今回は、様々な大手企業が進出するロンドン郊外のビジネス地区・Canary Wharfと、これまで多くのFintechスタートアップを生み出してきたロンドンで最も著名なFintechハブの一つ、Level 39を紹介させていただきます!
ロンドンのスタートアップシーンは、主にロンドン中心部にあるOld Street地区を中心に繰り広げられていますが、Level 39はロンドン市が郊外の倉庫群だった地区を再開発したCanary Wharfに進出しています。
本記事では、BarclaysやHSBC・JP Morganといった金融大手をはじめ、EY・KPMG・Thomson Reutersなど、様々な大企業が集まる再開発地区・Canary Wharfと、その中に拠点を構えるFintechハブ・Level39について現地の様子をレポートさせていただきます!
目次
1. ロンドン郊外の再開発地区・Canary Wharfとは?
2. ロンドンで最も有名なFintechハブ・Level 39とは?
3. まとめ
1. ロンドン郊外の再開発地区・Canary Wharfとは?
現在Canary Wharfがある地区は、1800年代から西インド・ドックと呼ばれる商業埠頭がテムズ川に沿って形成されたことによって開発され、Canaryの名前は当時活発に貿易が行われていたカナリア諸島(現スペイン領)が由来となっています。
第二次世界大戦や、その後の港湾機能の移動による廃墟化を経て、1987年に老朽化が目立っていたロンドン最大の金融街・City of Londonに次ぐ金融地区を形成すべくプロジェクトが開始しました。
現在はCanary Wharf Groupが地区一体を管理し、国内外から金融大手をはじめとする様々な企業や商業施設の集まる、ヨーロッパ最大級の規模をもつビジネス地区となっています!
Canary Wharfまではロンドン中心部から、ロンドンの地下鉄Tubeを用いて約30分ほどの距離にありますが、3路線が周辺まで開通しており、非常に利便性も高い地域となっております。
では、このCanary Wharfに進出するロンドンで最も有名なテクノロジーコミュニティ・Level 39とはどのような施設なのでしょうか?
2. ロンドンで最も有名なFintechハブ・Level 39とは?
Level 39は2013年に、Canary Wharf内にあるロンドンで最も高い商業ビル・One Canada Squareの39階にオープンした施設となっており、主にFintechやサイバーセキュリティといった分野のスタートアップを中心としたインキュベーションやアクセラレーション、また大企業や投資家との協業の場としてオープンしました!
地区一体を管理するCanary Wharf Groupは今なお積極的な地域開発をおこなっていますが、そのポートフォリオの一つにLevel 39の拡充が含まれていることからも、Level 39およびロンドンのスタートアップの将来性に注目が集まっていることがわかります。
ロンドンで最も有名なテクノロジーコミュニティ
また、2018年には11.4億ポンドを生み出した、ヨーロッパで最も発展したスタートアップエコシステムをもつロンドンにおいて、Level 39は最も有名なテクノロジーコミュニティであるとこちらの記事では評価されています!
こちらがLevel 39オフィシャルの紹介動画になります!
現在、80,000m2のフロアに48の国籍、1250人のスタートアップの方々が入居しているようです。またその分野はFintechを中心にCybersecurity、Insurance、Blockchain等多岐に渡っています。
そして、AlumniとしてCybersecurityサービスを提供するDigital Shadowsや、海外決済・送金サービスのFintech企業・Revolutといった世界中に展開する著名な企業を輩出しています!
特にRevolutは2015年に創業してから急速に発展し、現在では29の法定通貨や仮想通貨を取り扱うことができ、1000万人以上の利用者、35億回の取引実績をもつユニコーンとして、世界でも注目されているFintechスタートアップです。日本への展開も検討されており、すでに日本語のページも登場しております!
Revolutは2018年に本社をCanary Wharf内のColumbus Buildingに移転したようです。このように歴史のある大企業とユニコーン、アーリーステージのスタートアップが共存する地域を形成していることから、今後より一層Canary Wharf一帯のスタートアップエコシステムが発展するのではないかという期待がもたれます!
