米フィンテック企業が英国市場で攻勢を強化
2024年9月、アメリカ発の「Robinhood」が英国市場において新たな株式貸し出しサービスを開始しました。今年3月に同社が英国で正式にサービスをローンチして以来、初の大規模な新製品です。「Robinhood」は手数料無料での取引を提供し、6,000銘柄以上の取引の際に手数料無料、外貨為替手数料もかからないことを売りにしています。
今回の株式貸し出しサービス(securities lending)は、ユーザーが保有する株式を他の投資家や企業に貸し出すことで、受け取る利息によって収益を得る仕組みです。米国ではすでに提供されており、英国市場でも多くの顧客からの要望を受けてのリリースとなりました。まるで「Airbnb」のように保有している株式を貸し出すことができ、月々の受け取り利息を通じて「パッシブ・インカム」(受動的所得)を得ることが可能です。
株式貸し出しを行う企業側は借りた株式を担保として使用したり、規制に基づく義務を果たしたりするために利用することが多く、また借りた株式を売却する「空売り」にも利用されることがあります。「Robinhood」はこの取引に対して仲介手数料を徴収します。
株式貸し出しサービスの導入背景
「Robinhood」の株式貸し出しサービスは特に金融リテラシーを持つ個人投資家に向けた新しい投資手段として注目されています。
英国でのサービス開始後、同社のユーザーは少なくとも£5,000(約900万円)の資産がある場合、この株式貸し出しサービスを利用できるようになります。貸し出された株式は、貸し出し中でも売却可能なため、ユーザーは流動性を損なうことなく、追加の収益を得られる点が特徴です。
この新製品は、同社のグローバル戦略の一環として導入されたものであり、個人投資家により多くの選択肢を提供することが目的です。「Robinhood」英国支社長のジョーダン・シンクレア氏は、「英国の顧客に投資資産を働かせ、パッシブ・インカムを得る新たな方法を提供することで、金融システムへのアクセスをより一層拡大していくことに興奮している」と述べています。
新サービスがもたらす影響と課題
「Robinhood」が提供する株式貸し出しサービスは、新しい投資機会を提供する一方で、いくつかの課題も存在します。まず、貸し出す株式が配当を支払う場合、ユーザーは配当相当の現金を受け取ることになりますが、その場合税金が高くなる可能性があり、投資家の税務面での負担が増えるリスクがあります。また、貸し出し中は株式の議決権が失われるため、企業の意思決定に参加する権利を放棄することになります。
さらに、株式貸し出し自体には市場リスクも伴います。例えば、貸し出された株式が空売りに使われた場合、その株価が下がる可能性があり、自身の保有する株式の価値が下がるリスクも考えられます。加えて、英国ではこのような新しいサービスがまだ普及段階にあり、顧客が十分に理解しないまま利用することで、想定外の損失が発生するリスクも排除できません。
新たな市場にこのようなサービスが導入される際には、顧客が適切にリスクを理解し、利用するための教育やサポートが重要になるでしょう。
参考記事:https://tech.eu/2024/09/04/robinhood-amps-up-uk-offensive-with-stock-lending-offer/
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