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記事一覧 > カンボジアのスタートアップ環境を現地調査!

(カンボジアで最も有名で国旗のデザインにもなっている、アンコール・ワット)

カンボジアと聞いて、皆さんは何を連想するでしょうか?
国旗のデザインになっているアンコールワットについては聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。それ以外にもポル・ポト政権下に行われた知識層の大量虐殺についても有名ですよね。そんな暗い歴史を抱えるカンボジアですが、カンボジアにもスタートアップのエコシステムを形成しようという流れがあると聞き、直接カンボジアのスタートアップ環境を調査に行ってまいりました!

ポル・ポトによる負の歴史の影響

みなさんはポル・ポト政権下に行われた国民の大量虐殺について知っていますでしょうか?
ポル・ポトは国の混乱に乗じて政権を取り、「原始共産主義」を理想に国の改革を行いました。それは原始時代の生活が理想であり、資本主義は敵だという思想で、貨幣等を廃止し、全ての国民に農民の生活を強いるものでした。さらに、資本主義を知っていたり、国の政策に疑問を持つ国民の虐殺を始め、恐怖政治による国の統治を進めてしまいました。そのため、医師や教師、外国語を話す者、はたまた知識人に見えるからという事でメガネをかけている人まで虐殺の対象になってしまい、国民の約1/4の人が虐殺されてしまったというデータもあるほどです。ソ連のスターリンもそうですが、共産主義の国では虐殺の悲劇が繰り返されてしまっていますね。ポル・ポト政権から開放された後のカンボジアの人口比は85%が14歳以下というデータがあることからもどれだけ多くの大人が殺されてしまったのかが分かりますね。
そのため、現在も国民の多くが労働者人口に含まれる、平均年齢の若い国となっています。

観光資源による、外国人の流入

 カンボジアの主産業は農業と観光であり、何と言ってもアンコール・ワットを中心とした観光産業は毎年数百万人の外国人が訪れる、カンボジアの国を支える一大産業と言えます。

また、外国人向けの街もアンコール・ワット周辺では発展しており、居心地の良さからそのまま定住している欧米系の外国人も多くいます

 (アンコール・ワットからほど近い、外国人向けの通りパブストリート)

そういった現地に定住した欧米系の外国人がカンボジアのスタートアップを支援する動きが出てきている様です。これは以前調査したミャンマーでもヤンゴンにて、欧米系の外国人がアクセラレーターを作っているのと同じ様な流れかもしれません。国が一時代に荒廃してしまった後に、先進国のスタートアップ関連の知識を持った人がフロンティアとしてこれからの発展が期待される国でアクセラレーターを作っていく流れは今後さらに広がっていくかもしれませんね。例えば、アンコールワット近くにはAngkor Hub(アンコールハブ)という青空インキュベーターまで存在します!

青空インキュベーター Angkor Hub

カナダ人でIBMでも働いたことのある、ジェフさんが創業したAngkor Hub(アンコールハブ)という青空インキュベーターがアンコールワットのある街、シュリムアップに存在します。

このAngkor Hubはジェフさんが日々の仕事に忙殺される生活に疑問を抱き、仕事を辞めて世界中を旅している時にAngkor Hubの構想を思いついたそうです。世界中を旅しながら、「オンラインでお金を稼ぐことが出来たら」とノマド生活を目指して試行錯誤していたそうですが、そもそもインターネットの環境や安定した電力共有さえ整っていない国が多くある事に気付き、仕事さえ出来ない状況が続いたといいます。その際に、その国で住んでいる人はこういった状況のせいでインターネット関連の仕事につくチャンスや情報のインプットの機会を失っているのではと気付き、発展途上国でのインキュベーター運営というビジネスの需要に気付きました。

Image Credit: Angkor Hub

そこで、スカイプ等にも対応出来る高速のWifi環境を用意し、ジェフさん自身の経験を活かしたテクノロジー系のスタートアップ支援をこのAngkor Hubではじめました。

今ではForbes等にも取り上げられるほど、シュリムアップでは欠かせないインキュベーターとなっています。実際にカンボジアの人たちにスタートアップという新しいチャンスを生み出すことが出来ているのはすごいですね!

