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記事一覧 > 知らぬ間に…に要注意!ロシアの著作権事情

「ロシアの著作権は緩い」
そんなことを耳にしたことは有りませんか?
実は、これにはロシアの歴史的な事情も絡んでいるのです。
ということで、今回は、ロシアの著作権事情についてご紹介していきます!

法律の条文にはきちんと明記!ロシアの著作権の法規制

ロシアでは、日本と同様に、著作権は「知的財産権」に含まれます。
ただし、日本の場合この知的財産権は知的財産基本法という特別法によってその取扱いが規定されているのに対し、ロシアでは、民法典第4部で規定されています。
内、著作権に関しては第70章「著作権」(1255条-1302条)、および71章「著作隣接権」(1303条-1312条)にて規定されています。
参照:特許庁訳「ロシア連邦民法第 4 法典第 7 編 2017 年 7 月 1 日改正」

これはロシアの民法典が民法典と商法典を一体的に扱う「民商一元形式」を採用していることに由来します。
その一方で、著作権を含めた知的財産権に関する係争は、商事裁判所と呼ばれる日本の商法に関する係争を専門に取り扱う裁判所で裁かれます。
かつては最高商事裁判所という独立した最高位の裁判所がありましたが、現在は最高裁判所に統合されました。
一般にロシアでは著作権は以下の5つの権利から構成されているとされています。

(1)排他的権利
―著作物の利用に当たる手段・形式の行為に対し著作者(権利者)の裁量により行使する権利
(2)著作者であることを主張する権利
―著作物の著作者であると認めてもらう人格的権利
(3)著作者の氏名を表示権
―著作者の氏名(実名・変名・無名)を表示する権利
(4)同一性保持権
―著作者の同意なく著作物の改変などを差し止める権利
(5)公表権
―著作物を公に提供する権利

出典:イノベンティア・リーガル・アップデート

またロシアの著作権の保護期間は70年間で、日本と同じです。著作権規定ができた当初は50年間でしたが、2006年の法改正により70年に延長されました。

“1. 著作物における排他権は,著作者の存命中に加え,著作者が死亡した年の翌年の 1月 1日から起算して 70 年間,存続するものとする。
共同著作により創作された著作物に係る排他権は,共同著作者のうち最も長く生きた著作者の存命中に加え,当該著作者が死亡した年の翌年の 1 月 1 日から起算して 70 年間,存続するものとする。”

参照:ロシア民法典「第 1281 条 著作物に係る排他権の有効期間」

大手ブラウザで合法ダウンロード?著作権保護が弱い現状

現在のロシアにおいて著作権問題は、法そのものというよりかは、むしろ法規性の実行力にあるとされています。
著作権問題はロシアに限らず、日本も含めた世界共通の課題です。しかしながらロシアの場合、特にインターネット上で合法違法問わず、堂々と著作が無料で公開されているという実態があります。

※注意※ ここからロシアの著作権に関して具体的な現状をご紹介します。
これは著作物の無断取得を推奨するものではありません。取扱にご注意ください。

●事例1 :映画配給会社が合法的にYouTubeに映画をフルでアップロード
映画はソ連時代も、今もロシア国内で非常に人気のあるエンタメコンテンツですが、多くの映画、とりわけソ連時代に撮影された映画はほとんど全て、YouTubeにアップロードされています。
例えば1979年に撮影された名作「モスクワは涙を信じない(Москва слезам не верит)」をYouTubeで検索してみましょう。
すると製作元のモスフィルム(Мосфильм)が映画を前編・後編に分割して配信していることが分かります。実際に見てみるとかなり良い画質・音質で見ることが可能です。

●事例2:個人(?)が違法に日本のアニメを吹き替え・配信
日本のアニメはロシアでも人気ですが、多くが違法アップロードされているのが実態です。
日本の某人気アニメをロシア語で検索欄に打ち込むと「無料視聴」を謳うページが複数ヒットします。その内1つを見てみると、アニメシリーズの全話がアップロードされており、セリフに吹き替えが施されているという実態でした。

