はじめに

「Sustainability(持続可能性)」という概念は、地球上の社会面と環境面を重視しつつ経済活動を持続可能な形で発展させるために用いられてきました。日本でもSustainable Development Goals (SDGs)の行動目標が浸透してきたため、1987年の「環境と開発に関する世界委員会」で初めて公表された時より認知度は上がっている印象を持ちます。

また毎年世界の投資家と日本の投資家の意識調査を行なっているSchroders Investment Managementの、2023年の意識調査を比較すると、日本の投資家は57%の人が「環境に対してサステナブル投資によるプラスの影響が期待できる」と答えており、世界の投資家より期待している人の割合が大きいことがわかります。（図1、図2）

2022年に実施された意識調査では42%の日本人投資家しか環境にプラスの影響を期待しておらず、約36%が高いリターンを見込めないことを懸念していました。2022年にフィデリティ投信が行なった調査では「環境問題に日本人の関心が高まっているという心強い傾向が見られる一方で、投資行動には必ずしも結びついていない」と指摘されていましたが、2023年の意識調査の結果から、日本人のサステイナビリティ投資への意識や認識は大きな変革期にあるといえるでしょう。

このように日本人が最近注目し始めたサステナビリティ投資ですが、世界ではすでに持続可能な社会を目指したスタートアップが数々と生まれており、それを支援する組織もすでに多数存在しています。

欧州はとりわけ環境問題に対しての感度が高く、数多くの組織が拠点を構えており、最新の持続可能なトレンドは欧州から輩出されている傾向にあります。そんな欧州を代表するアクセラレーターの一つ「Techstars Sustainability Paris Accelerator」が、パリに拠点を構えています。今回我々は、2023年12月7日にパリにて行われた、本アクセラレーターが主催するTechstars Sustainability Paris Summit 2023に参加してきました。

Techstarsとは

Techstarsは世界最大級のプレシードインベスターです。本社をアメリカのコロラド州に構え、37,00社以上のスタートアップをアクセラレーションプログラムに迎え入れ、13カ国36都市で活動しています。(2024年1月現在）

つい最近の2023年12月には、経済産業省及び東京都とジェトロの協力の元、Techstarsを東京に誘致し、エクイティ方式（出資付き）のスタートアップ・アクセラレーションプログラム「Techstars Tokyo」を開催することが決定しました。すでに現在第一回プログラムの募集を開始しており、2024年夏から3ヶ月間に渡ってプログラムが実施される予定です。

Techstars Sustainability Paris 

Techstars Sustainability Parisは、2022年にTechstarsがインパクト投資の旗艦店としてパリに立ち上げた支社です。気候変動や汚染、貧困など、世界の最も差し迫った課題に取り組むことにコミットしており、他の支社と同様にアーリーステージのハイグローススタートアップを育成することに焦点を当てています。

Techstars Sustainability Parisは、「テクノロジーでより良い未来を創造すること」に情熱を持つ創業者への投資とサポートに専念しており、パリ支社の国際的な立ち位置を活かし、影響力のあるスタートアップの輩出を支援するために活動してきました。

この二年間で約1,000万ユーロを48社へ投資しており、そのうち33％がフランス国内、30％がヨーロッパ（フランス除く）、残りの37％が世界の他の地域に位置しています。またポートフォリオの支援されたスタートアップは、プログラムの12ヶ月後には、平均して100万ユーロを調達しています。

フランスは次世代のグリーンユニコーンを生み出す努力をしており、その過程でフランスのエコシステムの国際化を促進し、グローバルな経済圏との連携を強化する必要があると推測されます。そのためTechstars Sustainablity Parisは、Techstarsが保有するグローバルなメンターや投資家、ビジネスパートナーのネットワークを通じて、ポートフォリオの企業が次のレベルに進むための支援を行い、早期にグローバルで主要なプレイヤーとなるように活動しています。

イベント解説

今回我々が参加した、開催二度目となるTechstars Sustainability Parisでは、Climate Techにおけるフランスの魅力を、スタートアップ目線、投資家目線で盛んにPRされていました。

