行動科学を活用し、人的要因による余剰排出を削減
「Signol」は、行動科学とAIを活用して航空・海運業界の排出量削減に取り組む英国のスタートアップです。同社は最近、業界をリードする投資家から250万ポンド(約4.6億円)の資金調達に成功しました。
「Signol」のソフトウェアは、人的ミスによって生じる余剰排出を特定し、従業員の行動変容を促すことで、燃料消費量と二酸化炭素排出量の削減を実現します。
今回の資金調達は、ニューヨークを拠点とするベンチャーキャピタルTMVが主導し、グローバルな船舶運航会社Ultranavや日本の海運大手である商船三井(MOL)のベンチャー部門MOL PLUSも参加しました。また、前回のラウンドをリードしたロンドンのベンチャーキャピタルEast Innovateも再投資を行っています。
「Signol」のソリューションは、既存の船舶や航空機に物理的な変更を加えることなく、人間の意思決定を最適化することで排出量削減を実現しています。同社の発表によると、これまでに航空・海運業界において10万トン以上のCO2削減に貢献しており、具体的には航空分野で最大1%、海運分野で最大12%の燃料消費量削減を達成しています。
TMVの共同創業者兼ゼネラルパートナーのMarina Hadjipateras氏は、「海運業界の全体市場規模は1,520億ドル(約22兆円)を超え、世界の貨物輸送の90%を担っています。「Signol」は人間の力を活用して、より持続可能な実践に向けて運用行動と文化を変革しています」と述べています。
Ultranavの経営陣の一人であるPer Lange氏は、「40年以上の海運キャリアを通じて、乗組員の業務量やメンタルストレスを増やすことなく、効率化の取り組みに適切に関与してもらうことが必ずしも容易ではないことを実感してきました。行動科学に強固な基盤を持つ「Signol」のソリューションは、乗組員が可能な限りサステナビリティ目標に貢献できるようにすると同時に、重要な労働力である彼らの日々の海上での経験を向上させることができます」とコメントしています。
「Signol」が取り組む新たな挑戦
「Signol」は今回の資金調達を受けて、航空・海運業界におけるソリューションの強化と商業的な展開に注力する予定です。さらに、企業の出張による回避可能な排出量削減を目的として、ビジネストラベル分野での実証実験(POC)も計画しています。
同社はまた、AIをさらに活用して個人が可能な限り効率的かつ効果的に業務を遂行できるよう支援する方法も模索しています。このAIの活用により、人間の意思決定の可能性を最大化し、人的労働力の価値を高めることが期待されています。
「Signol」のCEOであるMichael Fanning氏は、「UltranavやMOLのような業界をリードする企業からの投資獲得は、私たちの人間を中心とした解決策が企業のサステナビリティ戦略における重要な要素として認識されていることを示す大きな裏付けです」と述べています。
日本企業への示唆:人間とAIの協調による持続可能な未来へ
「Signol」の取り組みは、日本の航空・海運業界にも重要な示唆を与えています。
特に、人間の行動変容とAI技術を組み合わせた課題は、日本企業が直面する労働力不足や環境規制の厳格化といった課題に対する新たな解決策となる可能性があります。
日本の企業文化に根付いた「伝統」を重んじる精神は文化を守る上で大切ですが、最新のAI技術を融合させることで、より効果的かつ持続可能な排出量削減策を実現できるかもしれません。
また、「Signol」のように従業員のストレスを増やすことなく効率化を図る動きは、日本企業が推進するワークライフバランスの向上にも役立つ日も近いのではないでしょうか。
参考記事
TechEU | Sustainability startup Signol raises £2.5M to reduce aviation emissions
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