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「Yandex」という企業を聞いたことがあるでしょうか。
Yandexはロシアで有名なIT企業で、様々な事業を行っていますが、一番有名なのは検索エンジンです。
ロシア人の半数以上はYandexの検索エンジンを使っていると言われています。
いわば ”ロシア版Google” なのです。

今回は、その70以上のインターネット関連製品・サービスを提供しているYandexが、2018年に立ち上げた「Yandex Eda」というフードデリバリーサービスについてお話していきます。

Yandex Edaの創設ストーリー

Yandex Edaは、実はUberEATSのロシア事業の合弁の一環として立ち上げられたサービスで、少々複雑な歴史があります。

2017年11月、ライドシェア事業を展開していたYandexのタクシー事業Yandex Taxiは、ロシアでフードデリバリー事業を行っていた新進気鋭のスタートアップFoodfoxを買収しました。買収金額は明らかにされていませんが、関係筋から約5億ルーブル(約9億5千万円)で買収したと伝えられており、並々ならぬ熱量が感じられていました。この金額については、当時YandexがUberEATSとの事業合弁の話が上がっていたものの、Yandexはフードデリバリーサービスを行う事業会社を持っていなかっため、UberEATSの受け皿を作るために買収をしたと言われていました。

実際にその予測は当たっており、2018年にはYandex TaxiがYandex.Eda LLCを設立し、UberEATSのロシア事業は、Yandex.Edaに事業統合される形で事実上ロシアから撤退したのです。
これがYandex Eda誕生の経緯であり、ロシアにUberEATSがない理由なのです。

データで見るYandex Eda

まずは、Yandex Edaのロシア国内のシェアを見ていきたいと思います。

2020年RBCマーケティング社が発表した資料によると、Yandex Edaのシェアは10.1%で国内シェア2位でした。1位は老舗のDelivery Clubで、Yandex Edaとの差は7.5ポイントにのぼります。
「ロシアのフードデリバリーサービスといえばYandex Eda」という認識が強い私たち日本人にとって少し驚きの結果かもしれませんが、2019年時点ではサービスをローンチしてから1年しか経っていないことを考えると、かなり健闘していると言えるでしょう。

引用:Исследование: крупнейшие игроки на рынке доставки еды и общепита в России 
(既成食品配達市場の主要サービス:収益、マーケットシェア)

他にも面白いデータがあります。

2019年ロシアの調査会社OMI社のデータによると、ロシア国内におけるYandex Edaのブランド認知率(第一想起率)は49%で、圧倒的なブランド力を誇っていました。先ほどシェアでは1位だったDelivery Clubは、Yandex Edaに20%近く離された結果となっています。ただし、地域によってこの第一想起率は異なるそうで、モスクワではYandex EdaとDelivery Clubの割合は44%対47%と半々、サンクトペテルブルクではそれぞれ29%対43%となっていました。

ちなみに、第一想起率というのは、例えば「フードデリバリーサービスといえば何を思い浮かべますか?」と聞かれたときに、一番最初に出てくるブランド名の割合のことです。第一想起率が高い方が購買に繋がりやすいため、ブランドをマネジメントするマーケターが大事にしている指標の1つです。

以上、2つのデータから「Yandex Edaは圧倒的な認知獲得できているものの、実際に多く使われているのはDelivery Club」ということが分かりました。
きっとこの結果をみて、Delivery Clubの社員はドキドキしていたことでしょう。(笑) なぜなら、Yandex Edaがローンチされて1年で7.2%のシェアを獲得し、50%近い認知率を取っているからです。Delivery Clubがこのまま何もしなければ、王者の座を譲るのは時間の問題かもしれません。

引用:Рынок доставки еды в России
(ロシアのフードデリバリーの第一想起率の割合)

