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2020年は成長幅過去最大―新型コロナウイルス流行が普及の追い風に

ロシアでは、現在キャッシュレス化が急速に進行しています。2021年4月にロシア銀行最大手のズベルバンク(Сбербанк 調査は系列シンクタンクСбериндекс)が発表した「2021年度第1四半期キャッシュレス決済都市・地域別レーティング」では、ロシア全体のキャッシュレス決済比率が過去最高の59.4%に達したことが明らかになりました。
2020年第4四半期から3.5ポイント、前年同時期から6.3ポイントの成長で、過去最大の成長幅を更新しました。

2020年の日本のキャッシュレス決済比率が29%(ニッセイ基礎研究所調査)であることを考えると、ロシアの方が圧倒的にキャッシュレス化が進んでいることが分かります。

出典: ズベルバンク「2021年度第1四半期キャッシュレス決済都市・地域別レーティング」
青色がズベルバンクの調査結果、緑色はロシア中央銀行の調査結果

キャッシュレス決済の比率が高かったカテゴリーを順に並べると、1位が「レストラン」で79.1%、ついで「衣料品」が73.6%、「エレクトロニクス」が71.1%、「カフェ・軽食」が70.8%となっています。
「レストラン」は2020年第4四半期から2.5ポイント、前年同時期から6.3ポイントの成長となりました。「衣料品」「エレクトロニクス」は前年同時期からそれぞれ-0.8ポイント、-0.6ポイントと減少していますが、依然として高い割合を維持しています。

出典: 2021年度第1四半期キャッシュレス決済都市・地域別レーティング(ズベルバンク調査)
グラフ左がカテゴリー別キャッシュレス決済比率
グラフ右が普及割合の増減、緑が対前四半期比、青が対前年比

キャッシュレス決済の普及は地方が活発

モスクワ、サンクトペテルブルクを始めとするロシアの大都市でのキャッシュレス決済の普及率が初めて60%を超えました。もはや現金は3回に1回しか使われていません。
しかしロシアのキャッシュレス化の中心地は意外にも「地方部」です。

現在最もキャッシュレス決済の比率が高いのはロシア北部のネネツ自治管区で72.8%、次いで同じくロシア北部、フィンランドとの国境沿いに位置するカレリア共和国で67.7%となっています。
キャッシュレス決済の比率の伸びが最も高かったのはロシア東部、シベリアに位置するサハ共和国で+8.7ポイント、ついで同じくシベリアのマガダン州で+8.6%となっています。

都市部がキャッシュレス化の中心である日本とは真逆の現象が起こっていることが分かります。

出典: ズベルバンク「2021年度第1四半期キャッシュレス決済都市・地域別レーティング」
出典: ズベルバンク「2021年度第1四半期キャッシュレス決済都市・地域別レーティング」
左が地域別キャッシュレス決済の普及率ランキング
右が地域別キャッシュレス決済の普及率の伸び幅のランキング

決済手段はデビットカードが中心

ロシアのキャッシュレスはデビットカード(дебетовая карта)が主流となっています。キャッシュレス決済手段の利用率の内訳を見ると、1位がデビットカードで74%、ついでオンライン銀行決済が45%、ID決済(apple pay等)が33%、クレジットカードが27%、携帯電話キャリア決済が19%、電子マネーが18%という順になっています。

出典: ロシア中央銀行「2020年度社会調査結果ーロシア連邦の人口と決済手段の関係」

非接触型デビット決済機能付キャッシュカードの普及

日本でもデビット・クレジットカード機能付キャッシュカードの普及が進んでいますが、ロシアではその傾向がより顕著です。

さきほどデビットカードがキャッシュレス決済手段として最も利用される手段であると指摘しましたが、実はその多くがキャッシュカードと一体化したものとなっています。しかもその多くが非接触型です。その普及率は2020年には71%となっています。

