「Phasecraft」は、2019年にUniversity College LondonとUniversity of Bristolのスピンアウトとして設立された英国の量子コンピューティング・スタートアップです。
これまでに£17.5m(約32億円)の資金調達に成功し、量子コンピューティング分野における英国のリーディングカンパニーとして注目を集めています。
同社の共同創業者であるAshley Montanaro氏は、量子コンピューティングが極めて専門性の高い分野であり、世界中でわずか数百人程度しか彼らの求める人材がいないと指摘しています。
そのような状況下で、「Phasecraft」は着実に成長を遂げ、最近ではワシントンDCに米国オフィスを開設。
Amazon出身の著名な研究者Steve Flammia教授を迎え入れるなど、グローバルな展開を加速させています。
政府の技術支援政策に警鐘を鳴らす
しかし、「Phasecraft」は現在、英国政府の技術支援政策に対して強い懸念を表明しています。
新たに発足した労働党政府が、前保守党政府が約束していた£1.3b(約2,108億円)のテクノロジーおよびAIプロジェクト向け資金を棚上げにする可能性があるという報道を受け、Montanaro氏は次のように警告しています。
「資金提供の安定性と、一度発表された資金が確実に利用可能であるという信頼性は、我々のようなビジネスにとって非常に重要です。もし英国が量子コンピューティングにおける絶対的な世界のリーダーであり続けたいのであれば、政府による何らかの支援が必要になるでしょう。」
Montanaro氏は、政府の支援が不十分な場合、「Phasecraft」のような企業が海外投資にシフトする可能性を示唆しています。
実際に同社は、すでに米国オフィスの設立を通じて国際展開を始めており、今後数年間でヨーロッパやオーストラリアにも新たなオフィスを開設する計画があるとのことです。
日本の量子コンピューティング戦略への示唆
日本においても、量子コンピューティングは国家戦略上重要な分野として認識されつつあります。
しかし、英国の事例が警鐘を鳴らしているように、政権交代や財政事情による支援の変動は、長期的な技術開発と国際競争力に深刻な影響を与える可能性があります。
「Phasecraft」の事例が示すように、スタートアップの成功は政府の支援と密接に関連しています。
日本も、グローバルな視点を持ちながら、スタートアップ支援を強化し、国際競争力を高めていく必要があります。
これは単に一企業の成功にとどまらず、日本の技術立国としての地位を確固たるものにする重要な戦略となるでしょう。
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投稿者:Ray Watabe
上智大学国際教養学部を卒業し、International Business and Economicsを専攻。香港とニュージーランドでの多文化的背景を基に、インキュベーターサークルや投資サークルを設立。学生時代にスタートアップへの関心を深める。LVMHのStudent Ambassadorや、TEDxSophiaUniversityのオーガナイザーとしても活躍。高校からのフランス語の習得経験を活かし、大学卒業後はフランスに拠点を移す。現地で日仏ビジネスの架け橋としての役目を担うべく、その理念に賛同するRouteXに入社。
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