このサイトを調べてみると、日本で放映されている人気アニメ・アニメ映画を多数放映していました。中には2021年にTVで放映された番組もあり、違法性が疑われる部分があります。
一応このサイトには著作権に関する記載があり、ロシアの著作権に関する一連の法律に則って運営されているという記載があります。ただし、収益はアフィリエイト広告で、かつ広告の中身もいかがわしいものがほとんどであることを踏まえると、違法性が拭えません。

今回は映像・動画コンテンツについてご紹介しましたが、書籍についてはより法規制の実行力が弱い印象があります。
詳細は伏せますが、ロシアのブラウザ最大手ヤンデックス(Яндекс)で、ロシア語の書籍名を検索すると、個人が書籍を紹介するページが出てくることがあります。その中には書籍全文をOCRでスキャンしてPDF化ファイルが置いてあることがあります。
驚くべきはその方法です。
書籍ファイルがヤンデックスの画像・データ共有サービスのヤンデックス・ディスク(Яндекс Диск)に堂々と置かれていて、保存・ダウンロードできる状態になっています。検索によってはこのヤンデックスディスクのページが検索1位に来ることもあり、パッと見た限り、合法か違法か判断できません。

ソ連時代の名残り?なぜロシアでは著作権の保護が緩いのか

ここまでロシアの著作権保護の現状について紹介してきました。
お世辞にも著作権保護への意識が高いとは言えない状況ですが、これはどこに由来するのでしょうか?
一説には「ソ連時代の著作権に対する考え方」が関係しているとされています。

日本を含め一般的には、著作権は著作者個人の利益を守るものと捉えられています。
しかしソ連時代にはそれと同時に、国家が社会に有益になるように使うものと捉えられていました。
そもそもソ連時代は個人の私的所有が認められていませんでした。
これは著作権でも同じです。

ソ連時代に著作権について定めた法律は、①著作権基本法(1928-1961年)、②民事基本法(1961-1991年)の二つです。当時著作権のスコープに入っていたのは書籍です。
ただしこれらの法律は社会主義的な思想に基づいており、どちらかというと、著作者個人の権利を束縛するような内容でした。
(例)
・翻訳自由の原則
・著作権の強制買収制度
・自主翻訳の禁止 など

現在の著作権の発想とは真逆です。
ソ連崩壊後、ロシアに資本主義的な発想が入り込むと、著作権は徐々に私たちが想定する著作権に近づいています。
とりわけ2012年にロシアがWTOに加盟する際に、著作権を含む知的財産権の保護が争点になり、保護の改善につながりました。

まとめ: ロシアでの著作権管理は要注意

今回は、ロシアの著作権に関してご紹介してきました。
日本でも著作権問題はその対策が議論されていますが、ロシアの事情はより複雑です。

映像・音声・画像などのコンテンツ、とりわけ日本のアニメと音楽は典型的な著作権侵害の対象になります。ロシア語が読める日本人は少ないため、著作権侵害そのものに気づけない事例も多々あります。こうしたコンテンツを管理する場合は、定期的にヤンデックスなどのブラウザを用いて、ロシア語で検索して巡回することをおすすめします。

またロシアの書籍や映像などのコンテンツを利用する際にも、出典元を確認することをおすすめします。大手のブラウザを利用していても、知らないうちに著作権を侵害する可能性があります。ご注意くださいね。

投稿者:穗原 充
東京大学大学院 総合文化研究科地域文化研究 専攻ロシア・東欧研究地域
大学でロシアの都市研究を行う。
同時にスタートアップの人材支援領域で約3年間長期インターンとして働く。
現在はロシアの宇宙開発、都市インフラを中心にリサーチ中。
好きなロシア料理はセリョードチカ(ニシンの塩漬け)のサラダ。

RouteX Inc.では引き続きスタートアップ・エコシステムにおける「情報の非対称性」を無くすため、ロシアをはじめとする世界中のスタートアップとの連携を進めてまいります。
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