ズベルバンクの非接触型デビット決済機能付キャッシュカード
出典: CardsBanking.ru

日本にいるとイメージが着きにくいですが、実際、2020年の3月に私がモスクワとサンクトペテルブルクに滞在した際には、既に街中のスーパーマーケットやファストフード店、レストランなど、特に日常的に利用するような施設でこの非接触型デビット決済機能付キャッシュカードが利用されていました。

ロシア人はなぜ非接触型デビット決済機能付キャッシュカードを選ぶのか。最も多かった意見は「たくさんの現金を持ち運ばなくて良いから」で47%、次いで「支払いが早くできるから」が42%、「支払いが簡単だから」が39%、「ロイヤリティプログラムがあるから」が27%、「非接触で支払いができるから」が27%となっています。

出典: ロシア中央銀行「2020年度社会調査結果ーロシア連邦の人口と決済手段の関係」

ロシアではあらゆる部分でキャッシュレス化が進んでいます。
左は宇宙飛行士記念博物館(モスクワ)内にあったアイスクリームの自動販売機、右は有料公衆トイレです。撮影は2018年だが当時からカードで決済することができました。

両方筆者撮影

進化するキャッシュレス決済

このようにキャッシュレス決済の浸透が著しいロシアですが、その決済手段は日々進化を遂げています。
例えばズベルバンクなど大手銀行では、Visaに連動した指輪が発売されています。決済アクセサリとして銀行口座に紐づけることでデビットカードとして利用できます。

デバイスの進化はもちろん、決済システムも日々進化しています。中でも注目すべきは「高速決済システム(Система быстрых платежей)」です。
例えばズベルバンクでは携帯電話番号と銀行口座を紐づけることで、支払い・送金を高速で行えるシステムを設計し、提供しています。ズベルバンクのオンライン口座へアクセスし、電話番号を登録するだけで簡単に利用することができます。

現在は、最低取引額は10ルーブルで、1日あたり15万ルーブルまで決済・送金が可能です。手数料も月10万ルーブルまでは無料で、10万ルーブルを超えると0.5%となっています。

出典: ズベルバンク公式HP

こうしたキャッシュレス化、決済手段の多様化にはロシア政府も力を入れていて、官民が連携することでさらなる進化を目指しています。

ロシアのキャッシュレス化発展に向けた官民連携の構図
出典: TAdviser

このようにロシアでは日本を上回るペースでキャッシュレス化が進んでいます。実際にロシア市街地を歩いていると、多くのロシア人の中では、支払いは「カードを端末にタッチするもの」という認識が広がっているように感じます。
またキャッシュレス決済をする際に、ほとんどの人がデビットカードを使っているというのもロシアの特徴です。クレジットカードからデビットカードへの移行は世界的なトレンドとなりつつありますが、その中でもロシアはデビットカード先進国であると言えると思います。

今後も需要がありまししたら、引き続きロシアのキャッシュレス事情を分析していきます。

今回利用したズベルバンクとロシア中央銀行のレポートはこちらから読むことができます。
・ズベルバンク「2021年度第1四半期キャッシュレス決済都市・地域別レーティング
・ロシア中央銀行「2020年度社会調査結果ーロシア連邦の人口と決済手段の関係」
※現在の所、ロシア語版のみの公表

投稿者:穗原 充
東京大学大学院 総合文化研究科地域文化研究 専攻ロシア・東欧研究地域
大学でロシアの都市研究を行う。
同時にスタートアップの人材支援領域で約3年間長期インターンとして働く。
現在はロシアの宇宙開発、都市インフラを中心にリサーチ中。
好きなロシア料理はセリョードチカ(ニシンの塩漬け)のサラダ。

RouteX Inc.では毎年ロシアのスタートアップ・エコシステムの現地調査を行っており、首都モスクワ近郊に政府主導で開発が進むイノベーション都市スコルコボを中心としたスタートアップとの連携の強化に動いております。
今後はモスクワやスコルコボだけでなく、ロシアの他の都市へのリサーチへと活動も広げていく予定にしております。
これまでのロシアでの調査活動はこちらからご確認いただけます。

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