実際のロシア国内での使用状況

実際にロシア国内の住民100名に、Yandex EdaとDelivery Clubどちらを使用する頻度が高いか、RouteX独自のアンケート調査を行ってみました。年齢層は20代が大半と少し偏りがありますが、Delivery Clubの方が若干多いことが分かりました。これは逆に言うと、Yandex Edaの使用頻度も上がりつつあるということです。またモスクワやサンクトペテルブルクなど都市部と地方の差は特に見られませんでした。

使用頻度としては、よく使用する人は1週間に1,2回の人が多く、あまり使用しない人は今までに1,2回だけ、のように、二極化しているようです。

日本との違いで言うと、日本では時短営業の影響もあり、社会人の日常的な食事のフードデリバリー利用率が多いのに対して、ロシアでは社会人も多いのですが学生など大人数で集まる際に使用することが多いようです。ロシアでは、スーパーマーケットで購入するよりも飲食店で食品を購入する方が2倍近くの値段がするからです。これはフードデリバリーに対する考え方の違いとして面白い見解でした。

またロシアといえば、特に冬は雪が大半積もるため、元々あまり街中で自転車に乗っている人は見かけなかったのですが、フードデリバリーサービスが使われるようになってから街中での自転車使用率も増えてきているようです。ただ依然として雪が多い日などは徒歩でのデリバリーが主流のようです。

Yandex Edaの仕組み

日本では、UberEATSを始めとするフードデリバリーサービスは、お店が注文を受けると、UberEATS等と契約している配達ドライバーが注文品をお店で受け取り、注文した人の元へ届ける仕組みになっています。一方、Yandex Edaはお店が注文を受けると、Yandex Edaのスタッフ又はお店の人がデリバリーまで行います。

フードデリバリーのサービスの話から少し逸れますが、ロシアではYandex GOというデリバリー専用のサービスがあります。タクシーとしてだけではなく、食品、小包の配達、カーシェアリングとしても使用できます。例えば、自分が誰かに渡したいものがあるが移動手段がない際に、Yandex GOに登録しているドライバーが代わりに届けてくれるのです。ロシアでは日常的に使われており、とても便利なサービスとして評判です。
このようなサービスは日本にまだないので、ロシアの方が進んでいることが分かりますね。

Yandex Edaのこれから

Yandex Edaは、続々と次の一手を打っています。
例えば、2020年の6月にYandex Edaは、世界的にトレンドになりつつあるグロッサリーデリバリーサービスをローンチしました。グロッサリーデリバリーとは、その名の通り食料品店などの小売店から配達員が注文された品物をピックアップして配達をするサービスです。Yandex Edaのこのサービスには、Азбука вкуса(アズブカフクーサ)やВкусВилл(フクースビル)といったロシアの主要なスーパーマーケットが参画を予定しています。また、Yandex Edaは同サービスに対して強気の姿勢を見せており、グロッサリーデリバリーを行うピッカーの数が最大で全配達員の25%になるという試算を行っています。
このように、Yandex Edaは新サービスのローンチや、前記事でも紹介したYandex Roverを活用した無人配達など新しいことに果敢にチャレンジをしています。

来年には、Yandex Edaが日本人が考えるくらいの存在感をロシア国内で放っているかもしれませんね!

投稿者:加藤 哲熙
学生時代にロシアに1週間ホームステイをし、その体験からロシア・東欧に強い興味を持ち始める。
インスタグラム「ロシアに行きたくなる100の理由+」の中の1人。
好きなお菓子はスィローク。
マーケティング、中でも需要創造型マーケティングに興味がある。
最近はスタートアップのマーケティングをリサーチ、分析しており、
ユニコーンスタートアップがアーリー期に取っていた施策を見るたびにいつも唸っている。

RouteX Inc.では毎年ロシアのスタートアップ・エコシステムの現地調査を行っており、首都モスクワ近郊に政府主導で開発が進むイノベーション都市スコルコボを中心としたスタートアップとの連携の強化に動いております。
また、今後はモスクワやスコルコボだけでなく、ロシアの他の都市へのリサーチへと活動も広げていく予定にしております。
これまでのロシアでの調査活動はこちらからご確認いただけます。

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