Angkor Hubは半分外の様な作りになっており、ハンモックに揺られながらゆったりとした空気感で仕事が出来ることからも人気があるようです。

ジェフさん自身も自分の理想としていた生活が出来ているそうで、現在はCamboTicketというスタートアップのCTOも務められています。

帰国者による欧米のビジネスモデルの流入 

BROWN COFFEE

BROWN COFFEEは創業者のChang Bunleangさんがオーストラリアのシドニー留学中に、カフェ文化の素晴らしさに気づき、当時カンボジアではまだ一般的ではなかった欧米風の落ち着いた雰囲気の良いカフェをオープンしたことに始まります。BROWN COFFEEは従業員の教育に力を入れており、接客の質を向上させ、またそれぞれの店舗で特徴的な独自のデザインを取り入れることによって、カンボジアの人のみでなく、観光に訪れた外国人からも絶大な人気を誇っています。一見するとスターバックスと似ている部分もありますが、価格帯がスターバックスよりも安く、クオリティは同程度と言うことが出来るのでカンボジアの人からも人気がある事がよく分かります。カンボジア国内においてはスターバックスよりもBROWN COFFEEの方が存在感がありました。この様に留学等を経験した帰国者の人たちが欧米の文化を持ち帰ることによって新しい、文化の流入によりビジネスが拡大する場合がよくあります。

 Image Credit: South east asia globe Sam Jam

BROWN COFFEEは一般的なスタートアップの概念とは少し違いますが、海外の文化を取り入れたビジネスの例として、創業者のChang Bunleangさんはカンボジアで有名な創業者の一人となっています。今後、さらに留学等からの帰国者が他国の最先端のテクノロジーを自国に持ち込み、自国の社会課題解決等に動くとカンボジア独自のビジネスモデルを持ったスタートアップが急成長するチャンスが多くあると言えますね!!

大規模なスタートアップ向けコワーキングスペースの存在

では、実際にカンボジアでスタートアップを支援するような大規模な施設は存在するのでしょうか?
首都のプノンペンにはEmerald Hubという高層ビルのワンフロアを利用した、スタートアップ向けのコワーキングスペースが用意されています。スタートアップで働く人達が集中できるようにリラックス出来、寝転がりながら働ける場所やバーなども併設されており、さながらヨーロッパやアメリカのコワーキングスペースにも似ていると言えます。

 数十人が参加することの出来るイベントスペースも用意されているので、スタートアップのピッチやミートアップにも便利な作りになっています。

 Emerald Hubから見たプノンペンの町並みですが、眼下に広がる町並みからEmerald Hubがかなり高層階に用意されている事が分かります。プノンペンの中心部の高層ビルのワンフロアをスタートアップ向けのコワーキングスペースとして利用している事を考えると、かなりスタートアップが成長するために欠かせないエコシステムの構築に向けて投資が進んでいるようにも見ますね!

その一方で同じフロアに、元々スタートアップが入居していたであろうオフィスが改装中のまま放置されてもいます。奥の壁に貼ってある、「LIFE IS GOOD」がなんだか寂しげですね。

カンボジアでスタートアップを成長させていく難しさを、このオフィスは表しているのかもしれません。 

スタートアップによる社会課題の解決へ

Emerald Hubにも入居しており、カンボジアでも特に注目のスタートアップである

「BOOKMEBUS」を簡単にご紹介します!!