場所はパリのパレ・ロワイヤルのすぐ横のRue de Valois。

建物内に入ると受付があり、さらには豪華なウェルカムドリンク/スナックが提供されています。

参加登録者数は述べ500人を超え、そのうち150人は名だたるベンチャーキャピタルの投資家でした。奥には投資家用のラウンジが用意されており、投資家同士の交流の場となっていました。様々なVCから投資家が集まっており、Serena Capital、OSS Ventures, Wind Capital、IRIS Captal、Ring Capital等々。それぞれが独自の知見をもとに登壇するスタートアップに期待を膨らませ、議論を交わしていました。

今回も我々はプレスパスを取得し、現地に潜入。すでにたくさんの人々がスタンバイしていましたが、時間が経つごとに数倍の数に。

開会の挨拶としてManaging DirectorのRaphaele Leyendecker氏が登壇し、Techstars Sustainability Parisの紹介が行われました。特に興味深かったのは、Techstars Sustainability Parisから見たフランスの魅力についてで、起業家視点、外国のVC視点、そしてClimateTech領域からみたフランスの独自性について言及されていた点です。

はじめに起業家視点では、サーキュラーエコノミーや環境に関する最先端の法規制、大規模で国際的なグループの存在、そして欧州市場への良い入り口となっていることが利点として挙げられました。規制に対しては、小回りがきくスタートアップは比較的課題解決に取り組みやすく、先進的な法規制が施行されるフランスは起業家にとってはビジネスチャンスが生まれやすいと指摘されました。またエコシステムを後押しする多くの国際的な企業や機関がフランスを拠点にしているため、様々な情報やリソースがパリをハブに出入りします。そのため、スタートアップにとっては、世界へと進出する機会が他国より大きいと言えるでしょう。

一方、外国（特に米国）のVCはフランスのスタートアップへの投資に興味は持っていますが、言語の壁やフレンチテック・エコシステムの複雑さがハードルとなり、フランスのスタートアップは理解しにくいものとなっています。例えばフランスのスタートアップは、フランス市場で事業を成長させたのちに、ドイツや英国に進出する傾向があります。ですがスウェーデンのスタートアップなどは、すぐに世界展開をする場合が多く、国際的にもこちらが一般的です。そのため、断片化されていないグローバル市場へ早く展開させたいVCなどからするとフランスのスタートアップは特殊と捉えられるようです。

最後に、ClimateTech分野において、ヨーロッパはアメリカよりも進んでいるとされていますが、フランスは他の国々、特にイギリスやドイツのような国々との競争に直面していることをお話しされました。

ClimateTechに特化したVCは欧州に数多く存在し、例えばドイツのWorld Fund、イギリスのZero Carbon Capitalや2150 VC、スウェーデンのPale Blue Dotなどが挙げられます。その中でフランスはEurazeoやBPI Franceのような成長段階のスタートアップに投資をするVCや、Partech、Elaia、X AngeなどのアーリーステージのClimateTechに着目したVCが多く、これから日の目を浴びるスタートアップの育成に力を注いでいることが伺えます。

また、フランスでは、France DeeptechによるDeep Techコミュニティの発足などの動きもあるため、向こう数年の間に、フランスがイギリスやドイツを超える日が来るかもしれません。

イベントではTechstars Sustaibability Parisのアクセラレーションプログラムに新たに参加するスタートアップと、2023年9月にプログラムを卒業したスタートアップによるピッチが行われました。

Panel I – Electrification

低炭素経済への移行に向け、電気自動車やエネルギーのセクターに大きく関わってくる「電化」に取り組んでいるスタートアップを紹介します。

Pelikan Mobility

拠点：フランス
創業：2022年

Pelikan Mobilityは、商用車の低炭素化を実現するために、デジタルツイン技術と最適化アルゴリズムを活用し、特定のフリートに合わせたコスト効率の良い、生産性の高い電気自動車（EV）のリースソリューションを提供するスタートアップです。同社のプラットフォームは、フリートが財務的および環境的な投資収益率（ROI）を最適化し、効率的に規模を拡大できるように支援しています。EVの効率的な運用に重点を置くことで、Pelikan Mobilityはエコフレンドリーな交通ソリューションへの移行をスムーズにできるようにしています。

