証実験が予定されていたりと、MaaSに関する技術・ビジネスが芽を開かせようとしています。フランスの事例を参考にしながら、新たな枠組みやビジネスモデルの構築を創り上げていけたらいいですね!
引き続き、RouteXではNTT DOCOMO Venturesと共催で、イベントを開催させていただきます!ご興味がございましたら、ぜひお気軽にお越しください!
【お知らせ】
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