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記事一覧 > 中南米スタートアップの資金調達最新情報(2021年6,7月)

2021年6,7月の中南米スタートアップの資金調達最新情報のうち、特に注目すべき5社を一挙にご紹介します。

NotCo(チリ):2億3500万ドル

引用:NotCo

2015年にチリのサンティアゴで設立されたFoodTech企業であるNotCoは、シリーズDラウンドで2億3500万ドルを調達しました。

今回のラウンドは、Tiger Globalがリードし、DFJ GrowthZOMA Lab、Amazonの創業者Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏の投資会社Bezos Expeditions、Shake Shackの創業者Danny Meyer(ダニー・マイヤー)氏によるファンドEHIのほか、Lewis Hamilton(ルイス・ハミルトン)氏、Roger Federer(ロジャー・フェデラー)氏など著名アスリートも参加する、大規模な資金調達となっています。

今回の調達により、調達総額は3億6000万ドル、企業価値は15億ドルとなり、ユニコーン企業の仲間入りを果たしました。
同社は、植物性のミルク、ハンバーガーのパティ、肉、アイスクリーム、マヨネーズを製造しています。

現在、アメリカ大陸の5カ国(アメリカ、チリ、ブラジル、アルゼンチン、コロンビア)で事業を展開しており、今後はアジアやヨーロッパにも進出する予定です。
2020年にチリのBurger KingPapa John’sのVegan用メニューのメインサプライヤーとして採用されているほか、植物性ミルク「NotMilk」が2020年11月よりアメリカで発売され、年内に8,000の小売店に導入される予定であるなど、順調に市場を拡大しており、今最も勢いのある中南米初のスタートアップの1つと言えます。

Habi(コロンビア):1億ドル


引用:Habi

2019年にコロンビアのボゴタで設立された、不動産Tech企業のHabiは、シリーズBラウンドでSoftBank Latin America Fundから1億ドルを調達しました。

なお、既存出資者であるInspired CapitalTiger GlobalHomebrew8VCも今回のラウンドに参加しています。

同社は、コロンビアの中間層をターゲットとして、価格設定のアルゴリズム化、物件情報のデータベース化などのデータ分析をもとに、不動産売買のプロセスを簡素化する不動産Techの企業です。

オーナー向けに自宅価値の見積もりサービスも実施しており、これまでに同社の無料オンライン査定を受けたユーザーは国内で約10万人に達しています。

また、同社による住宅取引は2020年5月から2021年5月までの1年間で、前月比で平均40%増を記録しているなど、成長著しい企業の1つです。

CEOのBrynne McNulty Rojas(ブリンヌ・マクナルティー・ロハス)氏は女性であり、今回の資金調達は女性がCEOを務める企業としてラテンアメリカで最大の調達額となりました。また、2018年に同じくコロンビアのデリバリー企業のRappiが調達した1億8500万ドルに次ぐ2番目の規模のシリーズBとなります。

今回の資金調達を活用して、メキシコシティなどにサービスを拡大することを計画しており、また、過去1年で9倍の300人に増員したチームも引き続き拡充していく方針を示しています。

Flash(ブラジル):2200万ドル

引用:Flash

2019年にブラジルのサンパウロで設立されたFlashは、従業員のニーズに合わせてカスタマイズされた福利厚生カードやバウチャーを提供しているHR Tech企業です。
今回のシリーズBラウンドでは、Tiger Globalのほか、MonasheesGlobal Founders CapitalCitiusKauffman Fellowsから2200万ドルを調達しています。

ブラジルの労働法では、すべての企業が報酬の一部として福利厚生を提供することが義務付けられています。しかし、大半が食事券や交通券などの、時代遅れでコモディティ化したものであり、従業員のニーズを反映できていないことが課題でした。
Flashはマスターカードが付属している同社のアプリを使って、各従業員が自由に福利厚生を選択できるサービスを提供し、企業のEmployee Experience(EX)の向上に貢献しています。