BiB Batteries

拠点：フランス
創業：2021年

Bib Batteriesは、電気自動車のバッテリーのライフサイクルを管理し、カーボンフットプリントを減らすことに特化したスタートアップです。同社はフリートオペレーター向けのデータ駆動型プラットフォームを提供し、eスクーターから車までバッテリーの包括的な監視と管理を行います。

修理を提案すことで寿命を延ばし、リサイクルや再利用のような持続可能な製品のエンドオブライフオプションをサポートすることで、バッテリーの持続可能性を高めます。Bib Batteriesは、EVフリート、シェアードモビリティ、Urban Logisticsの分野に焦点を当て、これらのセクターの持続可能性をより高めることに貢献しています​​​​。

BioEsol

拠点：メキシコ
創業：2021年

BioEsolは、企業向けのエネルギーインテリジェンスソフトウェアおよびAI駆動のエネルギー貯蔵システムを開発しています。BioEsolは、「エネルギー・アズ・ア・サービス（EaaS）」モデルを通じて、企業が自社の運用を再生可能エネルギーソリューションに依存できることを証明するべく活動しています。クライアントに応じて別のプランを提供しており、メインの電力が弱まった時用に予備の再生可能エネルギーを提供するBackup System、電気のピーク消費を平準化しすることで最大需要時の電力購入量を減らし、電気供給を効率的かつ持続可能に管理するPeak Shaving System、そして自らエネルギーを生産、貯蔵、分配する自律型クリーン・エネルギー・システムと、生産したエネルギーを貯蔵するバッテリーを提供するIsolated Renewable Energy Systemの三つが有ります。

HelioRec

拠点：フランス
創業：2019年

HelioRecは、最先端の浮体式太陽光発電技術を利用してクリーンな電力を生成しています。これまで発電をするために陸地のスペースが取られていたのが、これからは水上に発電スペースを作れるため、沖合いの太陽光技術の発電コスト（LCOE）を削減することに注力しています。同社の浮体式太陽光システムは、安定性を高める特許取得済みのハイドロロックが搭載されており、金属やコンクリートなどの高価なバラスト材料が不要になる点が特長です。

Sustainable Consumption

次に持続可能な消費に取り組んでいるスタートアップを紹介します。

Circular Place

拠点：フランス
創業：2021年

CircularPlaceは、商品や機器の再販、寄付、リサイクルを可能にする包括的なプラットフォームを提供し、企業のCSR活動への参加を促進するスタートアップです。4つの持続可能な開発目標（貧困をなくそう、つくる責任・使う責任、気候変動に具体的な対策を、パートナーシップで目標を達成しよう）に貢献します。

ADEMEと共同開発したカーボンフットプリントインパクト計算ツールは、リサイクルや再販によって新たな用途を得た製品によるCO2の影響を計測し、製品の破棄による地球温暖化への全体的な影響を明らかにし、それらを軽減することを目指しています。また、5年以内にCircularPlaceによって避けられたCO2の影響を具体的な数字として提供することも目指しています。

Kumulus

拠点：フランス
創業：2021

Kumulusは、アフリカと中東の市場をターゲットに水生産技術を展開するウォーターテックのスタートアップです。この企業は、空気中の湿気を利用して飲料水を生産する機械と、その水の生産を監視・制御するソフトウェアの組み合わせを提供しています。2022年には、プレシードラウンドで100万ドルの資金調達を完了しました。

さらに、KumulusはSTATION Fのトップ40スタートアップおよびVivaTech2023/WorldBankコンペティションにおいて、アフリカの最も有望なグリーンテック企業トップ3に選ばれるなど、業界での注目度も急上昇しています。

SustainSoft

拠点：フランス
創業：2022

SustainSoftは、提案依頼書（RFPs）でのESGデータ要求に対処する中小企業向けのSaaSソリューションを提供するスタートアップです。このプラットフォームはESGワークフロー全体を効率化します。高価なコンサルタントや手動のExcelプロセスを経ることなく、ESGデータをアウトプットすることが可能です。

