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記事一覧 > 中南米スタートアップの資金調達最新情報(2021年8月)

2021年8月の中南米スタートアップの資金調達最新情報のうち、特に注目すべき5社を一挙にご紹介します。

Nuvemshop(ブラジル):5億ドル

引用:Nuvemshop

ブラジル発のECプラットフォームを運営するNuvemshop(スペイン語では「Tiendanube」)は、5億ドルのシリーズEラウンドの資金調達を実施しました。

今回のラウンドは、Insight PartnersTiger Global Managementが共同でリードし、Sunley House CapitalVMG Partnersのほか、既存の出資者であるAccelKaszekQualcomm VenturesThornTree Capitalなど、多数が参加しています。

なお、今回の資金調達は、ラテンアメリカにおける過去3番目の規模かつ、3月に行われたシリーズDからわずか5カ月での獲得であり、ラテンアメリカで急成長しているEC分野が国際的な投資家の注目を集めていることがわかります。
また、この資金調達により、同社の評価額は30億ドルを超え、ユニコーン企業となりました。

2010年に設立されたNuvemshopは、ブラジル、アルゼンチン、メキシコの3カ国で約9万店の加盟店に金融・物流ソリューションのサービスを提供しています。
AmazonやMercado LibreのようなEC大手企業が、自社の物流ネットワークや金融サービスを構築して事業を展開しているのとは異なり、Nuvemshopでは、加盟店が自分に合った配送先や決済先を選択することができます。
現在、南米でNuvemshopと提携しているパートナーは1,000社以上に及びます。
同社は、今回の資金調達を利用して、南米でのさらなるマーケット拡大を目指し、今年末にはコロンビア、2022年にはチリとペルーに進出する予定です。
また、現在600人以上の従業員も、2022年には1,500人を超える見込みです。

南米は、巨大な市場にもかかわらず、EC普及率はわずか6%程度です。今後、スマートフォンやデジタルバンキングへのアクセスが増えればこのEC普及率も60%に達すると予測されており、今後の急成長が期待される会社の1つです。

Ualá(アルゼンチン):3億5000万ドル


引用:Ualá

アルゼンチンのネオバンクであるUaláは、SoftBank Latin America Fundと2019年にUaláのシリーズCをリードしたTencentから、3億5,000万ドルのシリーズDの資金調達を行いました。
また、今回の資金調達により、24億5,000万ドルの評価額となり、ユニコーン企業となりました。

同社は、アルゼンチンとメキシコで事業を展開する大手ネオバンクで、マスターカード付きのデジタル銀行口座、国際的な決済サービス、個人の財務管理ソフトウェア、投資機会などを提供しています。
現在、350万枚以上のカードを発行しており、主に18歳から35歳までの若い世代をターゲットにしています。
同社によると、ユーザーの65%はUaláに登録する前に銀行口座を持っていない人です。

アルゼンチンでは、成人の50%以上がデジタルバンキングサービスを利用できない中で、10%以上の人がUaláに銀行口座を持っているということからも、同社のサービスが大きな影響を与えていることがわかります。
今回の資金調達により、年内に最大500名の新規採用を行いチームの拡大をするとともに、新サービスの開発を予定しています。

Xepelin(チリ):2億3000万ドル

引用:Xepelin

チリのFintech企業であるXepelinは、Kaszek Venturesをはじめとする企業やエンジェル投資家から3,000万ドルをエクイティファイナンスで調達し、Picus CapitalFJ LabsGilgamesh Venturesなど、複数のエンジェル投資家を含むラテンアメリカおよびアメリカの資産運用会社やヘッジファンドから2億ドルをデットファイナンスで調達しました。

同社は「ラテンアメリカ諸国全体で、継続的に金融サービスを受けられる企業はわずか5%」である事実を変えることをミッションとして、Sebastian Kreis氏やNicolas de Camino氏らによって、2019年に設立されました。

南米の中小企業を対象に金融サービスを提供しており、リアルタイムで財務情報を管理・整理することが可能なAIを活用したSaaSモデルのプラットフォームを開発しています。
現在、チリとメキシコで4,000社以上にサービスを提供しており、過去2年間で4億4,000万ドル以上を中小企業に融資しています。
また、毎月約30%の成長率を記録しており、1年前は20名だった社員数も現在は110名以上となるなど、成長著しい企業です。

Crehana(ペルー):7000万ドル

引用:Crehana

ペルー発のEd Tech企業であるCrehanaは、シリーズBラウンドで7000万ドルを調達しました。Ed Tech企業のシリーズBラウンドの調達額としては、ラテンアメリカで最高額となります。
今回のラウンドは、General Atlanticがリードし、その他Mountain NazcaSalesforce VenturesRethink EducationALIVE VenturesIFCDILA Capitalが参加しています。

同社は、企業の研修・能力開発のためのオンライン教育プラットフォームを提供しています。現在、400人以上の業界の専門家と提携して700以上のコースがあり、従業員のキャリアディベロップメントを支援しています。
2015年の創設当初から成長を続け、2018年にはメキシコシティにオフィスを設立し、マーケットの拡大を行っています。2020年には、従業員の再教育やスキルアップを求める企業が増え、同社は3桁の成長を遂げています。

今回の資金調達により、プラットフォームの拡大、新製品・新技術への投資、ブラジルへの進出を行う予定です。また、今回の資金調達をリードしたGeneral AtlanticのLuis Cervantes氏とZeev Thepris氏が同社の取締役会に参加することが決定しています。

Merqueo(コロンビア):5000万ドル

引用:Merqueo

コロンビア発のオンライン食料品プラットフォームであるMerqueoは、IDC VenturesDigitalBridgeIDB Investが共同でリードする5000万ドルのシリーズCラウンドの資金調達を実施しました。上記3社の他、MGM Innova GroupCeltic House Venture PartnersPalm Drive CapitalMagma Partnersも参加しています。
同社はオンラインに特化したスーパーマーケットで、地元の業者から直接農産物を調達し、中間業者を介さず、より効率的なサービスを提供しています。現在、生鮮食品、パッケージ商品、家庭用必需品、飲料、冷凍食品など、8,000点以上の商品を提供しています。

CEO兼共同設立者のMiguel Mc Allister氏は、ラテンアメリカの食品デリバリー企業のiFoodと合併したDomicillios.comの共同設立者でもあります。
その経験を生かし、よりユーザーエクスペリエンスを高めるために、同社のサービスでは最短10分から3~4時間まで、各ユーザーのニーズに合わせて注文の受け取り方法や時間を選ぶことが可能になっています。

現在コロンビア、メキシコ、ブラジルの25都市以上で運営されており、60万人以上のユーザーがいます。今回の資金調達により、マーケットのさらなる拡大を計画しています。特にブラジルに注力しており、新たにリオデジャネイロ、フォルタレザ、サルバドール・デ・バイアなどに展開することが予定されています。

投稿者:大谷 奈々
オーストラリア滞在中に仲良くなったコロンビア人からレゲトンミュージックやサルサダンスを教わったことからスペイン語圏の文化に興味を持ち、スペイン語の学習を始める。
現在は、大手コンサルティングファームで人事コンサルタントとして働きながら、RouteXでは主にスペイン語圏のスタートアップエコシステムのリサーチを担当している。

RouteX Inc.では、南米諸国をはじめ、世界のスタートアップ・エコシステムにおける「情報の非対称性」を無くすため、世界中のスタートアップとの連携を進めてまいります。
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