BOOKMEBUSは創業者のLangda Cheaさんが帰省の際にバスを予約する事が出来ず、たらい回しにされた後、結局高額な料金でタクシーで帰省した際に車中で思いついたアイディアからスタートしました。

カンボジアでは以前までバスのチケットを買うためにはバス会社のオフィスに行く必要があり、いつも混雑しており、また空席があるかどうかなどを繰り返しオフィスに確認しに行く必要があり、無駄な労力を使っていたという課題がありました。そこで、創業者のLangda Cheaさんがオンライン上でバスの予約をする事が出来ないのかと始めたのが、BOOKMEBUSの始まりです。カンボジアのバス会社等はHPの運営やカスタマーサポート、問い合わせ先のメールアドレスが当然のようになく、オンライン化には程遠い現状があったようです。そこで、Langda Cheaさんがそういったバスのチケット販売会社と連携しながらオンライン化を進め、バスのチケットをオンライン上で購入出来るように整えた事でBOOKMEBUSが一気に拡大するきっかけとなりました。ただ、これまで直接バス会社でチケットを購入していたカンボジアの人からの利用は少なく、利用者のほとんどの人が観光に来た外国人だったそうです。それはカンボジアではクレジットカードの利用が進んでおらず、オンライン上で購入するメリットを実感出来ていないことや、そもそもクレジットカードを所持していない人が多いという新たな課題も出てきています。

(Grabで伝統的なトゥクトゥクも予約が可能)

さらにAPAC地域でUberを超えたシェアリングエコノミー大手のGrabもカンボジアのマーケットに進出してきている等、かなり大きな競合の参入も受けています。

 Image Credit: BOOKMEBUS

Grabとは提携し、BOOKMEBUSの利用者にはGrabのクーポンを提供するなど共存できる様な形での連携も進めています。また、カンボジアの人たちがオンラインペイメントに慣れていないことから、まずはインバウンド向けに外国人をターゲットにし、その次にエグゼクティブ、最後にカンボジアの一般の人々へ向けてとユーザーの層を広げていく経営戦略も取っているようです。このようにBOOKMEBUSを利用するために、カンボジアの人々がオンラインペイメントに慣れる事が出来れば、さらにグローバルなビジネスモデルをカンボジア国内で取り入れやすくなるために、カンボジアのスタートアップの成長が促進される可能性がありますよね! まだまだ、インフラの整っているとは言い難いカンボジアの様々な課題解決をする事がスタートアップ成長の要因の一つかもしれません!

 Image Credit: BOOKMEBUS

カンボジアでも特に有名なスタートアップのBOOKSMEBUS創業者のLangda Cheaさんは次の世代に向けて、自分の創業の経験を講演等で広める活動も行っています。元々、プログラミングの経験があったLangda Cheaさんは、「プログラミングスキルをどのようにビジネスにするか」という話を次の世代に広げています。大きなアイディアを小さなところから実現していって欲しいという、リーンスタートアップの概念にも似た事を広めています。具体的にスタートアップで成功した起業家がいると後に続く世代も一歩を踏み出しやすいですね!
Langda CheaさんはBOOKMEBUSのVisionでもある、「where every corner is bookable.」に向けて、今も様々な課題に取り組んでいます。

カンボジアのスタートアップ環境の将来

いかがだったでしょうか?
ポル・ポト政権による国民の大量虐殺という負の歴史を抱えていたカンボジアですが、これからの発展に向けて次世代の勢いが増している事が伝わったのではないでしょうか。

カンボジアはまだまだインフラの整備が整っているとは言い難い現状であり、オンライン上のビジネスが満足行く環境で進める事が難しいかもしれません。ただ、そういった社会課題を解決しようと、Angkor HubやBOOKMEBUSの創業者の人たちが日々奮闘しています!
スタートアップの醍醐味として、社会課題を解決して人々の生活をより良い方向へ進める事でもあると思うので、今後カンボジアのスタートアップがどのように人々の生活を変えていくのかについても常にキャッチアップしていきたいですね!
カンボジア初のスタートアップが国内だけでなくAPAC地域の社会課題解決をする日も遠くないかもしれません!!

RouteX Inc.では、引き続きカンボジアのスタートアップとの連携を含めた現地調査を行っていきます!また、各国のスタートアップ環境についてもっと詳しく知りたい方はお気軽にお問い合わせください。海外のスタートアップとの連携やイノベーション拠点の調査依頼、

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