具体的には、関連する指標を特定し、データソースを統合し、ステークホルダーに合わせたESGデータを自動的に提供します。これにより中小企業は規制遵守をしつつ、投資家からの問い合わせへの対応も迅速に行うことができ、従業員や顧客からの期待の変化に対応することができます。

Iroko Analytics 

拠点：アメリカ
創業：2022

Iroko Analyticsは、アフリカの熱帯雨林でカーボンオフセットと生物多様性の保護を目指したプロジェクトを開発しています。同社は環境インテリジェンスとして、コンゴ盆地を大陸の植林とカーボンオフセットの中心地に位置付けようとしています。Iroko Analyticsは、政府、民間セクター、そして環境に配慮した投資家に対して、影響力のある投資に必要な分析情報を提供し、持続可能な発展と環境保護の重要な役割を担っています。

FINDS

拠点：フランス
創業：2020

FINDSは、ファッション業界における売れ残りの衣料品在庫へのソリューションとして、データドリブンなアップサイクリングプラットフォームを提供しています。このプラットフォームは、ファッションブランドが未販売の衣料から生地を取り出し、新製品に簡単に統合できるよう支援することで、従来の解繊や化学処理、機械的変換といった工程を不要にしています。

FINDSのアプローチにより、ファッションブランドは未売品のうち少なくとも30％を新しい製品に再利用することが可能になり、ファッションエコシステムにおける循環性の開拓に貢献しています。

Techstars Sustainability Paris Portfolio Companies – Class of September 2023

次にTechstars Sustainability Parisの2023年9月に卒業したスタートアップを紹介します。

Energy and Transportation

Stackease Energy (France)

拠点：フランス
創業：2023

StackEaseは、機械学習を活用した大規模バッテリー貯蔵システムの収益最適化と寿命延長の事業を展開するフランス国立情報学自動制御研究所のスピンオフスタートアップです。StackEaseの一つの特徴として、単なる収益最適化だけにとどまらず、バッテリーの劣化を考慮したエネルギー貯蔵の長期的な持続可能性を重視している点が挙げられます。5年以内の目標として、クリーンで貯蔵された再生可能エネルギーの利用増加による炭素排出の削減を測定し、その影響を定量化することを掲げています。

MinersAI (US) – 

拠点：アメリカ・ベルギー
創業：2023年

MinersAIは、エネルギー移行に必要な重要鉱物の安定供給を目指すスタートアップです。同社はデータ分析とAIツールを備えたプラットフォームを通じて地質データへのアクセスを容易にし、鉱物資源の発見と開発を効率化することに重点を置いています。また、環境に配慮した取り組みとして、自社の排出量の追跡と削減にも注力しています。MinersAIの目標として、地質データの効率的な検索や分析から、購入や販売のための主要なプラットフォームとマーケットプレイスになることを掲げています。

Propellane (France)

拠点：フランス
創業：2022年

Propellaneは、化石ガスに依存する産業に革命をもたらす電気加熱システムを提供するスタートアップです。従来の加熱方法と比べ、このシステムはCO2およびNOx排出量を5倍削減する効率性を実現します。電気料金が安い夜間や、風力や太陽光などの再生可能エネルギーが電力網に過剰に供給されている時に、新型電気式高温ヒートポンプを使用することで熱エネルギーの形で暖房と冷房を作り出し、別々に蓄えます。特殊な低GWの冷媒を使用し、熱交換器を通じて熱を低温リザーバーから高温リザーバーに移動させることで、エネルギー使用を最適化し、環境への影響を大幅に減らすことが可能になります。特に、電気加熱が化石ガスよりも高価な現状において、Propellaneのソリューションはコストの面で化石ガスと同等を実現しており、産業界は競争力を維持しつつ、環境負荷の軽減を図ることが可能になります。

Mc Ledger (France) 