さらに、コロナによるパンデミックをきっかけに、QRコード技術を用いたプラットフォームを構築し、従業員がリモートワークで支払う電気や水道の公共料金を企業が管理できる機能も開発しました。

現在、スタートアップから大手企業まで約4,000社にサービスを提供していますが、市場のシェアはわずか1%であり、今後のさらなる成長が見込まれています。

Yummy(ベネズエラ):400万ドル

ベネズエラを拠点とし、同国のスーパーアプリを作ることをミッションとしているデリバリーアプリYummyは、ラテンアメリカでダークストア(オンライン注文特化型の店舗)のデリバリー事業を拡大するため、Y CombinatorJustin MateenCanaryHustle FundNecessary VenturesTaskUsの共同創業者らから400万ドルの資金調達を行いました。

Yummyは完全無料で利用できるアプリで、食料品、薬局、ショッピング、ライドシェアなど他の分野にも進出し、毎月7万件以上の注文を受けています。

創業者兼CEOのVicente Zavarce(ビセンテ・サバルセ)氏は、ベネズエラで生まれた後、就学のために渡米し、そのままアメリカでPostmatesWayfairGetaroundでグロースマーケティングに従事した後、2020年にYummyを設立しました。

なお、現在同社はY Combinator2021年夏のCohortに参加しています。

Yummyは月間の商品取扱量が100万ドルに達し、毎月38%の利益を上げており、ベネズエラの主要5都市でサービスを展開しています。

今回の資金調達を活用して、すでに20万人近くいるユーザーを拡大するために、ペルーとチリでのサービス展開を予定しています。また、 Zavarce氏は年内にはエクアドルとボリビアにも進出したい考えを示しています。

Yana(メキシコ):150万ドル

引用:Yana

メキシコシティを拠点とするYana(“You Are Not Alone”の頭文字が由来)は、メンタルヘルスの管理アプリを提供しており、ALLVPのリードで150万ドルの資金調達を行いました。

なお、同社は2020年12月にも、Magma Partners500 StartupsHustle Fundなどから31.5万ドルを調達しています。

創設者のAndrea Campos(アンドレア・カンポス)氏は、8歳の頃からうつ病に悩み、長年にわたり行動療法から薬物療法まで、あらゆる種類の治療を試したうえで、2017年から自身のメンタルヘルスを管理するためのシステムを作りはじめました。

その後、他の人も恩恵を受けられるかもしれないと考え、Campos氏自身がアプリ上でうつ病に悩むユーザーとやりとりをし、ユーザーの心理状態を分析しながら、サービスの開発を進めました。

2020年にアプリをリリースし、10月10日の国際メンタルヘルスデーにApp Storeが同社のサービスを紹介したことをきっかけに、約8万人だったユーザー数が、わずか2週間で100万人に達し、現在は約500万人が利用しています。

メキシコ、スペイン、チリ、エクアドル、ベネズエラなど12カ国でアプリダウンロード数がトップ3にランクインするなど、スペイン語圏のうつ病に苦しむユーザーの心の支えとなっています。

今後は、精神的に辛い時だけではなく、日常的に「うつ病や不安を予防するもの」として、感謝日記、ムードトラッカー、瞑想など、人々の心の健康をサポートするような新サービスを開発することを計画しています。

投稿者:大谷 奈々
オーストラリア滞在中に仲良くなったコロンビア人からレゲトンミュージックやサルサダンスを教わったことからスペイン語圏の文化に興味を持ち、スペイン語の学習を始める。
現在は、大手コンサルティングファームで人事コンサルタントとして働きながら、RouteXでは主にスペイン語圏のスタートアップエコシステムのリサーチを担当している。

RouteX Inc.では、南米諸国をはじめ、世界のスタートアップ・エコシステムにおける「情報の非対称性」を無くすため、世界中のスタートアップとの連携を進めてまいります。
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