爆発的な成長を目指すスタートアップが入居するHigh Growth Space
現在Level 39はOne Canada Squareの39階のみならず、24階と42階にまで拡充されていますが、これらのフロアはHigh Growth Spaceという、急速な成長を目指すスタートアップが入居するスペースが設置されています。こちらは従業員数が8〜30人と、通常のスペースに入居するスタートアップ(2~8人)より先のステージのスタートアップ向けとなっており、Level 39が実施するイベント参加やメンタリング、投資家とのセッションや教育カリキュラム等のサービスを引き続き受けることができるようです。
RevolutはこのHigh Growth Spaceから羽ばたき、ユニコーンへの道を歩んでいきました!
Level 39に入居するメリットとは?
スタートアップがLevel 39に入居するメリットとして、以下の4点が考えられます。
①Canary Wharfの立地の優位性
前述の通り、Level 39のあるCanary Wharfには国内外から様々な金融大手やコンサルティング・情報報道企業がオフィスを構えている他、そのような企業がLevel 39に実際に籍を置いてオープンイノベーションを加速させる動きを見せています。そのため、革新的な技術やビジネスモデルを持つアーリーステージのスタートアップが、出資先や協業先を見つける際に有効な機会を効率的に獲得することができると考えられます。
②Level 39独自のコミュニティ
Level 39ではスタートアップを成長させるためのカリキュラムが設定されているだけではなく、毎月様々なイベントが開催されているようです。このようなイベントを通じて、Level 39内での横のつながりや、外とのつながりをスタートアップは得ることができるのではないでしょうか。
③確立された対外的なブランドネーム
ヨーロッパで最も早く発展したロンドンのスタートアップエコシステムにおいて、Level 39は2012年にできた比較的古いコミュニティの一つであり、実際にユニコーンを生み出した実績もあるため、ロンドンでは最も有名なコミュニティの一つだと国内外から認識されています。そのためスタートアップにとってはLevel 39に入居していることが一つのブランドとして優位に働く可能性があります。
④大企業を下に見下ろすことができる
こちらは直接的なメリットではありませんが、Level 39はロンドンで最も高いビルに入居しているため、外からはCanary Wharfの他の大企業のオフィスを、そして遠くにはテムズ川に沿って広がるロンドンの街並みを見下ろすことができます。世界的企業でさえ下に見ながら世界へ羽ばたくサービスをここから生み出すという、精神的な充足をLevel 39はスタートアップに与えているようです!
Level 39内での活動方法
Level 39に入るためにはこのようにOne Canada Squareのゲートを通らなければいけないため、実際に中で活動する際には、入居するスタートアップとのアポイントメントをとる他、以下の方法をとる必要があります。
・Level 39のメンバーとして登録する
現在Level 39ではスペースの種類ごとに以下のMembership Typeがあるようです。
Hot-Desk(£400/month): オープンシェアスペースデスクの提供
Fixed-Desk(£650/month): デスクスペース保証での提供
Office-Space(£700~/month): 個室の提供(Level 39 or High Growth Space)
上記を選択した後、個人と企業のプロフィールを記入して応募することでLevel 39のメンバーとして活動することが可能です。
・Level 39オフィシャルのイベントに参加する
上述の通り、Level 39では毎月様々なイベントが実施されており、その分野や種類は多岐に渡っています。中には大企業主催のアクセラレーションに関連するイベントや勉強会をかねたワークショップ等も実施されていますので、ご興味のある方は定期的にサイトの方を確認すると良いかもしれません。
3. まとめ
いかがでしたでしょうか。
ヨーロッパで最も規模の大きいスタートアップエコシステムを持つロンドンにおいて、Fintech領域を中心に成長を続けるテクノロジーコミュニティ・Level39を中心に、Canary Wharfから今後どのようなイノベーションが起こるのか、これからも目が離せません。
RouteXでは今後ヨーロッパのエコシステム調査に注力し、現地での最新情報を随時発信させていただく予定です。
また、ヨーロッパの現地アテンドやカンファレンスに合わせた研修・ビジネスツアー、進出支援等も行っておりますのでお気軽にお問い合わせください。