拠点：フランス
創業：2017年

MCLedgerは、陸上貨物輸送の脱炭素化を推進するSaaSプラットフォームです。同社は、トラックによる輸送を減らし、鉄道や河川輸送などの環境に優しい手段への移行を目指しています。特に、列車やバスの空きスペースを利用し、急送貨物の輸送に選択肢を増やすことで、CO2排出量を大幅に削減することを目標としています。

Greenfluidics

拠点：メキシコ
創業：2017

Greenfluidicsは、藻類と太陽光発電を組み合わせたバイオパネルを開発、提供するスタートアップです。このバイオパネルを建物の壁に貼り付けることで、ファサードを、「二酸化炭素を吸収し酸素と電気を生成する生きた物体」に変化させることができます。

この独自のアプローチは、建物のカーボンフットプリントを大幅に削減し、同時に外観の美しさも高めることで、環境責任と商業的魅力を調和させています。

ARI CARE

拠点：Estonia
創業：2021年

Ari Careは、日常のパーソナルケア製品を粉末ベースの活性成分を生産する技術雨を開発したB2Bクリーンテックスタートアップです。この技術は、水を使わずに製品を生産するプロセスを構築し、包装、輸送コスト、CO2排出量を削減しています。また、COSMOS認定の有機成分のみを使用し、大学の科学者と社内の化学者が開発したフォーミュラを採用しています。従来の生産方法と保有成分の常識を疑いコストを抑えるこのアプローチは、持続可能な産業への変化を促しています。

Canopey

拠点：イギリス
創業：2021年

Canopeyは、持続可能なショッピングに特化したオンラインマーケットプレイスを提供するスタートアップです。同社は、環境指標の検証や教育ツール、そして利便性を組み合わせたサービスを提供し、25,000人以上のコミュニティを築き上げています。特に注目されているのは、CO2排出量、水、プラスチックの使用量に関する業界初のインパクト計算機能です。Canopeyのインパクト計算機能を使用することで購入したものがグラム単位でどんな素材が使われているかを元に、他の一般的な製品を購入するのに比べCO2排出量、水、プラスチックの使用を抑えられたか計算し、図として可視化できるサービスです。これにより顧客がより持続可能な世界に向けて貢献したという満足度を与えることができます。

Canopeyの今後の目標には、炭素排出量、水の使用量、プラスチック廃棄物の大幅な削減が含まれており、さらに20,000本の樹木の植樹計画も進行中です。

Lemon 

拠点：インドネシア
創業：2023年

Lemonは、レストランの主要な運営を一つに統合することで、業界の運営方法に大きな変革をもたらしています。顧客はQRコード技術を利用して注文や支払いを行うことができ、これにより紙の使用を削減し、待ち時間を大幅に短縮します。このシステムは、スピードとエコフレンドリーさ、そして全体的な効率性の向上をもたらしています。

さらに、Lemonは食品廃棄物の削減にも取り組んでいます。同社は顧客向けアプリを通じて、売れ残り食品を割引価格で提供することで、100万トンの食品廃棄物削減を目指しています。このような取り組みは、持続可能性と効率性を兼ね備えたレストラン業界の新たな標準を設定し、環境への影響を最小限に抑えながら顧客体験を向上させる画期的な試みです。

ESG & Carbon Accounting

Greena World

拠点：イギリス
創業：2022年

Greena Worldは、ホテル業界における環境および社会的影響を評価し改善をサポートするプラットフォームを提供しています。同社が保有する技術は、ホテルビジネスにおけるコスト削減を実現すると同時に、環境意識の高い1億人以上の旅行者へのリーチを広げ、ネットゼロ規制への準拠を支援します。すでにPremier InnやHiltonなどがこの技術を取り入れています。

また、Greena Worldを利用することで、ホテルの規模や変更点にもよりますが、毎年470万ドルから385万ドルの節約になり、同時に予約収入も7-18％増加することが分かっています。

Carbon Bright

拠点：アメリカ
創業：2022年

Carbon Brightは、製品レベルでのインパクト指標を自動計算するためのプラットフォームを提供しています。このプラットフォームは、独自のデータベースとAIベースの環境モデリングエンジンを利用し、製品の環境影響を迅速に測定することが可能です。断片的であったり欠落しているデータであっても、それを補完して分析する機能を備えています。

現時点での目標は、CPGのサプライチェーン内で10年間に102万トンのCO2排出量（スコープ3の温室効果ガス排出）を削減することです。

Carbon Brightは、イギリスの大手小売業者M&Sとの6ヶ月間のパイロットプロジェクトを完了し、現在はBSIとのパイロットプロジェクトを進行中です。

Illuminem

拠点：イタリア
創業：2022

Illuminemは、持続可能性に関する情報とデータを提供する先導的なプラットフォームとして、注目を集めています。このプラットフォームは、ユーザーが任意のESG（環境、社会、企業統治）パフォーマンスを監視します。また、同プラットフォームから関係する最新のニュースを取得できたり、専門家のネットワークから洞察を得ることも可能です。

Illuminemは、年間で180,000人以上の累積ユーザーを獲得し、80,000ユーロ以上の収益を生み出しています。現在1,100人以上の業界の専門家がこのプラットフォームで執筆しており、今後6ヶ月以内に月間定期収益（MRR）を30,000ユーロに達することを目指しています。

また、AngelListによる評価では、Illuminemはヨーロッパのトップデジタルスタートアップの一つとされています。

We Make Change

拠点：イギリス
創業：2022年

We Make Changeは、スタートアップとスタートアップをサポートするリモートボランティアをつなげるマッチングプラットフォームを提供しています。個々人が持つスキルを社会のために最大限役立てることができるネットワークを作り出しています。

オンラインで全ての業務を完結する様になっているため、世界中どこにいても興味のある分野のスタートアップに貢献でき、キャリアアップにも個人的な成長にも繋がります。

年間で$210,000の収益をあげており、35,000人のボランティアがこのプラットフォームを活用しています。

全ピッチが終わり、記念撮影。

６時間にも及ぶピッチが終了した後は起業家、メンター、投資家が入り混じっての交流会で、豪華な料理がずらりとテーブルに並びました。

（2023年で参加したどのイベントよりも美味しい料理で、つい全種類をテイスティングしてしまいました。）

おわりに

今回はTechstars Sustainability Paris設立から二回目となるSummit Eventをレポートしました。

2015年のパリ協定以来、フランスはESG報告規則や農業、環境、エネルギー分野で数々の取り組みを行いました。スタートアップ支援策La French Techとのシナジーもあり、Green Tech、Agri Tech、Deep Techの領域におけるイノベーションも進んでいます。またTechstars Sustainable Paris等のサステナブルなスタートアップのサポートに特化した組織の出現によって、パリにはさらに世界中から持続可能なイノベーションが集まることが予測されます。

Techstars Sustainability Paris Summit 2023 は、SDGsをビジネスとして解決しようとするスタートアップが数多く紹介されました。このSDGsとビジネスを掛け合わせる動きは、フランスだけにとどまらず世界的に勢いを増していることを示していると言えるでしょう。今後、世界的にも持続可能な取り組みはビジネスと密接な関係をもち、十分条件ではなく必要条件となっていくのではないでしょうか。

---

投稿者：Ray Watabe

上智大学国際教養学部を卒業し、International Business and Economicsを専攻。香港とニュージーランドでの多文化的背景を基に、インキュベーターサークルや投資サークルを設立。学生時代にスタートアップへの関心を深める。LVMHのStudent Ambassadorや、TEDxSophiaUniversityのオーガナイザーとしても活躍。高校からのフランス語の習得経験を活かし、大学卒業後はフランスに拠点を移す。現地で日仏ビジネスの架け橋としての役目を担うべく、その理念に賛同するRouteXに入社。

---

今後もRouteX Inc.では引き続きスタートアップ・エコシステムにおける「情報の非対称性」を無くすため、世界中のスタートアップとの連携を進めてまいります。

RouteXは、
海外の先進事例 × 自社のWill による事業開発の高速化
によって、事業会社における効率的な事業開発を実現します。

本件も含めた質問や支援依頼に関する問い合わせは、以下のフォームよりご登録ください。